特集 2003.9/vol.6-No.6

食卓は語るー食の実態から見えてくる問題ー
時代を読み取る調査の役割
 
素顔の十代 「変わる家族 変わる食卓」は読む人の立場や年代によって、さまざまな読み方がある。今月の特集として取り上げたのもそれが理由だ。日ごろ、うすうす感じていたこと、個別・個人の特殊な冗談めいた出来事と思っていたことが、実はそうではなかったということにまず驚き、集められた「事例」のインパクトの強さに、内容について、見えてきたことについて、話し合わずにはいられなくなる。その結果、ビジネスチャンスととらえる人、マーケティングデータのとらえ方や調査手法の問題、そして家庭、教育ひいては日本の文化の問題まで議論は尽きなくなる。折しも、12歳の少年による犯罪や渋谷の少女監禁事件など、家庭や教育、社会環境の問題が取りざたされていた時期でもあり、ここに書かれていることはやはり大きな社会問題ではないかという議論も出た。
 この本の調査対象者は1960年生まれ以降の子供のいる主婦だが、著者自身はなぜ、この年齢付近で「断層」があるのか、調査対象者の出身地、学歴、職業の有無、所得、子供の年齢、親との同居の有無、親世代の特徴など、考えつく限りの条件で調べてみたが、説明できるものはなかったと書いている。そして戦後50余年間の中学・高校の家庭科の教科書を見直す作業を経て、実は彼女たちが中学校で受けてきた家庭科教育と密接な関係があることを発見した。「こうしてみると、今日『いま時の主婦は』と非難される事象も、実は多くが時々の学校教育で教えられた通りではないのかと気づくのである。――中略――暗記した断片的な知識のひとつひとつは忘れてしまっても、その基本として教育が示したもののとらえ方や価値意識は、その人の気づかぬままに心に長く残り、大人になった後まで影響を与えるのではないだろうか」と記している。
 一方、日ごろビジネスの側からものを見ることに慣れた立場からすると、コンビニエンスストアの登場やさまざまな家事サービス、エンターテインメント産業はきわめて現在の消費者の気分をとらえている産業ということができる。そしてそれら家事の産業化は、現代の主婦の気分と鶏と卵の関係なのではないかとも見えてくる。
 前後して読売新聞世論調査部が2002年の暮れに実施した「全国青少年意識調査」を分析し解説を加えた「素顔の十代」を出版した。「変わる家族 変わる食卓」の調査対象者のちょうど子供にあたる年代の青少年を対象にした世論調査である。
 この調査は定量調査であり、その詳しい意識にまでは踏み込んでいないが、「親と子」「友だちと学校と先生と」「こころと身体」「日本人としての意識」「日本の未来、自分の将来」「大人社会と子供たち」の六章から構成されており、そのそれぞれについて識者が解説を加えている。
 そこでは、サクセスモデルの失われた現代の子供たちの置かれている環境、とりわけ「ゆとり教育」の実態や、75%の子供が日本の将来は暗く、努力しても報われないと感じていることなどが浮き彫りになっている。
 今という時代をとらえるのは一筋縄ではいかない。それを探るにはさまざまな側面があり、調査する側にも、その結果を読みとる側にも柔軟な視点が問われている。(S)




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『変わる家族 変わる食卓』を書き終えて
岩村暢子氏→
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