特集 2002.11/vol.5-No.8

小売業の産業化
グローバル10への取り組み
 
商品部を機能別の組織に

 ビジネスプロセス改革の一環として行われたのが、商品部の縦割り組織から横割り組織への変更だ。今までイオンの商品部では、商品ごとに担当を置き、その担当者が商品の購入計画から取引先との商談、商品決定、お店への導入、その後のメンテナンスまで一人でやっていた。これを16のプロセスに分解し、機能別の組織にする取り組みも進められている。

グローバル10をめざした改革
 商品のプロである担当者も、全店のデータを正確につかんで判断をしていたかといえば、そんなことはありません。新しい横割りの組織のメンバーは、その商品の専門家ではないけれども、ある意味お店の専門家であり、店の特徴に合わせた対応ができるようになります。
 また、実際問題として、今までのようなやり方で一人の商品担当者が最初から最後まで見きれるかといったら、優秀な人はできるかもしれませんが、そのレベルの人間を全カテゴリーでそろえるのはむずかしいことです。
 実際は、新しいシステムを入れる前に、昨年一年かけて、衣料品、アパレルグループの組織を先に横割りにしています。確かにITがあって初めて可能になった組織変更ですが、これまでの商品部の人間は「おれが選んだ商品をほかにわかる人はいない」というくらい担当の商品に精通しているプロだったわけで、中で働いている人間が納得しなければ、本当に使えることにはならない。これはトップダウンで行ったからできたことでもあり、そういう意味でもビジネスプロセス改革であって、IT化のみによる改革とは思っていません。

電子商取引市場の可能性

 WWRE(ワールド・ワイド・リテール・エクスチェンジ)はインターネットを使った企業間の電子商取引市場で、この種のものとしては世界最大規模を誇る。設立は2000年4月で、欧米の小売業を中心に57社がメンバーとなっている。アジアからは、イオンと西武百貨店、韓国のロッテが参加している。
 中でも、WWRE設立に参加した18社は「ファウンデーションメンバー」と呼ばれ、2か月ごとに開かれるWWREの運営についての意思決定機関である「エグゼクティブコミッティ」に出席する。イオンは、この18社のメンバーでもある。
 WWREにはいくつかのシステムがあるが、最も利用率が高いのはオークションだ。オークションに参加するメーカーはWWREのメンバーである必要はなく、国内、国外を問わない。イオンのこれまでの取引は、ほとんど国内メーカーとの取引だ。

 実際に稼働を始めたのは2000年12月からです。今年2月までのコスト削減額は5億円でしたが、今年3月から8月までの間に、すでに15億円程度コスト削減を実現しています。
 オークションをやる前は、今までの実績以上に購入価格が下がるはずがないという否定的な見方が社内にも多かったのですが、実際にやってみると下がりました。オークションをやる時は、価格以外の条件を決めないと、メーカーは価格を提示できません。特に、納期と数量です。ところが、今までは「とりあえず一つ」買っていた。一つ買って売れなければ、次は買わない。少しでも安いものが出たら、そちらへ行くことが多かった。そういう商談をやっている限り、メーカーもリスクは負えないわけです。
 逆にいえば、納期と数量の二つを事前に約束できればメーカーは値段を下げられたということが、オークションをやってわかったことです。ただ単に値段を下げてもらうのではなくて、どういうところでメーカーとコラボレートできれば、値段が下がるのか。今は、オークションでそういう経験を積み重ねている段階です。
 また、商品にも市場性のあるものはたくさんあります。今までのように固定した問屋経由の仕入れでは、ある程度、仕入れの値幅が決まっていました。ところが、オークションにかけると、今までメーンでなかった取引先から安い価格が出てくることが多い。市場性のある商品は、どこかで在庫を抱えているところがあるということです。要は市場のメカニズムが働いて、お互いにメリットが出る。オークションのポイントは、メーカーとのコラボレーションと市場性、両者をどう使い分けるかだと思っています。
 もう一つは、やはり量を集めることです。ディマンドアグリゲーション、需要集約という言葉がありますが、グループ全体の需要を集約して、コスト削減に結び付けていくことも重要だと思っています。

グローバルリテーラーとの戦い

 世界トップ10の小売業をめざし、改革をすすめているイオンだが、ウォルマートの日本進出にどう対応しようとしているのだろうか。

 ウォルマートが日本の消費者や市場の特殊性への対応に要する時間は、当社にとって数年のアドバンテージだと思います。ウォルマートには、ナショナルブランド(NB)でも売価が半値という商品が山ほどあります。しかもここ数年、毎年、当社の売り上げをはるかに上回る成長をしています。これは半端な相手ではありません。無駄なコストを全部外しておかないと、まず戦えない。
 また、ウォルマートは元々ディスカウントストアですが、スーパーセンターという業態で攻勢をかけ、この五年間でアメリカの食品業界でもナンバーワンになっています。
 その中でも比較的健闘しているアメリカのスーパーマーケットに、H・E・バットがあります。彼らがやっていることは、人手のかかること、例えば、生鮮野菜がウォルマートが60種類だったら、120種類用意する。NB商品の価格ではウォルマートに勝てないので、PB商品でウォルマートの価格に近づける努力をする。もう一つは、全体としてのカスタマー・ロイヤルティーを上げていく。ウォルマートとまともにぶつかっているところはそういう戦い方をしています。
 イオンのメーンとしている事業分野、GMS、スーパーマーケット、ドラッグストアも、エブリデー・ロープライスが利く領域ですから、ウォルマートと競合します。イオンの今の改革は、そういうグローバルリテーラーと対等に戦うための準備です。
 20年前までは欧米の小売業でも、問屋を介した流通プロセスを使っていましたから、収益性にそれほどの差はありませんでした。決定的に差がついたのは、この10年です。その最初の10年と後の10年の大きな違いは、ITの活用です。この10年間でITは安くもなり性能もよくなりました。彼らはそれを活用し、日本はそれに遅れたということです。
 日本の小売業が努力を怠ってしまった背景には、大規模小売店舗法の規制があります。自由な出店ができないことで、日本の小売業は逆に守られてきたと言えます。
 その中で、イオンがグローバルリテーラーと戦うことになると言い続けているのは、海外に十数年前から出店しているからです。われわれの出店しているタイやマレーシアには、当たり前のようにテスコができ、カルフールができ、ウォルマートが進出しています。いかに彼らが安い商品を提供しているのかを知っているのです。それが、日本に来ない理由はありません。
 日本の自動車メーカーもそうですが、グローバルな市場で戦える企業が生き残っています。これからの小売業も同じだと思うのです。


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日本の小売業、もう一つの課題
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