特集 2002.5/vol.5-No.2

進化するカラー広告
軽く、丈夫で、美しい刷り上がりの紙を 軽く、丈夫で、美しい刷り上がりの紙を

 新聞用紙自体も進化している。新聞の増ページとオフセット化にこたえるために軽量で発色のいい紙が求められている。新聞用紙の作り手はどのような工夫をしているのだろうか。日本紙共販営業統轄本部品質保証部の水谷健二氏と越田正紀氏に聞いた。
 
 昔から新聞の大きさは今と同じブランケット版で、何の代わり映えもないように見えるが、昭和50年以降、実は急速な進歩を遂げている。新聞の多ページ化、オフセット化、輪転機の高速化、紙面のカラー化、この新聞の四つの大きな変化への対応が新聞用紙を大きく進化させた要因だった。

新聞の多ページ化への対応【新聞用紙の軽量化】

 凸版時代には24ページだった読売新聞も、朝刊は今40ページになっている。この新聞の多ページ化とともに進んだのが、新聞用紙の軽量化だった。
 新聞の紙の重さは「坪量」と呼ばれ、1平方メートル当たりの紙のグラム数で表す。新聞用紙の坪量は昭和50年に51.8グラムだったものが、51年に48.4グラム、55年に46.2グラム、平成元年43グラムと、だいたい3グラムぐらいずつ軽量化してきている。現在は、この43グラムの超軽量紙が主流だが、最近は、坪量40.5グラムの新聞用紙も登場している。新聞のページ数が増えても、それほど重くなったと感じないのは、この用紙の軽量化によるものだ。

水に強い用紙の要請【オフセット化と水】

 読売新聞が完全にオフセット印刷に移行したのは、1998年からだ。凸版印刷に比べオフセット印刷は、印刷のクオリティーが格段によくなる。
 ところが、オフセット印刷は水をつけて印刷する。水と油の反発を利用して、版の非画像部に水を付け、画像部にだけインキが載るという印刷方法だ。
 もともと紙は99%の水と1%のパルプで作られている。手漉きの和紙と原理は同じで、それを脱水して水分約9%の紙にする。それをオフセットで水をつけて印刷するわけで、用紙の軽量化で紙が薄くなっていることもあり、水切れを起こしやすくなる。
 カラー印刷では、1ページを印刷するために4版を使うから、さらにそうした問題が起こりやすい。

表面強度を上げ、裏抜けを防ぐ【ゲートロールと填料】

 紙の軽量化とオフセット化は、新聞用紙にとって相反する性能を要求する。
 紙の原料には、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプと3種類あるが、NKPと呼ばれる剛直な繊維でできている化学パルプを多く入れることによって紙を切れにくくしている。しかし、これだけを入れると表面が粗くなるので、3種類のパルプのブレンド率も重要になる。また、撥水加工も施さなければならない。
 さらに水を使うと紙粉がたまりやすくなるため、ゲートロールという設備で澱粉を表面に塗って、表面強度を上げている。
 紙が薄くなれば、両面に印刷する新聞は当然裏抜けしやすくなる。この対策として、「填料」という数ミクロンの細かい粉を紙の中にいっしょにすきこんでいる。これは裏抜け防止剤と呼ばれるもので、表からのインキが裏側に抜けないようにするものだ。

輪転機の高速化への対応【紙粉防止、用紙の均一化】

 新聞用紙の大きなロールを巻取紙というが、この単位を「連」という。
 一連は新聞8ページが1部という計算で500部刷れる長さだ。40連を1巻にした巻取紙で、2万部の印刷ができる。一連の重さは19キロ、40連だと760キロの重さになる。50連、60連という巻取紙もある。
 輪転機のスピードも高速化されていて、以前は1時間に10万部ぐらいだったものが、現在では17万部刷れる輪転機も登場している。輪転機の紙のスピードは1分間に500から600メートルだ。
 日本紙共販の越田氏は「20万部刷っても紙粉が出ないような作り方はしてきたつもりです」と語る。紙粉対策だけでなく、高速輪転機のスピードでも断紙が起こらず紙の走行をスムーズにするためには、刷り出しから刷り終わりまで紙を均一に作る必要がある。特に幅方向のばらつきを無くすことが重要で、新聞用紙には坪量、水分、厚さが均一なことが要求される。

インキののる新聞用紙に【着肉性の向上】

 「新聞用紙は、軽い、断紙しない、紙がスムーズに流れるといったことは今や当たり前で、最近の新聞用紙の改良のテーマは、紙面の着肉性です。紙面の印刷品質向上に移ってきている」と語るのは、水谷氏だ。着肉性というのは、インキののりのことで、特にカラー広告の品質にとっては重要な問題だ。
 着肉性をよくするためには、紙の表面は滑らかな方がいい。その装置がキャレンダーパートと呼ばれるもので、これまでは何本かの鉄製の太いロールの間に紙を通して、アイロンをかけるように紙の表面を平らにしていた。しかし、紙の軽量化が進んだこともあって、ただ単に紙の表面を平らにするだけでは紙が薄くなり過ぎ、逆にインキが裏抜けしやすくなってしまう。そこで、表面が平らで、なおかつ、ふわっとしたクッション性のあるものにするため、最近はキャレンダーパートにソフトキャレンダーが使われるようになった。
 ツインワイヤという紙の表裏差をなくす装置も使われている。紙は通常、水に溶かしたパルプを長網に流し込み片側だけで脱水するが、それを両面から脱水することで表裏とも平滑になり、着肉性がよくなる。
 さらに、裏抜け防止の填料も従来より多く入れ、紙粉を抑えるため表面に塗るゲートロールでの塗工量も増やし、表面強度を上げるといった工夫も行われている。
 水谷氏は、「むかしの新聞用紙に比べ現在はかなり改良されてきました。新聞社の品質に対する要求が、紙のレベルアップにもなっている」。また、越田氏は「新聞用紙というのは、われわれ作る側から見れば、ものすごく神経を使う紙」だという。

■ 新聞用紙の原料の電子顕微鏡写真
化学パルプ(NKP)
化学パルプ(NKP)
化学的蒸留で製造される繊維で、長繊維が多く、強度があり高密度。白色度は高いが、不透明性に劣る。混合率5〜15%。
機械パルプ(TMP)
機械パルプ(TMP)
不透明度が高く、紙厚が出しやすいが、エネルギー消費が大きい。混入率は10〜30%。
古紙パルプ(DIP)
古紙パルプ(DIP)
古紙を脱墨したもので、各種パルプの混合。化学パルプと機械パルプの中間的性格。省エネ、省資源型パルプ。混入率は50〜80%。

青み系か、赤み系か【新聞用紙の色】

 新聞用紙の色はa*(赤・緑方向)、b*(黄・青方向)で表される。青み系の方がカラーが映えるという意見もあれば、裏抜けが目立たないのは赤みの方で、総合的に判断すると赤み系の方がいいという見方もある。ただ、古紙の混入率が高まると青み系がより強まる傾向があり、現在制定作業が進められている新聞用ジャパンカラーでは、平均値よりやや青みによったところに新聞用紙の標準色が設定された。
 水谷氏は、「新聞用紙の色はいまの段階では基準がありませんし、新聞社によって好みが当然あると思います。ただ、ジャパンカラーで決めた色がひとつの参考にはなる」とみている。

新聞用紙は循環型【古紙混入率】

 環境問題や省資源が言われる前から、新聞は家庭から回収された古紙を再利用してきた。古紙の混入率は以前から50%を超えていた。
 新しく混入するパルプも、廃材のチップが使われている。古紙回収の時、チラシが入ってくるが、これには白さがあり、強度がある。チラシを混ぜることで、いい古紙パルプになる。
 また、最近は70〜80%が古紙という新聞用紙も増えているが、これはインクを抜く脱墨技術がここ数年、急激に進歩したためだ。古紙が70%の新聞用紙でも以前と比べかなり白くなっている。
 最近の新聞用紙の白さは、白色度でいうと53%、しかし上質紙は80%ぐらいと確かに差はある。古紙の利用について越田氏は「古紙を7割も使い、短時間での印刷が必要な新聞用紙と、全然レベルの違う紙と比較されても困る。新聞用紙は循環型の最たるものなんです。その点は特に強調したいですね」という。

望まれる新聞社とメーカーの連携【紙の管理と品質向上】

 紙は湿度に対して敏感だ。梅雨の時期になると水を吸って伸び、冬は逆に紙が乾燥して縮まり、断紙の原因になる。特に、冬場と夏場は印刷工場の湿度調整を早め早めに行う必要がある。
 こうした紙の管理に加え、読売新聞社では、納品された巻取紙の紙質をチェックして、その結果を製紙メーカーにフィードバックしている。新聞社の中で独自に製紙メーカーと同じ機械を持ち、紙の特性をチェックしているのは、読売新聞社と中日新聞社だけだという。「読売新聞社には技術2部や印刷部に用紙担当の人がいて、何か問題があれば、すぐわかるようになっている」(越田氏)
 凸版時代は紙の作業性や品質などさまざまな課題が多かったが、オフセット印刷になってから紙の品質や輪転機の性能も向上している。それだけに、逆に、何かトラブルが起こった場合でも、その原因の追求がむずかしくなっている面がある。
 越田氏はいう。「カラー印刷の品質の向上など、これだけ新聞印刷が高度になってくると、やはり、紙、インキ、ブランケット(注)、印刷機の四つがうまくかみ合わないと、印刷そのものが安定していかない」。今後も新聞広告の印刷品質の向上が求められてくるだろうが、各メーカーと新聞社の連携が、ますます重要になってきている。

(注)ブランケット: オフセット印刷では、刷版のインキ画像を紙に直接転写せず、一度ゴム胴に転写してから印刷する。このゴム胴をブランケットという。ブランケットはゴム製なので、紙面の多少の凹凸は問題なく印刷できる。

新聞用ジャパンカラー決定への動き

 新聞カラー印刷の標準化を目指して、2000年9月から新聞用ジャパンカラー検討委員会による策定作業が進められている。現在、最終作業が進められており、この秋までには「新聞用ジャパンカラー」が制定される見通しになっている。
 新聞用ジャパンカラー(JCN=Japan Color for Newspaper)は、日本の新聞カラー印刷で再現される色を数値として表すための基準で、カラー印刷の工程管理に関する国際規格ISO12647―3をベースに、日本の新聞印刷の現状を踏まえて制定される。
 「新聞用ジャパンカラー検討委員会」は、ISO/TC130国内委員会が発起人になって2000年9月に設立された組織で、検討委員会には日本新聞協会のほか、インキ、用紙、印刷機械、広告など7つの業界、団体が参加している。ISO/TC130は、印刷技術全般にわたって国際規格の作成作業を行っている専門委員会で、雑誌用ジャパンカラーなど、これまで多くのISO規格が制定されている。
 新聞用ジャパンカラーとして標準化されるのは、
(1)標準インキ
(2)標準印刷用紙
(3)標準色特性とそのデジタルプロファイル
の3項目だ。これまでインキ、印刷用紙はそれぞれ標準化作業をほぼ終え、「標準色特性決定のための印刷」を行うところまできている。
 新聞のカラー印刷には標準色がないため、特にカラー広告は新聞によって色再現がばらつくことがあった。新聞用ジャパンカラーが決まれば、印刷特性を数値データとして明確にできるので、カラー印刷の品質安定のガイドラインになると期待されている。

新聞用ジャパンカラー検討委員会の組織





新聞用インキの特性
サカタインクス→


入稿から刷り上がりまで
読売新聞社制作局→
もどる