特集 2002.7・8/vol.5-No.4・5

デジタル放送の現状を探る
 CS110度が放送を開始してから3か月がたった。また、来年末には地上波デジタル放送も、大都市圏で始まるという。デジタル放送、特にCSは広告メディアとしてどこまで育ってきているのだろうか。また、放送全体はデジタル化によってどう変わろうとしているのか。デジタル放送の現状を探った。

広告メディアとしてのCS放送

  CSは1996年からデジタル放送を開始している。CSの中には、視聴世帯が400万世帯を超える番組を持つ社もすでに5、6社あるという。CSの特徴は一般には多チャンネルと言われるが、広告メディアとしてはどのような特徴を持っているのだろうか。
 広告メディアとしてのCSが抱える課題、スタートしたばかりのCS110度の可能性も含め、衛星テレビ広告協議会の井股進会長に聞いた。
 
――衛星テレビ広告協議会の設立は91年と、かなり早い時期から活動していますね。
 CSのデジタル放送が始まったのが九六年ですから、アナログのケーブル放送時代からある団体です。今年度、4チャンネルが新規加入して、加盟社は今36チャンネルになっています。
 現在の入会基準は、視聴世帯数が100万世帯以上で広告営業に積極的に取り組んでいる会社ということになっています。CSにはもともとノンCMのチャンネルがたくさんありますから、広告を積極的に入れているチャンネルはほとんど加入しています。

――視聴世帯がすでに400万世帯を超えるチャンネルもあると聞いていますが。
 すでに5、6社あります。加入社の半分近くは300万世帯を超えていますね。

過小評価されている媒体力

――CSの媒体力はかなり高まってきている?
 昨年、協議会が共同で行った調査では、マルチチャンネルが見られる世帯、つまり衛星やケーブルを通してCSを見ている世帯では、テレビを見る時間の18.5%をCSの視聴が占めています。これをわれわれは接触率シェアと呼んでいるのですが、マルチチャンネルが見られる環境にある家庭では、確実に視聴率の分散が起こっているということです。
 この数字が今後どうなっていくかは、ブロードバンドなど他のメディアとのかかわりがありますから予測はむずかしいのですが、個人的には、2倍、3倍になることはないと思っています。ただ、CSの接触率シェアが二十数%にはなる可能性はある。

CSの接触率の時間帯推移

CSの接触率シェア
衛星テレビ広告協議会「専門チャンネル共同調査」2001.6から

――CSを見ている世帯数は今どのくらいですか?
 衛星とケーブル経由を合わせて700万世帯ぐらいです。
 日本の世帯数は約4700万世帯ですが、CSの接触率(GRP)シェアがもし仮に現在の18.5%のままだとしても、分子の700万世帯が大きくなれば明らかに地上波のGRPロスは広がっていきます。
 その視聴率のパラダイムが変わる一つの目安は、CS+ケーブルの加入者が1000万世帯になるときだと見ています。いまのCS+ケーブルの普及率は、4700万世帯の内の700万世帯ですから約15%です。それが1000万世帯を超えると20%を超える。一般に、普及率が二割を超えると急激に認知率が高まってきます。
 そして普及率が30%になると明らかに違った世界になったとだれもが実感できるようになる。30%の普及率というと1500万世帯になります。CSの広告媒体としての最初の大きなステップが1000万世帯、その次が1500万世帯と見ています。

――それはいつごろになると予測していますか。

 1000万世帯に到達するのが2004年から2005年ぐらい。普及率が20%を超えると認知は急速に高まりますから、1500万世帯になる時期はさらに短くなると予想しています。
 しかし、現在の700万世帯という普及から見ても、今のCSはメディアとしての力を過小評価されていると思います。

CSメディア視聴世帯数の中期予測
衛星テレビ広告協議会

CSのCMの特色

――現在、CSで放送されているCMには、どんなものがあるのでしょうか。
 大枠は地上波と同じです。スポットとタイム(番組提供)が基本になっています。地上波の場合の番組提供は、制作の段階から関係することがありますが、CSの場合は既にある番組を提供してもらう形が基本です。
 割合としては、スポットのほうが圧倒的に多いですね。また地上波と同じように、番組企画的なものにも各社取り組んでいて、いろいろな事例が出てきています。

――地上波とCSのCMの違いを挙げるとすれば。
 一つ目は視聴者が良質なことです。ケーブルテレビやCSのスカイパーフェクTV!(スカパー)に入っている世帯は、一般世帯よりも所得が高い。有料で放送を見ようという世帯ですから、これはある意味当然です。とくに、経済ニュースやゴルフの専門チャンネルを見る世帯は平均年収が1000万円を超えています。
 二つ目は、チャンネルによってターゲットがセグメントされている。先ほどの経済ニュースやゴルフの専門チャンネルですと、男性35歳以上のいわゆるM2、50歳以上のM3が多い。逆に、音楽チャンネルはティーンに強い。地上波が狙いにくいところをピンポイントで狙えます。その意味ではCSは雑誌的な性格を持っています。
 3番目は、長尺もののCMが比較的簡単にできる。地上波の場合15秒スポットが主流になっていますが、CSは、30秒スポットの割合の方が多くなっています。また、1分、2分、3分といった長尺CMで展開されるケースがけっこうあり、商品の特性をかなり深いところまで訴求できます。15秒だとどうしてもタレントを使ったイメージCMになりがちですが、CSの長尺CMの場合は商品のスペックまで説明できます。
 4番目に、比較的廉価で全国展開のキャンペーンができる。基本的にCSでは各ケーブル局にも衛星と同じCMを流します。地上波で全国展開しようと思うと、かなりの金額になりますが、CSですと100万円単位でできます。

――CSのスポット契約も地上波と同じですか。
 1クール契約、年間契約もありますが、1か月契約が基本です。1か月で百本の全国展開のキャンペーンスポットが数百万円で打てる。かなりリーズナブルだと思います。

――CSならではの広告展開というと、どんなものがありますか。
 過去、いろいろな事例がありますが、一日電波ジャックもありますね。丸1日CM枠を1社で買い切るものです。5秒CMを集中して流すショットガンCMというのもあります。それからCSの複数のチャンネルで同じゾーン、たとえば21時台に全部同じCMを流すこともやっています。

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