特集 2003.12/vol.6-No.9

ブランディングとメディア戦略
スタイルの継続が広告効果をつくる
 
広告効果はつくるもの

 広告に効果があるか、ないかという議論がある。企業は予算を効果的に使いたいわけだから、当然そういう話になる。しかし、広告効果はつくるものだというのが、私の考えだ。テレビコマーシャルは何度も見せることで頭の中に入っていく。新聞は1回あたりの掲載料を考えると何回も掲載することは難しい。そのときに、少ない広告量でも、掲載のたびに効果を生むようにつくっていくことを、企業や広告会社はもっと考えるべきだと思う。
 先ほど話したスタイルやトーン・アンド・マナーを決めて継続することが、広告効果をつくる一つの方法だろう。少ない広告量でも「またやっている」という効果を生むといったが、広告はリマインドさせる力が出るまでやらないと効果は見えてこない。企業広告の場合は特に、1回だけでの効果は測りにくい。
 また、昨年の一連のシリーズは、ワールドカップの時期に合わせスポーツ面の対向ページに集中して掲載した。そういう時期的な効果もある。
 また、このシリーズは幸いいろいろな賞をいただいたが、そのパブリシティー効果も大きい。もちろん意図したからといって賞をいただくことはできないが、それも、広告効果をつくることになる。

お父さんをターゲットに

2003.11.15 朝刊
 調査をすると、味の素の企業イメージは、「信頼できる」「家庭的」といった項目のスコアは高いが、「革新性」「先進性」というスコアは低い。ところが、実際の味の素は、食品事業だけでなく、アミノ酸、医薬品、あるいは飼料の分野にまで事業を拡大している。特にアミノ酸に関しては、世界のリーディングカンパニーという自負がある。それを消費者だけではなく、投資家などのステークホルダーにもしっかり浸透させていきたいという意図が企業広告にはある。クリエイティブを従来の味の素のイメージから大きく変えたのは、そのためだ。
 今回の企業広告を始めるに当たって、最も議論したのが「一体だれに広告するのか」ということだった。主婦に対しては、日常の商品でコミュニケーションをしている。ところが、お父さんとはこれまであまりコミュニケーションをしてこなかった。お父さんは日常の商品をあまり知らないし、そのブランドにも関心がない。お父さんの関心があるのは、あそこの会社はどうなんだということだ。企業広告の対象の一つは、このお父さんだ。
 家庭のテーブルを囲んで家族が会話をしているときに、お父さんが企業広告を見て「味の素はなかなかいい会社だなあ」と言い、お母さんが「そうなのよね、いろいろ便利な商品があるのよ」と言う。実はその話は、それぞれの意識の中ではまったくかみあっていないが、話題としてはきちんと成立する。それでいいと思う。
 今やっている企業広告は、主婦が見たら見過ごしてしまう広告かもしれない。しかし、お父さんは、たぶん見てくれる。アミノ酸という新しい分野にどんどん進出している企業だということに興味を持ってくれる。ここまで思い切った広告表現にしたのは、そういう割り切りがあったからだ。
 アミノ酸飲料が今ブームになっているが、アミノ酸、アミノ酸といっているうちに飽きられてしまうのではないかという懸念がある。若い人たちは、特にそういう傾向が強い。アミノ酸は味の素の基幹事業だけに、そういうことを考えれば考えるほど、きちんとした広告を打たないといけないと思っている。

「味の素らしくない」広告

 広告の目的は、お客さまの気持ちを変容させることだ。しかし、そのつもりで広告をつくっても、見たお客さまがそう認識するかどうかはわからない。
 一連の企業広告のビジュアルは、今までの味の素ではないイメージ「先進性」「革新性」を象徴したビジュアルだが、心配していたお客さまからのクレームは、これまで女性からの1件くらいだった。
 広告に対するお客さまの反応は、「好き」「きらい」「どちらでもない」という選択肢があったとすると、「どちらでもない」が多い広告が一番よくない。もちろん「好き」に全部振れればいいが、「どちらでもない」というのは広告が何も心に引っかかっていないということだ。
 実際に企業広告の調査をしているが、フリーアンサーを必ず分析し、自分たちが望んでいた言葉がどれぐらい出ているかを見て、それを目的達成の判断材料にしている。調査をすると、フリーアンサーには「いやらしい感じがする」「味の素らしくない」という言葉が必ず出てくる。そのときに大事なのは、「味の素らしくない」という言葉をわれわれがどう受け取るかだ。

新しい「味の素らしさ」

 広告のクリエイティブで陥りがちなのは、お客さまのクレームを事前に考えすぎて広告の角が取れてしまうことだ。だいたい広告の一番いいところを、嫌だということが多い。そうすると、「どちらでもない」広告をつくってしまうことになる。
 いまは、トップをはじめとして、反応がない広告はダメだという考えに変わってきている。反応が悪く出たときには、それで広告を中止するのではなく、次にどうするのかに結びつけるようにしている。
 同じ意味で、広告を決定するハードルを少なくすることも重要だ。味の素の場合、商品広告は広告部と事業部で決めている。つまり、ハードルは一つしかない。企業広告も「ブランド会議」の承認が必要だが、事務局は広告部に置かれている。また、ハードルが少ないから、お客さまの反応にも迅速に対応できることになる。
 最近では、事業部のスタッフもテレビコマーシャルに対して非常にクリエイティブな発言をするようになっている。「好きじゃない」「気に入らない」などのレベルを超えて、何を伝えるべきかを議論するようになった。
 お客さまの反応がある広告をつくるポイントは、普通のことをやっていてはダメだという非常に単純なことだ。アイデアがなければダメだし、いまの時代をつかんでいないとお客さまは反応しない。
 同じスタイルとトーン・アンド・マナーを守った「味の素らしくない」いまの企業広告が、「あっ、味の素がまたやっている」と思われるようになった時、それが新しい味の素らしさになるのだと思う。


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