特集 2002.9/vol.5-No.6

変わる新聞広告の掲載基準
規制が緩和された4つの広告
 
 ここ数年、規制が緩和される広告が増えている。その代表的なものに弁護士広告、病・医院などの医療広告がある。医師や弁護士は、共に高度な知識と技能を必要とする専門的職業であり、公共的性格の強いサービスだ。最近の規制緩和の流れはこうした分野にまで及んできている。また、クーポン広告は一般の広告と同じく独禁法と景表法のルールで行われるようになり、求人広告は雇用対策法の改正で募集採用時の年齢制限が原則禁止され、求人側にとっては規制強化だが求職側にとっては規制が緩和された。
 こうした法規制の緩和は、新聞広告掲載基準にも反映される。以下、こうした規制緩和によって変化する広告について具体的に見ていこう。

広告が原則自由になった弁護士など専門8職種

 弁護士の業務広告は2000年10月の日弁連の会則、および規定の見直しによって原則自由になった。また、公認会計士、行政書士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士と合わせて8職種の広告が原則自由に行えるようになった。
 これらの職種は、法律により業務独占が認められた事務系の専門職業で、資格者は資格者団体への入会が義務付けられている。そのため、これまではそれぞれの職種の業法や団体の会則などで広告は禁止、または自主規制されてきた。それが、弁護士広告だけはまだ例外的な規制を残しているが、それ以外は不当表示にならなければ広告が原則自由になった。
 公正取引委員会も「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を公表し、資格者団体の広告や報酬、顧客に関する活動など会員間の競争に与える影響が大きいものについて独禁法上の考え方を明らかにしている。
 日弁連は1955年に「弁護士倫理」を制定して弁護士の広告活動を自主規制してきたが、国民が利用しやすい司法への改革の一環として2000年に解禁に踏み切っている。その背景には、70年代後半から欧米で専門職種への独禁法適用が活発になったこともあるが、インターネットの普及に伴ってホームページを開設する弁護士が増加したことが直接の契機になっている。
 弁護士広告では、得意分野の紹介のほか、料金も弁護士会があらかじめ決めた報酬規定の範囲内で示すことができる。顧問先や担当事件は依頼者の了解があれば表示できるが、勝訴率の掲示や他の弁護士との比較、訪問や電話による勧誘は禁止され、違反者には制裁がある。また、これまでテレビ、ラジオ、通信の使用は禁止されていたが、メディアの使用制限はなくなった。
 ただ、広告解禁で弁護士会の抱える問題も表面化している。解禁で最も心配されていたのは、非弁提携弁護士の広告がはんらんすることだった。
 弁護士の資格のない者が報酬を得る目的で法律事務やその周旋を行うことは、非弁活動(非弁護士活動)と呼ばれ法律で禁止されている。非弁提携弁護士とは、いわゆる整理屋、紹介屋など悪質な債務整理業者と提携して、多数の債務整理案件を処理する弁護士のことだ。
 弁護士や弁護士会に対する社会的信用を失墜させるものとして、各地域の弁護士会では、広告調査委員会を設け問題に対処しているが、解禁以降、こうした非弁提携弁護士の広告掲載が後を絶たない。
 広告自由化を機に、非弁提携弁護士の排除や、弁護士本来の活動に対する理解を深めるためにも弁護士会単位での広報活動も求められている。

弁護士の業務広告に関する規定
表示しなければならない事項
氏名および所属弁護士会名。共同広告のときは、代表者1名の氏名および所属弁護士会名
禁止される広告
(1)事実に合致していない広告
(2)誤導又は誤認のおそれのある広告
(3)誇大又は過度な期待を抱かせる広告
(4)特定の弁護士もしくは法律事務所と比較した広告
(5)法令又は日本弁護士連合会もしくは所属弁護士会の会則及び会規に違反する広告
(6)弁護士の品位又は信用を損なうおそれのある広告
表示できない広告事項
(1)訴訟の勝訴率
(2)顧問先又は依頼者(顧問先又は依頼者の書面による同意がある場合を除く)
(3)受任中の事件(依頼者の書面による同意がある場合及び依頼者が特定されずかつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く)
(4)過去に取り扱い又は関与した事件(依頼者の書面による同意がある場合及び広く一般に知られている事件又は依頼者が特定されない場合で、かつ依頼者の利益を損なうおそれがない場合を除く)
その他の注意事項
以上のルールは、第三者の談話や推奨の形を取った広告内容にも適用される。また、「専門家」「専門分野」「得意分野」などの表示は、「専門」「得意」の客観的基準がないため控えることとされているが、「取扱分野」「取扱業務」は、評価を伴わない用語なので許される。

「広告表示の基礎知識」(日本新聞協会)から

掲載項目が大幅に緩和された医療広告

ザ・デイリーヨミウリの広告特集
 医療に関する情報発信も、規制緩和の流れによって大きな変化を見せている。99年6月には製薬会社が新聞広告を使って臨床試験(治験)の被験者を募集する治験広告が解禁になったが、今年4月1日からは、医療制度改革の一環として大幅な医療機関の広告規制緩和が行われた。医療制度審議会は一昨年、必要な情報はできる限り提供するのが望ましいと大幅な規制緩和の方針を打ち出している。今回の広告掲載項目の緩和はそれに基づくものだ。
 これまでの医療広告といえば、診療科目、病院名、住所、診察時間、入院設備の有無などに限られた表面的な項目だけだった。今回の改定では、専門医の認定、治療方法、手術件数、分娩件数、平均在院日数、疾患別患者数、医師・看護師の患者に対する配置割合、売店・食堂・一時保育サービスの有無、入院診療計画の導入、患者相談窓口の設置、病床利用率、医療機関のホームページのURLなど、掲載できる項目が大幅に増えた。特に、専門医かどうか、治療方法、手術件数、分娩件数など病院の質にかかわるものも広告できるようになった意味は大きい。電子カルテの導入などで患者の求めに応じてカルテの内容を教えてくれる場合は、その旨を知らせることも可能になった。
 ただし、弁護士などの広告が原則自由なのに対し、医療広告は医療法に定められた項目以外は表示できない。過剰な広告を認めれば、生命や身体に影響が及ぶおそれがある、医療は専門性が高く、素人は広告だけでサービスの質を判断できない、などがその理由だ。
 また、治療成績以外では、医師の略歴は出身校まで認められたが、顔写真は表示できない。政令で定められている診療科目以外の専門医、スポーツ認定医、救急認定医などの認定医の資格、利用できる医療機器なども表示できない。広告中の写真、イラスト、ロゴなどの使用の可否については、都道府県によって見解に差があるため、担当部局に確認する必要がある。
 大幅に掲載できる項目が増えた今回の緩和措置だが、「患者が最も求めている治療成績の表示は客観的な評価ができないという理由で見送られている。情報開示という目的から見たら実効に乏しい」(読売新聞東京本社医療情報部・田村良彦記者)という意見は多い。

病・医院が広告で掲載できるようになった項目
医療の内容
専門医の認定、治療方法、手術件数、分娩件数、平均在院日数、疾患別患者数
設備や人員配置
医師・看護師の患者数に対する配置割合、売店・食堂・一時保育サービス
体制整備
セカンドオピニオンの実施、症例検討会の開催、電子カルテの導入、入院診療計画の導入、患者相談窓口の設置、医療安全のための院内管理体制
評価
日本医療機能評価機構の個別の評価結果
病院の運営
病床利用率、外部監査、理事長の略歴、患者サービスの提供体制についての評価(ISO9000シリーズ)
その他
ホームページURL、公害健康被害・小児救急医療拠点病院・エイズ治療拠点病院、特定疾患治療研究を行っている病院など

一般広告と同じ扱いになったクーポン広告

モンテローザグループのクーポン広告
 新聞のクーポン広告は90年10月に解禁されたが、当時は新聞事業者が景品を提供することを禁じていたため、クーポン広告を「景品ではなく広告」と位置づけ、「新聞のクーポン付き広告に関する規則」を定めていた。また、新聞に掲載されたクーポン券を景品と区別するため、「券面への必要事項表示」や「支部協への届け出」などいくつかの制約があった。
 それが、今年4月に、新聞公正取引協議会が定めていた「新聞のクーポン付き広告に関する規則」が撤廃されたことで、広告主が行うクーポン広告は一般ルールで行えるようになり、また、新聞社や新聞販売店などの新聞事業者もクーポン広告ができるようになった。
 この規則が撤廃されたのは、98年5月から新聞事業者も「購読料の3か月分の8%(現在は6か月分の8%)」を上限とする景品提供が認められたことによる。これにより広告主などのクーポン広告は、一般の広告と同じく独禁法と景表法のルールと、広告主が所属する業界の公正競争規約の範囲内であれば、自由に掲載できるようになった。

年齢制限が原則禁止された求人広告

 2001年10月から募集採用時の年齢制限の禁止を盛り込んだ改正雇用対策法が施行された。求職者にとっては規制緩和だが、求人側にとっては規制強化の法改正だ。99年に改正男女雇用機会均等法が施行され、募集・雇用時の男女差は無くなったが、今回は年齢制限の禁止だ。
 法律では、「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない」となっており、募集採用時の年齢制限を廃止する努力を企業に求めている。
 短期的には深刻な状況にある中高年の再就職環境の改善を狙った法律改正だが、急速な少子高齢化が進展する中で「年齢にかかわりなく働ける社会の実現」をめざす改正でもある。
 ただし、新規学卒者募集や組織のバランス上、特定の年齢層が欲しい場合、定年までに能力を発揮できる期間が足りない場合など10のケースを挙げ、当てはまる場合は年齢制限が認められている。

●求人広告で年齢制限が認められる場合
(1)期限の定めのない労働契約で、新規学卒者を募集する場合 (2)組織バランス上、特定の年齢層の従業員を補充する場合 (3)定年間近の年齢等、能力発揮までに必要とされる期間が足りない場合 (4)年功制の給与体系のため、ある年齢以下を対象とする必要がある場合 (5)特定の年齢層向けの商品販売やサービス提供を行う人を募集する場合 (6)芸術・芸能の分野の募集において、特定の年齢層を必要とする場合 (7)労働の安全性のために特定の年齢以下に限定する必要がある場合 (8)業務上、年齢的な体力、視力の低下を避ける必要がある場合 (9)行政機関の指導などに応じて中高年齢者に限定して募集する場合 (10)労働基準法上の規定で禁止・制限されている場合




変わる新聞広告の掲載基準
桜井圀郎氏→


医療の現場は規制緩和をどう受け止めているか
田村良彦記者→
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