特集 2002.3/vol.4-No.12

ブロードバンドで何が変わるか

 インターネットのブロードバンド化が急速に進んでいる。動画や音楽をスピーディーに配信でき、常時接続によって利用者が特定しやすくなるブロードバンドは、広告媒体としても大きな期待が寄せられている。ブロードバンドのメディアとしての可能性と課題、そして、デジタルメディア全体に及ぼす影響を探る。

ブロードバンド、そのメディアとしての可能性 ブロードバンド、そのメディアとしての可能性

 ADSL(注1)など高速インターネット接続サービスの利用者が急増し、ブロードバンド(高速大容量)通信を対象にしたサイト開設や広告配信の試みが始まっている。ブロードバンド化はインターネットのメディアとしての可能性をどう広げるのだろうか、また、メディアミックスの中にどう位置づけたらよいのだろうか。

(注1)非対称デジタル加入者線(Asymmetric Digital Subscriber Line)の略称。「加入者線」と呼ばれる従来の電話回線(メタルケーブル)を利用し、専用のモデム経由で高速なデータ伝送を可能にしたデジタル技術(DSL)の1つ。ADSLは、DSL技術のうち現在もっとも普及している方式で、1対の加入者線で最大上り512kbps、下り8Mbpsの速度で通信が可能になる。
 
――ブロードバンドの現状からお聞かせください。
 ブロードバンドの前に、インターネット全体の状況からみていきたいと思います。あるメディアを広告媒体として使う目安として、われわれは普及率が16%を超えたらテスト出稿の対象にする、30%を超えると使える媒体になるという基準を持っています。インターネット人口は昨年末で4366万人です。日本の人口は1億2700万人ですから、そういう意味では、インターネットもそろそろ媒体として使えるようになってきているとみています。
インターネット人口
自宅接続者の推移
 その中には、パソコン(PC)の自宅利用、自宅以外利用、携帯電話利用がありますが、注意しなければならないのは、それぞれ重なる部分があることです。それを考慮すると、自宅利用、もう一つは携帯電話の市場が大きくなってきていることがわかります。

――携帯電話もメディアとして有望になってきた?
 携帯電話をどう使っていくかも、これからはキーになっていくと思います。ただ、携帯電話の台数はインターネットに接続できるものだけでも2300万台ぐらいになりましたが、迷惑メールで媒体として使うには問題を抱えています。ユーザーのアドレスがどんどん変わってしまうので、携帯電話を使ったコミュニケーションが非常に阻害されていたと思うのです。今回の経済産業省の措置(注2)で状況が変わってくれば、メディアミックスをする際にもっと携帯電話を活用した形に変わってくると思いますが。
 インターネットに話を戻すと、会社から接続してるのか、自宅接続なのかも、インターネットがメディアとして使えるポイントになります。自宅接続率は2000年9月で71.7%だったものが2001年9月には83.4%に増えています。自宅接続率が上がっているということは、メディアとして使われる確率が非常に高くなったということです。
 それから、地域別の普及率もこの一年間ですっかり様変わりしています。インターネットは、地方でもかなりメディアとして使えるようになってきています。

(注2)経済産業省は2月1日、インターネットを通じてパソコン、携帯電話に一方的に送り付けられる宣伝広告、いわゆる「迷惑メール」の防止対策として、特定商品取引法の規定違反で行政処分後も同様のトラブルを繰り返す可能性がある場合は、原則として、会社名と所在地を公表すると発表した。同日付での省令改正では、通信販売などの事業者が電子メールで広告を送る際には、メールの件名欄に「!広告!」と表示し、本文中にも広告であることを表示するよう義務付けられた。

インターネットの使い方が変わる

――ブロードバンドの普及で広告主の媒体選択は変わるとお考えですか。
地上波放送局の視聴時間の変化
ブロードバンドの普及予測
 昨年の調査でも、テレビの視聴時間は平日で3.7%、土日で7.9%減少しています。インターネットのヘビーユーザーになると週平均で二3.7%も減少しています。
 そういう状況の中でわれわれは媒体選択をどう考えていくかですが、それを考える前提として、広告費はマルチメディア時代になったからといって増えないということです。一方で、すべてのメディアに広く出稿するのではなく、広告はある程度の塊で出していかないと認知効率が悪いということがあります。
 その場合も、やはりコミュニケーションの柱が欲しいですから、メーンが新聞とテレビというのは、ここ4〜5年は変わらないと思います。ただ、メディアミックスを考えると、インターネットは補完媒体としてそろそろ使っていい状況になってきているということです。

――補完というのは?
 自分たちの商品のユーザーを考えると、テレビ、新聞でカバーできないユーザーが増えつつあります。その一部をカバーするにはどうもインターネットが効率がよさそうだとみています。

――インターネットのブロードバンド化はどこまで進んできているのでしょうか。
 総務省の調査では、昨年末の段階で280万世帯、今年は電通の予測では900万世帯を超える見込みです。つまり、今年中にはブロードバンドが、インターネット全体の三分の一を占めると予測されています。ブロードバンドの接続スピードは一般的には300Kbps以上ですが、この調査では128Kbps以上をブロードバンドと見ています。

――アメリカではブロードバンドの普及が遅れ危機感が出ているという記事が新聞に出ていましたが。
 日本は今年で900万世帯を超えると予測されているわけですが、米国は昨年末で860万世帯がブロードバンドになっている。注目すべきは韓国で昨年末で普及率は71.4%に達しています。しかし、今年1年で日本も世帯数では韓国、アメリカに追いつくとわれわれは見ています。
 そうなったときにどうなるかというと、まず接続時間が増えて来ます。韓国、アメリカの例から考えると、ブロードバンドになると接続時間はほぼ倍になっています。

1週間のインターネットの利用日数
回線種別・速度別インターネット利用状況
――インターネットがブロードバンド化する意味は、単にスピードが早くなるだけではないということですか。
 一人当たりの月間サイト訪問回数、ページビューも約倍になります。つまり、ブロードバンドの普及が進めばインターネットの使い方が変わってくるということです。それだけ媒体としての力が上がると考えています。だから、今年から来年にかけて、真の意味でインターネットが媒体として使えるような時代に入るとみているわけです。
 実際にADSLに変えた人を対象にした調査では、導入後はほぼ毎日使うが9割近くにも達しています。利用時間も、導入前は1週2時間20分、1日20分が平均ですが、それが一気に増えるということです、当然家庭での使われ方も、主婦、子供、お年寄りも含めて触れるようになり、ターゲットも広がります。
 それから、ブロードバンドは、常時接続で相手が固定化されているのでつかまえやすい。つまり、エリア別の配信ができるようになってくるということです。

――ブロードバンドになると動画が使えるようになり、媒体力が増すと一般には言われていますが。
 動画は確かにインパクトはあります。ブロードバンドというと、すぐにみんな動画と思うのですが、動画コンテンツはお金がかなりかかる。また、文字の方がコミュニケーション時間は短く主旨を伝えることができる。動画のいいところをうまく使っていかないとちょっと間違える。ブロードバンド時代になったから100%動画でというのは違うと思います。
 ただ、ブロードバンド環境によってインターネットを活用する範囲が一挙に広がることは間違いないわけで、ここをうまくいまのマス媒体である新聞、テレビと組み合わせるといい。
 パーコストはまだ高いですが、テレビCMと同じ素材が使えるということで、メディアミックス効果を広げる一媒体が育ちつつあると思っています。


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