特集 2002.1/vol.4-No.10


企業は新聞広告で何を訴えたか

 昨年後半、国内は狂牛病問題と米国同時テロの影響で大きく揺れた。
 狂牛病問題では食肉や食材を扱う企業が大きなダメージを受け、テロ発生直後から海外旅行は激減した。双方の業界とも年末、年始の需要期を控え相次いで新聞広告を企画、10、11月の2か月間で合わせて16の企業・団体がアカウンタビリティー広告を出稿した。
 今回の状況は、企業としては何ら責任のないところで発生したいわば不可抗力ともいえるものだが、消費者の疑問に答え、消費を復活させるために新聞広告を活用した。

●読売新聞社広告局では、今回の事態にあたって、広告を掲載された企業・団体にアンケートをお願いした。アンケートは、@出稿の意図、A新聞広告以外に利用したメディア、B掲載後の反響、について書いていただいた。11月末までにお答えいただいた12の企業・団体のご担当の皆様にはこの場を借りてお礼を申し上げるとともに、その結果を紹介します。
*敬称は略させていただきました。
 
●米国食肉輸出連合会(USMEF) 新規事業・広報担当ディレクター 原田 晋 
米国食肉輸出連合会(USMEF)
1 出稿の意図
 9月10日BSE(狂牛病)の国内発生について突然の政府発表以降、まったく関係のないアメリカ産牛肉まで汚染の疑いを持たれ販売数量が激減した。また、その後の発表や報道ではあたかも国産は監視体制が十分で輸入物はその限りにあらずといった農水大臣の無責任な発言もあり、アメリカ産を扱う日本の業者は多大な被害をうけた。報道でも輸入牛肉に関する正しい客観的内容に基づいた報道がほとんどなく、アメリカの業界として自ら納得のできる情報を発信するという自己防衛に出ざるを得なかった。

2 新聞広告以外のメディア利用
・ホームページ
・業界誌

3 掲載後の反響
 広告掲載の日を境にして、マスコミからの問い合わせが殺到した。恐らく100件を超える問い合わせがあった。すべてが広告掲載内容の確認と追加情報の依頼であった。その後、輸入物に対する懐疑的な記事は激減し、もっぱら日本政府の本件に関する危機管理や日ごろの行政対応の甘さがマスコミにより浮き彫りとなった。


●MLA豪州食肉家畜生産者事業団 広報担当マネージャー 今安 明子
MLA豪州食肉家畜生産者事業団
1 出稿の意図
 オーストラリア産の牛は、狂牛病対策だけでなく、そのほかの安全対策について、長年にわたり政府レベルで対応してきたこと、それによって非常に高い安全性を保てていること、これからも安心してオージー・ビーフを食べてほしい、というメッセージを、社会的影響力の大きい「新聞」という媒体を通じて訴えたかった。

2 新聞広告以外のメディア利用
・テレビコマーシャル
・雑誌広告

3 掲載後の反響
 初回のモノクロ7段の広告がインパクトがあったようで、業界内から多くの反応があった。それにともないウェブのアクセス件数も大幅に増加した。
 なぜオージー・ビーフが安全なのかという具体的な理由を知っていただき、オージー・ビーフがいかに安全かということが伝わったように思える。


●全国農業協同組合連合会 総務部広報室室長 奥野 和雄 
全国農業協同組合連合会
1 出稿の意図
(1)牛肉の消費回復
(2)消費者の牛肉に対する不安解消
(3)JAグループと生産者の安全確保に対するさらなる取り組みへの理解
(4)食肉の生産・加工・検査・流通等についての正しい理解

2 新聞広告以外のメディア利用
・ホームページ
・12月以降はテレビも。
・一般消費者向け情報誌「エプロン」特集号

3 掲載後の反響
(1)全農のトレーサビリティー(注)に対する取り組みへのテレビ・新聞社・取引先からの問い合わせ
(2)全農のトレーサビリティーに対する取り組みについてテレビ・新聞で報道された
(3)取引先(量販店・生協)からの「だいじょうぶフェア」参加申し込み
(4)新規取引の開始
(注)英語のトレース(足跡を追う)とアビリティー(できること)を合わせた言葉で「追跡可能性」の意です。
JA全農では、狂牛病(BSE)発生を契機に、牛1頭ずつの生産から販売までの履歴が確認できる仕組みを構築しています。


●吉野家ディー・アンド・シー 営業促進部部長 羽田 邦夫
吉野家ディー・アンド・シー
1 出稿の意図
 狂牛病発症後、消費者への風評被害も含め、牛肉への不安感が増し、業績にも影響が発生した。安全対応への措置が取られ始める中で、当社が過去から築いてきた「おいしさ、健康、安心」をテーマに牛肉の安全性、品質へのこだわりを活字で伝えるために情報媒体としての新聞に出稿した。

2 新聞広告以外のメディア利用
・テレビコマーシャル(11月5日から11月25日まで全国で放映)
・全国の吉野家店舗でポスター掲出

3 掲載後の反響
 広告実施後、店舗の客数は回復基調となる。
 広告も調査結果では高い認知と関心を持っていただけた。


●日本マクドナルド マーケティング本部 楠山 福美 
日本マクドナルド
1 出稿の意図
 狂牛病が大きな社会問題となり、マクドナルドのユーザーの皆様からもビーフパティに対する問い合わせが多く寄せられました。当初は店内に「100%オーストラリアビーフ」を告知するポスターを掲出いたしましたが、社会に対し広く「安心の品質」をお伝えすべきと考え、新聞広告での訴求を計画いたしました。

2 新聞広告以外のメディア利用
 新聞のほかに、ラジオ・テレビ・雑誌・インターネット及び品質小冊子を使用しました。品質を保証する広告の必要性を考え、マクドナルドの品質に対する取り組みを表明する広告を今後も継続していく予定です。

3 掲載後の反響
 お客様からの問い合わせは減少しつつあります。


●万世 副社長 鹿野 梅吉
万世
1 出稿の意図
 BSE(狂牛病)発症の牛は牛乳を取る乳牛であり、はじめから食用として高品質に育てられた和牛とは種類も育て方も違うことを正しく理解して頂きたかったこと、そして当社創業以来の黒毛和牛の品質に対する取り組みを知って頂きたかったからです。
 そもそも牛は草食動物であり植物性のエサが最適で、霜降りが入るためにこれはかかせません。しかし、乳牛は乳の出を良くするために栄養価の高い肉骨粉のような動物性のエサを与えることがあるようです。今回の発症もこの辺が原因の一つと考えられます。
 乳牛の乳が出なくなると太らせて食用牛として出荷されるわけですが、生まれた時から食用牛として育てられる和牛とは本質的に違うのです。しかし消費者のほとんどは国産牛としてすべて一緒であり危険であると思われております。世界に通用する芸術品のような伝統ある味覚が、瞬く間にこのように理解されてしまったことは誠に残念でしかたありません。また、検査体制も世界一厳しい基準で行われており完全なチェックがなされる体制が整い安全であるにもかかわらずです。
 当社の牛肉は直営牧場で品質管理され、100%検査済みのものしか使用していないことももちろん知ってほしかったところであります。

2 新聞広告以外のメディア利用
・ホームページ

3 掲載後の反響
 11月23日から27日までのセール並びに広告に対するご質問のお電話は本社だけで40件ほどでしたが、店舗にも直接お問い合わせがありました。
 内容は店舗の所在地のお問い合わせが一番多く、特に都内店が多かったです。そのほかにも激励のお電話や営業に関してのご指摘など、ほとんどが当社に対するご声援の声であり誠にありがたく感謝したいと思っております。


●味の素 広告部広告企画グループ長 天野 敦夫 
味の素
1 出稿の意図
 狂牛病の影響で当社の一部商品に関して、不安を抱いているお客様が相当数いらっしゃることが判明したため、厚生労働省の指導に基づき自社で行った調査結果を踏まえ、当該商品に関して「なんら問題ない」という事実をいち早く伝え、不安を抱いているお客様に安心感を醸成することを意図した。

2 新聞広告以外のメディア利用
 テレビ、雑誌で一部商品に関して安全性の確認に関するコメントを通常の広告に挿入した。

3 掲載後の反響
 お客様からの商品の安全性に関する問い合わせが減少した。


●ネスレ日本 マーケティング本部食品事業部事業部長 土居 政広
ネスレ日本
1 出稿の意図
 当社製品に関して不必要に消費者の間に生じている不安を和らげるため。

2 新聞広告以外のメディア利用
・リーフレット等販売店店頭で使用する宣伝物

3 掲載後の反響
 消費者からの問い合わせ件数が減った。


●ハワイ観光局 日本支局支局長 椋本 清
ハワイ観光局ハワイ観光局
1 出稿の意図
 湾岸戦争時の「海外旅行自粛」勧告の影響を大きく受けたハワイ州としては、今回日本の人々に今こそ来てほしいという生の気持ちを、知事のメッセージというかたちで伝えるメディアとして新聞広告が最適であると判断しました。

2 新聞広告以外のメディア利用
・ポスター
・DMなど
 ※新聞広告が主軸

3 掲載後の反響
 一般の皆さんからも「これを見てハワイに来たが、来てよかった」という具体的な手ごたえがありました。と同時に旅行業界の各社から「知事メッセージ広告」を使いたいという要請がたくさん来ています。


●沖縄県・沖縄観光コンベンションビューロー 沖縄観光コンベンションビューロー
観光推進部誘客宣伝課課長 屋良 朝治
沖縄県・沖縄観光コンベンションビューロー沖縄県・沖縄観光コンベンションビューロー
1 出稿の意図
 沖縄の冬の観光の魅力をアピールすることで、いつもと変わらぬ「元気さ、安心感」を表現し、テロ後の不安感を少しでも和らげるため。全国紙には「観光」、ブロック紙には「修学旅行」をテーマとし、土日を2週間に分けることで露出ボリュームを高め、目につきやすいように意図した。

2 新聞広告以外のメディア利用
・雑誌(旅行系)
・テレビ(全国39局にてスポットCF)
・電照看板(札幌・東京・大阪・名古屋・福岡)

3 掲載後の反響
 「プレゼント&アンケート」を記載することで、掲載翌々日からはがきが届いている。


●シンガポール政府観光局 日本・韓国地区担当局長 小作 エルシー
シンガポール政府観光局
1 出稿の意図
 当局では広告は年間計画を立てて実行しており、その計画の中に読売新聞がありました。米国同時テロ事件発生直後、本局との間で広告をどうするかという議論がありましたが、シンガポールは事件の当事者ではありませんし、事件直後から入国者統計が細かく出され、テロの悪影響が出ているという事実もわかりました。また、イスラム教国に挟まれ、国民にもイスラム教徒のいるシンガポールが誤解されないためにも、活動は計画通り実行することとなりました。
 また、銀座とオーチャード・ロードが10月20日に姉妹提携したことを機会に、臨時の広告も10月後半に出しました。
 予算や事務処理の関係もありましたが、リカバリーのためにでき得る限り積極姿勢でいくことが、当局の姿勢となりました。

2 新聞広告以外のメディア利用
(計画通りに)
・雑誌
・ラジオ
・バス(車外)

3 掲載後の反響
 広告の掲載が11月からという計画だったため、同時テロ事件の影響を受け、クリエイティブを急きょ変更したり、メッセージ広告を急きょ出したりという状態にあり、海外旅行客も10月、11月と激減している真っただ中にいるため、具体的な反響はあまり聞こえてきません。
 他の観光局が、テロ以降多くの臨時の広告を出していることから、旅行業界からは「もっと広告を出すなりして一般客にアピールしてほしい」といったお願いの声はよく聞きます。


●グアム政府観光局 日本事務所日本代表 原 晴一
グアム政府観光局
1 出稿の意図
 9月11日以後、グアムは平和で、日本の皆様に安心してお越しになれますというメッセージを全国規模で伝えたかったため。

2 新聞広告以外のメディア利用
・ホームページ

3 掲載後の反響
 23件の問い合わせ



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