特集 2003.5/vol.6-No.2

新聞のデータとは何か
ビデオリサーチ 鈴木芳雄氏

 新聞とテレビのメディアデータには、広告メディアとしての共通性もある一方、それぞれの媒体特性から来るメディア指標の取り方の違いもある。媒体到達と広告認知の違い、テレビには、なぜアクチュアルデータ(実測値)が必要なのか。新聞にアクチュアルデータの必要性はあるのか。テレビのメディア指標との比較から、新聞のデータとは何かを探る。

 新聞にデータがないと言われる理由はどこにあるのか。また、本来、メディアの責任として出すべきデータの範囲はどこまでなのか。長年、メディアの指標づくり、調査に携わってきたビデオリサーチの鈴木芳雄氏にテレビの視聴率との対比から聞いた。
 
新聞にはデータがない?

――新聞にはデータがないと言われていますが、実態とは違う気がします。
 新聞のデータには、ベースに日本ABC協会の販売部数があって、各新聞社がそれぞれ公表している新聞閲読率、面別接触率、新聞広告注目率がある。掲載後の反響調査のシステムを持っている新聞社も多い。確かに新聞のデータは順番に整備されてきています。ただ、それらが1つひとつ独立して語られていて、一気通貫になっていないということではないかと思います。ABCがあり、新聞社の提供するデータがあり、ビデオリサーチのような第3者機関の提供するものもある。あるいは、広告会社が持っていたりということで、1つに整理されていません。
 広告管理指標としてみた場合、それぞれの基準が異なっているので活用しにくい。したがって、メディアプランニングにも利用しにくいということです。そのへんが新聞にデータがないといわれている大きな原因のような気がします。テレビの場合は、GRPという考え方が元になって、管理やプランニングがしやすいようになっています。

テレビの指標は?

――GRPとは何か。それが実際にはどのように使われているかから、まずお聞きしたいと思います。
CM投下量(個人GRP)とCM認知率の関係モデル
CM投下量(個人GRP)とCM認知率の関係を見たもの。GRP(のべ視聴率)とCM認知の相関は高いが媒体到達=CM認知ではない。
資料:ビデオリサーチ
 GRPはリーチ(到達)とフリークエンシー(接触回数)の掛け算で求められる「のべ視聴率」です(注)。グラフを見ていただきたいのですが、これはCMの投下量(GRP)に対してどのくらいの広告認知があるかをモデル化したものです。個人視聴率をベースにしています。
 個人全体のGRP500のところを見るとCM認知率は31%になっています。500GRPというのは、リーチを80%強とすると、フリークエンシーは6回程度と考えられます。つまり、8割以上の人に平均6回ぐらいCMを見せて、広告認知率は31%になるということです。

――これで、実際には何本ぐらいのCMを流す必要があるのですか。
 この500GRPというのは、個人視聴率を元にした個人GRPで、世帯視聴率にするとおよそ倍、1000GRP程度は必要です。1本の平均世帯視聴率を約7%とすると、120〜130本のスポットを打つ必要がありますね。つまり、約3割の人に広告を認知してもらうために、CMを102、30本流す出稿計画が導き出される。
 ここで重要なのは、この数字の分母は個人全体ということです。広告認知率31%は、世の中全体の31%の人がCMを認知するということです。
 テレビのデータは視聴率だけと思われていますが、実は視聴率とは別に、こうしたCM認知を毎月調査しています。実際の数値は、年齢別でも変わってきます。一般に、年齢が上がるにつれて広告感度は悪くなるという傾向があります。また、個々のCMの結果をプロットすると、かなりのバラツキが出てきます。

――実際には、視聴率のほかにCM認知率も重要なのですね
 CM認知率は、「テレビCMカルテ」という留め置き法の調査で毎月1回百素材くらいを対象に調べています。その中でクリエイティブ評価も行っています。キャラクター適合度、商品興味度、あるいは印象に残った要素として、タレント、キャラクター、ストーリー、商品名の流し方。イメージ評価として、新鮮、親しみがある、わかりやすいというような評価語を用意している。広告認知と同時に、その認知者のクリエイティブ評価がわかるようになっています。だから、管理シートをつくれば、このクリエイティブの親しみというポイントは、一般的な素材と比べて高かったか、低かったか、あるいは同じ業種の競合商品のCMと比べてどうだったかということが比較できる。
 そういう調査を積み重ねていくことで、たとえば「親しみがある」の評価がこのくらいだと認知率がこのくらいだということがわかってくる。どのクリエイティブ評価が高いと認知率がいくら期待できるかというシミュレーションモデルもできています。重要なのは、媒体到達と広告認知は異なったレベルの指標であり、効果を判断する指標も1つではないということです。

――新聞社が調査している広告注目率調査も広告認知という意味ではほぼ同じですが。
 利用のされ方が違うのはメディア特性の違いもあると思います。テレビは番組単位、時間帯単位で、1つの素材を複数局に数10本という出稿を行うのが一般的ですが、新聞は個別の新聞単位で1素材を1回ごとに出稿することが多い。テレビはGRPをベースにして管理することが、出稿の形態からも必要なわけです。テレビのCM認知などのデータを調査しているのは当社だけではありませんし、視聴率データは365日分ありますから、いろいろな分析が可能な環境ができています。それを利用するのは、広告会社や広告主です。

●テレビCMカルテ(ビデオリサーチ)
到達指標 CM認知率(見た+見たような気がする)
調査対象 個人全体(男女13〜59歳)
調査エリア 東京30km圏
調査手法 留め置きアンケート式で、該当CM素材(6カット印刷掲示)の認知を測定する
調査頻度・素材数 年12回調査実施(1回あたり100素材強)
利用シーン CM投下量に対しての認知効率を把握するとともに、認知者のクリエイティブ評価を得ることで以降の広告計画の際の参考とする

(注)リーチは複数回放送のCMに1度でも接触した世帯(人)の割合、累積到達率のこと。フリークエンシーは到達した世帯(人)をベースにした接触回数。両者とも毎回の視聴率から推計される。リーチ×フリークエンシー=GRP(Gross Rating Point)

テレビの特性ゆえの実測調査

――テレビのGRPは、広告取引のデータといえる?
 というより、視聴率から算出されるGRPを元に、料金も、プランニングの方法も考えられているからわかりやすいということではないでしょうか。
 視聴率データには、世帯視聴率と個人視聴率があり、世帯視聴率は広告取引、個人視聴率はマーケティングデータとして使われています。
 実際にどう使われているか説明すると、スポットの場合は、世帯視聴率はキャンペーンプランに即して、その時間に広告を出すとどのぐらいの視聴率が稼げるのかということを推定するためにまず使います。前4週平均というデータを使うことが一般的です。

 番組と番組の間に入るCM枠をステブレ(SB:Station Break)と言いますが、ステブレでは、その前の番組の終了時視聴率が一般的に使われます。もう1つ、スポット枠にはPT(Participating Announcement)というものがあります。番組提供ではないけれど番組の間に流せるCM枠で、これには番組平均の世帯視聴率が使われます。その終了時視聴率と番組平均視聴率でスポットをとったときにこのくらいの数字になるでしょうと予測し、何GRPだからいくらという料金が決まる。

――あくまで過去の視聴率を広告取引のベースにしている?
 取引はオンエア前に行うため、推定値がなければ成り立ちません。ただ、テレビの視聴率は、同じ番組の中でも大きく変動しますし、オンエアのたびに変わります。テレビの場合は、視聴率がバイイングデータという位置づけになっていますし、目標としたGRPが実際にとれたのか、オンエア時のアクチュアルデータ(実測値)も、また必要になってくる。

●テレビの広告枠
 テレビの広告枠には、番組提供のタイムCMと、ステブレとPTの2つのスポットCMがある。通常、ステブレには前4週間の番組終了時の世帯視聴率、PTには同じく番組平均の世帯視聴率が使われる。
テレビの広告枠

タイムCM(提供CM)  番組と一体で売買される時間枠の中に設定されるCM。提供CMとも言う。通常30秒以上で、提供枠の長さによってCMの量も異なる。
スポットCM ・ステブレ
 ステーションブレイク。番組と番組の間のスポットCM枠。

・PT
 番組提供ではなく、番組内に挿入されるCMのこと。通常、数社のCMが挿入される。


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