特集 2001.10/vol.4-No.7

ウェブがメディアになる日
Webのコミュニケーション力 岩城陸奥氏
 新しいメディアとして注目されているウェブだが、バナー広告の効果に対する疑問や媒体特性の違うウェブをこれまでの広告とどう連動させていけばいいのか課題は多い。広告主協会のWeb広告研究会は、広告主だけでなく広告会社やレップ、ポータルなども参加するインターネット広告の研究組織だが、広告主の視点に立った「サイト評価調査」や「ネット広告価値創造プロジェクト」を立ち上げ、その可能性や評価方法を探っている。代表幹事の岩城陸奥氏に聞いた。
 
転換期を迎えたネット広告

 「ネット広告価値創造プロジェクト」を立ち上げた背景には、最近のネット広告がいろいろな意味で見直しの時期に入ってきたことがある。特にバナー広告は、クリックスルーレートが低くなってきたこともあり、売り上げが落ちてきている。本当にバナー広告は価値のないものなのか、改めて考え直してみる必要がある。
 ネット広告の最近の不調の原因は三つほどあると思う。
 一つは、バナー広告の商品開発が不足していることだ。初期にはさまざまなサイズがあったバナー広告も、どのサイトでも同じような大きさ、場所に出てくるようになった。これは効率化の結果でもあるが、ほかの媒体の広告はみなさまざまな工夫をしている。工夫の余地が少ない電車の中づりでさえ、表現を変えたり、素材を透明にしてみたり、光らせてみたりといろいろな工夫をして魅力を増す努力をしている。バナー広告はそうした努力をまだあまりやっていない。例えば、バナー広告とメール広告との組み合わせといった試みもあまりなされていない。ネット広告自体の魅力が足りないというのがまずある。
 二つ目には、広告主の認識不足があると思う。調査結果をみると、バナーをクリックした後のユーザーの満足度が非常に低いことに気づかされる。これは、バナーがおもしろそうだからクリックしたけれども、リンク先の広告主のサイトがおもしろくなかったということだ。バナー広告の効果が低下した理由には広告主側の問題もあるのではないだろうか。要するに、広告主自身がウェブをどう広告に組み入れていくかという体系がまだ出来上がっていないということだ。この対策として、Web広告研究会では、広告主に対する啓発活動として各社の宣伝担当責任者を対象として、この10月にセミナーを開催することになっている。
 三つ目は、メディアミックス手法が未開発だということだ。これは、どの企業でも悩んでいる点だと思う。新聞、テレビ、雑誌、ラジオまではいくが、次にインターネットになかなかいかない。媒体特性が違うこともあるが、実際はコンピューターが苦手=ネットが苦手という意識からその辺が後回しになってしまっている場合が多い。
 また、全媒体共通の評価軸がないことも原因になっている。そこで、プロジェクトではメディアミックスのためのプログラムづくりもすすめている。
 各媒体のコミュニケーション能力を質と量の両面からとらえ、目的に合わせたメディアミックスが導き出せるようなプログラムの開発をめざしている。

サイト評価の物差しをつくる

 ネット広告は、従来のマス広告に比べターゲティングしやすく、コスト効率がいいというのが以前からの持論だが、これはWeb広告研究会のこれまでの活動を通して、最近は確信に変わってきている。ただ、新聞は百数十年、テレビも50年以上の歴史がある。インターネットは、商用利用が始まってホームページの公開ブームが起こったのが95年。生まれてわずか6年の未熟な段階にある。メディアとして比較すること自体がまだ無理な面がある。
 それでも、最近、他の媒体と比較され始めたというのは、インターネットがモラトリアムの期間を終えたということだと思っている。それはそれでいいことだが、問題はその比較の仕方にまだ客観性がないことだ。そういう意味で、サイトもきちんとした評価ができるようにしようというのが「サイト評価調査」のねらいだ。
 サイト評価というといいサイト、悪いサイトのようなランキング付けが目的のように受け取られるが、今回の調査では、サイト評価の軸づくり、物差しづくりを大きなねらいにしている。広告主だけでなく、広告会社、ポータルなどの集まっているWeb広告研究会の会員社が共有できるようなサイト評価の基準をつくることを目的にしている。先ほど、バナー広告をクリックした後の広告主のサイトがおもしろくないということを言ったが、インターネットの場合は当然のことながら、広告主のホームページも広告の一部になっているからだ。
 もちろん、この結果は先ほどのメディアミックスのためのプログラムにも反映される。

技術よりコミュニケーション

 ネット通販などインターネットをマーケティングに使っている部分がなかなかうまくいかない。これは、インターネットは確かにターゲティングメディアだが、そこで売る商品やサービスがターゲティングされてないことが一つの原因だと思う。ネット通販では、まだ従来からある一般的な商品がそのまま売られている。コミュニケーションからマーケティング、商品企画まで、全部が従来のマスセールスのままの体制になっている。企業の体制が、ターゲティングした相手に、ターゲティングした商品やサービスを提供できる形にまだなってないということだ。ネット専用の商品やサービスは、おそらくエンターテインメント系、ゲーム系からスタートする。そういうところから、だんだんと一般の商品につながっていくような感じがしている。
 もう一つの、さらに重要な原因は、コミュニケーションツールとして企業がインターネットを認識していないことだ。ネットを本格的な意味でのコミュニケーションツールとして使っている広告主はまだほとんどいない。今のネットには、マーケティングとテクノロジーはあるが、コミュニケーションがない。
 例えば、ネットにはまだクラスの概念がないということにもそれは表れている。女性誌はさまざまなクラスに分かれていて、デザイン、内容、広告商品まで全部違う。しかし、ネットの場合は、例えばYahooでさえデザインも何も一つだ。そういう面でネットは未熟と言っているわけで、まだまだ成長しなければいけない部分がある。
 つまり、ネットには相手が人間だという意識がまだない。コンピューターのネットワークは意識されていても、コンピューターの前には人間がいることを分かっている人は少ない。コミュニケーションをするのは生身の人間なのだということから、もう一度ウェブを考え直す時期に来ていると思う。ネット通販の不振の原因は、マーケティングとテクノロジーしかないところで物を売ろうとしているからで、そこにはコミュニケーションが欠けている。
 ある人が女性向けのサイトをつくったので見てくれというのでトップページを開いたら、いきなりブランド物のディスカウントショップが並んでいた。何かを買おうと人がお店に行ったとき、店内に入っていきなり「これください」と言うだろうか。コミュニケーションが欠けているというのは、そういうことだ。やはり、店員と何か話すことから始まる。そういうコミュニケーションがあって初めて、モノが売れていくのだと思う。
 だから、楽天市場はそういうところに気がついて、店の人とユーザーとがコミュニケーションするような形をつくっている。また、楽天市場の出店者を教育する大学もつくっている。
 今までの宣伝は告知中心で、企業から何かお知らせするようなスタンスだった。今は、お知らせしたものに対して何か意見が返ってくることまで含めてコミュニケーションと呼ぶべきだと思っている。そういう意味で、ネットは理想的なコミュニケーションツールだといえる。
 ただ、ネットを使ったコミュニケーションは手法が非常に複雑で、全体としては理解されにくい面を持っている。部分部分では理解されているが、全体としてみると何かわからないものになってしまうようなところがある。それを理解するには、やはり体験してみるしかない。新聞を読んだことがない人はいないと思うが、新聞を知らない人に言葉で新聞を説明することは難しい。メディアは体験してみるのが一番早いが、中でもインターネットはその典型だ。メールなり何なりでコミュニケーションして初めてよくわかるものだと思う。
 技術の進歩が速いことも、インターネットを分かりづらくしている原因だ。インターネットのブロードバンド化が話題になっているが、広告主協会もブロードバンド委員会をつくって研究を進めている。ブロードバンド化でインターネットでもテレビCM並みの画面が見られると言われているが、私はブロードバンドや回線をADSL化するメリットは、常時接続にあると思う。
 いつでも好きなときにユーザーとコミュニケーションを取れるのは広告主にとってかなり大きいプラスの変化だ。
 今までは新聞でいつ掲載する、テレビでいつオンエアするということをあらかじめ決める必要があった。ブロードバンドで常時接続になっていくと、つくってすぐ流せる。そういう即時性が生まれる。打てば響くコミュニケーションができるようになると期待している。

現実と広告主の意識のずれ

 広告媒体としてみた場合、今までのマスメディアとインターネットの大きな違いは、その媒体を一番知っているのはだれなのかという点だと思う。従来のメディアではテレビはテレビ局、ラジオはラジオ局、新聞は新聞社の人が一番よく知っているわけだが、ホームページに関しては広告主が一番よく知っている。
 広告会社も企業のホームページを含めたメディアミックスの提案を要求されることがあるが、やりにくいだろうと思う。広告主の人が「インターネットを組み入れたおもしろいキャンペーン企画を提案して欲しい」といっても、なかなかよいアイデアが出てこないのは、そうした理由からだと思う。ホームページの見られ方や評判、ページごとのアクセス数にしても、広告会社の人よりその企業の人の方がよく知っている。そういう意味で、インターネットはメディアミックスを提案しにくいメディアではないかと思う。
 インターネット広告の市場規模は、広告全体のまだ1%に満たない。ほとんど統計誤差の範囲といってもいい。屋外広告や折り込み広告も市場規模は3〜4000億円規模で、それに比べるとインターネット広告の580億円はあまりに少な過ぎる。今のところは笑い話で済んでいるが、やはりある程度のビジネスにならないと広告会社も真剣にならないし、広告主もなんとなく中途半端のままで、インターネットの本当のよさが出てこないと思う。
 その一方で、現実にはユーザーの数は今年の通信白書で4600万人を超えて増え続け、メールや掲示板で口コミで広がることが次々に起きている。それをマスコミが伝えるとまた広がるというような相乗関係もわかってきている。現実の方はどんどん進んでいるわけで、このままではそういう現実と広告主の意識の間にずれが生じてくることに怖さを感じる。

メディアの効果は経験則

 新聞は、取材して編集して印刷して売るまでの仕組みを全部新聞社がつくっている。それが新聞という媒体だが、インターネットはだれのものというのがない。確かに、ポータルは一つのメディアかもしれないが、そこからリンクされた企業のホームページは、そのポータルの所有物ではない。そういう意味では、インターネットには媒体の所有者がいないということだ。これも今までのメディアと違う点だ。
 今までのメディアの世界では、他社媒体に出稿するのが広告だと言えたが、それではバナーしか広告として扱えないことになってしまう。
 今のインターネット広告費は実際バナー広告の費用だけを指している。しかし、インターネットの場合には、バナーをクリックした先のホームページも広告の一部だというふうに考えていくと、話は違ってくる。そういう意味では、広告の定義そのものが少し変わるべきだと思う。本当はホームページの制作費も全部含めてインターネット広告費としなければいけないのかもしれない。
 一歩譲歩して、媒体にお金を払うのが広告で、ホームページは自分のところで制作して、自分のところで持っているから広告ではないという定義を受け入れたとしても、インターネットのコミュニケーション機能をどう考えるかという問題は残る。そのあたりのコンセンサスを得ていかないといけない時期に来ていると思う。
 実は、Web広告研究会の中でホームページは一種の広告だという意識が出てきたことが、今回のサイト評価調査にもつながっている。どのホームページがいい、悪いという評価はつくる側としては必要だが、それよりも、調査ではそのホームページがどのくらいコミュニケーション効果があるのかという点を重視しているのはそのためだ。サイト評価調査は八月に調査を終えている。結果は、11月か12月ぐらいに発表する予定だ。
 テレビの視聴率も首都圏で600人ほどのモニター調査の推定値だし、私自身はメディアの効果ははっきりとは測定できないものではないかと思っている。結局、一種の経験則で、繰り返し利用していく中で、ある程度のところに収束していくものだと思う。
 ただ、インターネットの場合は、その経験則をつくるにも、最初に言ったように生まれて6年という期間ではまだ足りない。しかも、インターネットは状況がどんどん変わっている。今度はブロードバンドだとか、次はCRM(※)だとか、毎年新しい技術が登場し、その度に効果の測り方を変えていかなければいけない。
 そういう意味でもネット広告の効果測定は難しい問題だが、要求されている以上はやらなければいけない問題でもあると思っている。

※CRM:Customer Relationship Managementの略。


 YOMIURI ON-LINE(YOL)は、本格的なブロードバンド時代の到来と、それに伴う広告手法の多様化に対応するため、10月1日から動画広告を中心とした新商品を導入しました。
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※ 新しい広告商品についてのお問い合わせは、読売新聞社企画開発部(03-3216-8796)まで。



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