特集 2003.4/vol.6-No.1

特集
新たなメディアミックスモデルの構築に向けて

 メディアのプランニングの際に使われている指標は、媒体のリーチを中心とした量的側面だった。媒体の質的特性が重要だと言われながら、各媒体を横に比較できる客観的な基準はなかった。媒体の質的側面に注目し、メディアミックスの共通指標づくりに取り組んでいるのがWeb広告研究会メディア委員会のメディアミックス・ワーキング・グループだ。グループのメンバーでメディア委員長の岩城陸奥氏に聞いた。
 
 Web広告研究会ではこれまで「メディアコミュニケーション力調査」を昨年の1月と7月の2回にわたって行っている。インターネットを含めた包括的なメディアミックスモデルができないか、ということからはじめた調査だ。
 3月に総務省が発表した通信利用動向調査では、2002年末のインターネット利用者数は前年末に比べ1349万人増の6942万人で、普及率54.5%と初めて50%を突破した。また、10%から20%ぐらいは既存媒体で届かない人が出てきているという別の調査もある。その媒体でしか情報の届かない人の割合を「ユニークリーチ」というが、インターネットでしか情報を見ていない人が少なくとも10%ぐらいは既にいるとみている。インターネットを含めたメディアミックスが必要になってきた大きな理由だ。

質の問題を無視してきたメディアミックス

 しかし、いざインターネット広告を既存媒体の中に組み込もうと思っても、なかなかうまくいかない。宣伝部で実際に媒体を担当した人ならわかるだろうが、これまでのメディアミックスは、ターゲットに対する到達(リーチ)と接触頻度(フリークエンシー)といった量的効果と新聞、テレビ、雑誌、ラジオの四媒体中心にプランニングされていた。また、実際のメディアプランニングには経験則が重要だが、インターネット広告にはまだそれがない。たとえば、テレビコマーシャルのGRPを上げると、2、3日後に売り上げが上がるというデータがある。そういうわかりやすい経験則の積み重ねで媒体の活用は進んできた。そこに経験則のまだほとんどないインターネット広告を組み込もうと思っても、何をどうしたらいいかわからない。
 もう1つの問題は、部数や視聴率は、そのメディアがどのくらい届くかという量的指標であって、どう広告が受け止められているか、どのくらい深く伝わるかという指標ではないということだ。
 「リーチ」という考え方にも疑問がある。インターネット広告では、「1リーチ」はバナー広告が表示されて確実に1回見られることだ。同じように、15秒のテレビコマーシャルが一回見られることも1リーチと数える。同じ1リーチでも、受ける内容やインパクトは違うはずだ。あるいは、広告には「セブンヒッツ理論」といわれるものがあるが、これは広告は7回届くと記憶に刷り込まれるという理論だ。しかし、バナー広告とテレビコマーシャルを同じく7回見ても、効果は同じではないはずだ。
 各媒体の伝わり方の違い、深さを知らずに、その媒体の善し悪しや料金の多寡を問題にしても、納得できる効果的な媒体選択にはつながらない。こうしたこれまでのメディアミックスの問題点を解決し、各媒体共通に合理的に判断できるモデルをつくろうというのが、われわれの目指していることだ。インターネット広告だけのためということでは決してない。

「量」と「質」の両面から広告効果を求める

 各メディアを共通に評価するためには、どのようなメディアミックスモデルが最適なのか。まだ構想段階だが、われわれが考えているのは次のようなモデルだ。
 まず、これまでのメディアミックスモデルにも使われていた量的側面、カバレッジがメディアミックスのベースにある。それに加えて、それぞれの媒体の質、ここで言うコミュニケーション力も見ていく。つまり、量×質を広告効果と定義しようというのが最初の発想だ。
 最終的には、量と質に広告主側から見た媒体の使い勝手、つまり広告媒体のユーザビリティーを加えた3つの軸で媒体評価することを目標としている。
 現在行っている「メディアコミュニケーション力調査」は、この中の広告媒体の質的側面、消費者の心理状態や関与度を割り出すための調査ということになる。対象メディアは、4媒体とインターネット、屋外広告の6媒体で、すでに2度、2000年1月にオフラインで約300人に、オンラインではヤフーで約1000人に、7月にはオンラインのみでヤフー、goo、ニフティで約3000人を対象に調査を行っている。

消費者側から見た媒体のマインドシェアを探る

 実際の調査は6つの媒体について同様の25の質問をし、結果を分析している。人々がメディアを評価するポイントは何かを探るためだ。
 その結果、抽出されたのが5つの媒体の特性で、第1の特性を「行動促進」、第2の特性を「接触時間」、第3の特性を「共感」、第4の特性を「非信頼」、第5の特性を「購買促進」と名付けた。
 第1の特性の行動促進は、「参加・応募」「納得して行動」などの項目のポイントが高い。この特性が強い媒体は、金融商品など複雑な商品・サービス、セールスプロモーションの告知広告などに効果的だということだ。
 第2の特性の接触時間は、文字通り「接触時間」、それから「習慣的に接触」「速報性」などの項目のポイントが高い。ブランド浸透目的、新製品告知に向いている。
 第3の特性の共感は、「親しみ」「共感」「楽しい・愉快」などの項目のポイントが高い。企業広告、イメージ重視型商品の広告に向いている。
 第4の特性の非信頼は、「客観/信頼」「情報正確」などの項目のポイントが低い。つまり、これらの項目のポイントが低いほど信頼性が高いという意味になる。
 第5の特性の購買促進は、「購買意図」「感動的/魅力的」「態度変容」などの項目のポイントが高い。直接的にセールスを増大させたい場合に効果がある。
 次のステップではこれらの特性を考慮して、各媒体のコミュニケーション力を測定していく。
 結果は性・年代別などターゲット別で集計しているが、これまでの調査では、全体として新聞は信頼性(非信頼のポイントが最も低い)、テレビは購買促進、雑誌は共感、インターネットは行動促進のポイントが高いといった傾向を示している。
 ただ、気をつけなければいけないのは、この結果は現在のその媒体の使われ方で決まるということだ。どういうことかというと、テレビには販売促進を目的にしたCMが多く出ているから、そのポイントが高く出て、インターネットも懸賞応募などのプロモーションに使われることが多いから行動促進のポイントが高く出るということだ。現在、その媒体にどのような目的の広告が多く出稿されているかにかなり左右される。あくまで消費者側から見たメディアの印象であって、そのメディアが本来持っている効果とは違う。コミュニケーション力とは、消費者側から見た現在の媒体のマインドシェアだと思ってもらえばいい。
 そして、各媒体ごとにこうして求めた五つの特性の得点を足し込んでいくことによって、コミュニケーション力を算出する。これに量をかけることによって、量と質両面からみた各媒体の広告効果全体のボリュームが分かってくるという仕組みだ。もちろん、得点を足し込んでいく場合も広告目的によって比率が変わる。以上のようなことを狙っているのが今回の調査だ。



コミュニケーション力から媒体の組み合わせを考える

 各メディアのコミュニケーション力がわかれば、これまでとは違うメディアの組み合わせもより明確に見えてくる。
 たとえば、新聞は信頼性が高いが、インターネットは低いという結果が出ている。これは迷惑メールなどの悪影響もあると思うが、違う見方をすれば、インターネットと信頼性の高い新聞を組み合わせると、何か新しいことができるかもしれないということが、この中から読めてくる。
 環境問題についての企業広告を信頼性の高い新聞で打ち、それを補完する内容をインターネットで組み合わせていく。あるいは、新聞広告で企業イメージ中心の訴求をし、それに対応した商品やサービスをインターネットできめ細かく紹介していくという使い方だ。
 これまでのメディアミックスは、媒体が違っても広告内容は同じものが多かった。それは、メディアミックスの目的が量的なリーチを広げるためだったこともある。それぞれの媒体特性にあったメディアの組み合わせで、いかに効果を上げるかは、実はあまり考えられてこなかった。
 インターネット広告のプランニングを実際にしてみると、いままでの媒体評価理論がインターネットにそのまま使えないことがわかる。無理やりいままでの価値基準の中に当てはめても、結果が出て来ない。それを違うポイントから見たらどう見えるかというのも、われわれが今回の調査で意図したことだ。


次のページへ→]



インターネットとの連動に不可欠なメディア
真野英明→
もどる