特集 2003.12/vol.6-No.9

ブランディングとメディア戦略
広告はブランドをつくる旗印

 住宅の場合、ブランドは営業や設計担当、工事の現場など一人ひとりの振る舞いの積み重ねでつくられ、それを一つにまとめる旗印が広告の役割になる。新聞広告の連続掲載で事業ブランドの確立に取り組む旭化成ホームズの高羅真人氏はそう語る。
 
――ブランディングの考え方は、業種や商品によってさまざまだと思いますが。
 住宅という事業の場合、広告だけでブランドはできません。これはどのビジネスでも当たり前ですが、特に住宅の場合はその傾向が強い商品です。
 住宅は、日用品のように気分で消費されるものではないことが、まずありますね。お客さまが情報をいろいろ得てその中で吟味して選ばれる商品です。仮に広告で興味をひいたり、いいイメージを持っていただいたとしても、展示場での営業社員との接触や、設計担当者と打ち合わせをしていく過程が非常に長い。そのあとインテリアの打ち合わせもあり、工事の現場、もちろん住んでからのおつきあいも長い。最初のイメージをつくる力に広告はなるかもしれませんが、それでブランドはできない。

――完成してからのフォローも大切になる。
 そうですね。この事業ブランドをつくっていくのは人だと思うんです。住宅は日用品と違って関与度が非常に高い。検討される方はそれだけ慎重になりますから、たとえばヘーベルハウスを検討しようというお客さまは、自分の身の回りにヘーベルハウスにお住まいの方がいれば、必ず意見を聞きます。
 ところが、住宅というのは、住み始めてからまったく何の不満もないということは現実的には少ないといっていいかもしれません。それでも多くのお客さまに、「本当に何も文句ないよ、100%満足している」とおっしゃっていただけるのは、それはお客さまの気持ちがそうなのであって、現実には「ここはもうちょっとこうすればよかった」が何かしらあるものです。それをお客さまがどう感じているかで発言が変わってくるだけです。
 そして、ユーザーのそうした気持ちをつくっていくのは、営業からアフター部門、私たちスタッフ部門に至るまでの社員一人ひとり、さらには工事店などの関係業者さんの一人ひとりです。ヘーベルハウスの関係者一人ひとりが、個人として組織としてどうお客さまに接していくか。その結果としてユーザーの気持ちがどうなのか。住宅の場合は、それが非常に大きいと思います。

広告は社内が一枚岩になる旗印

――そうすると、広告の役割をかなり限定的に考えている。
 限定的というわけでもないのですが、社内が一枚岩になり、組織として有機的にブランド構築に取り組んでいくための旗印として重要だと思っています。先ほど申し上げたように、ブランドは一人ひとりの振る舞いを積み上げた結果ですが、その時に欠かせないのが、全員が共有する理想や価値観だと思います。自分たちはどのような企業になるのか、どんな価値を社会とお客さまに対してお約束するのか。こういった約束事を社内で作り上げ、徹底し、広告という形で世の中に出していく。広告表現だけが社内の現実と離れたところで先走るのではなく、むしろ広告が社内の約束事を追いかけ、さらに広告されることによって、その約束事が社内でも認識されていく。そんな役割として重要だと思っています。
 また、もちろん住宅購入を検討している方に対するメッセージでもあるのですが、住宅を購入するしないは口コミによるところが大きいということもあり、すでにお住まいのユーザーに対する効果も絶対に外してはいけないと認識しています。

――広告を社内の旗印にするための具体的な活動は?
 4月と、10月に連続掲載した「ロングライフ住宅」の広告でもそうですが、社内の営業や設計などお客さまと前線で接触する人たちに、広告の企画がある程度つまってきた段階、だいたい掲載の2、3か月前の早いタイミングで、広告のテーマとねらいを説明しています。全員にそれを100%理解してもらい、広告をきっかけにして、自分たちは個別のお客さまに対して何を伝えていくのかを考えてもらうようにしています。
 われわれがなぜ広告をするのかといえば、お客さまに、われわれの考える理念を理解してもらい、共感していただきたい。もっと言えば感動していただきたいからです。それをできるのはお客さまに直接接している彼らだろうという考え方です。そのために広告をうまく使って欲しいという気持ちで、相当早い段階から彼らに情報を伝え、そのための機会も設けている。正直に言えば、広告の企画をつくること自体はそれほど難しいことではありません。その意図をお客さまと直接接触する社員に伝えることに、労力の8割は使っています。

2003.10.17 朝刊 2003.10.18 朝刊
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ロングライフ住宅の価値を

――4月、10月に連続掲載した広告で伝えたかったこととは具体的にはどのようなことでしょうか。
 両シリーズとも、われわれが目指しているロングライフ住宅の本当の意味、価値を理解してもらうことを目的にした一連の広告です。半世紀を超えて価値を発揮し続ける家づくりが、われわれの目指すロングライフ住宅です。頑丈で長持ちするのは当然の前提として、常に快適であり、健康に暮らせ、ライフスタイルの変化に対応できる。あるいは資産として、社会的なストックとしてもその価値を発揮し続ける。そういう意味が込められています。
 しかし、「ロングライフ住宅」は、ロングライフと住宅という平易な言葉を組み合わせただけの言葉ですから、ただ単に長持ちする住宅、頑丈な家という意味に取られがちです。長持ちする家ということであれば他社も訴えているところがある。

――差別化が必要だったということですか。
 ロングライフ住宅戦略を宣言したのは98年です。その考え方をこれまでもいろいろな形でコミュニケーションしてきましたが、多くの人にわかっていただくためにはかなり丁寧に順を追って説明していく必要がある。それが一連の広告のねらいです。
 4月は「ロングライフ それは、いい家づくりの基準です」というテーマで8日間の連続掲載をやりました。その基には、われわれが考える29項目の「ロングライフ住宅基準」があるのですが、そういう非常に大きな概念を伝えることが目的でした。10月の6本シリーズは、その結果何が変わるかということで、「ロングライフ住宅は、いい人生をつくる」ことを訴えていった。ロングライフ住宅が人々にどういう価値を提供していくのかを、生活者の視点から見た価値に置き換えて訴えていくことに重心を置いたつもりです。
 連続8本であろうと6本であろうと、新聞広告を集中して出しただけで、われわれの家づくりに対する考え方が簡単に世の中に伝わるものではないとは思っていますが、広告の筋道はそういうことです。

指名買いが1割以上増加

――掲載してみて、効果はどうだったのでしょう。
 ブランディングであっても、受注であっても、広告よりも人が大きく介在するのが住宅業界ですから、単純な数字での評価は難しいですね。
 10月に掲載した広告の成果はまだはっきりとは言えませんが、この4月に連続出稿したあとに明らかに数字で増えたのは、比較検討なしに最初からへーベルハウス1社で検討いただいて、そのまま契約いただいた方がかなり増えているという事実です。通常、住宅は高い買い物ですから1社だけで決めるお客さまは少ないのですが、こうした指名買いのお客さまが1割以上増えた感じです。ロングライフ住宅という戦略がいよいよ本物になるための下地ができてきた。ロングライフ住宅の広告を始めて5年たって、ようやくそういう手応えを感じるようになりましたね。それが、すなわち広告の効果ということではないのですが、広告を一つのきっかけとした全体的な効果だと思います。


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