特集 2001.3/vol.3-No.12

デジタル時代の法律
著作権をめぐる問題

 ナプスターの連邦高裁の判決をはじめ、著作権をめぐるさまざまな問題が起きている。
 同時に、著作権保護のための技術開発もすすんでいる。最近の新聞記事から、こうした事例をピックアップしてみた。
 


 「米ナプスターが提供しているインターネット上での無料交換サービスを、米サンフランシスコ連邦高等裁判所が12日、一審に続き著作権侵害と認定したことで、音楽の無料交換というビジネスモデルは大きな転換期を迎えた。ナプスターだけでなく、類似のサービスを行っているネット企業は、有料化など新たなビジネスへの切り替えを迫られている」(2月14日読売新聞朝刊に載ったナプスター控訴棄却の解説記事)
 全米レコード協会(RIAA)は、99年12月ナプスターのビジネスを著作権侵害だとして提訴。サンフランシスコ連邦地裁は、2000年7月著作権侵害を認めサービス停止を命令していたが、ナプスター側が控訴していた。解説では、今回の連邦高裁での判決を、「インターネット時代の著作権のあり方について、著作権保護という大きな流れを決定づけた点で意義は大きい」としている。また、無料を売りものに急成長したこうしたサービスは、事実上、非合法というレッテルを張られることになり、正当なビジネスとして成り立たなくなると指摘する。
 アメリカもネット上での著作権に対する意識は最近まで野放し状態だったが、著作権保護に関する裁判が注目を集めるに従い変わってきている。
 たとえば、音楽や映画などをネットを通じて無料で入手できるサービスを手掛けていた米スカウアーが、映画、音楽業界から著作権侵害で訴えられていたため、投資家が資金を出し渋り、昨年10月には破たんに追い込まれている。
 また、ナプスター自身も、上級審への異議申し立ての方針を明らかにする一方で、昨年10月独音楽大手ベルテルスマンと音楽の有料配信で提携するなど、有料化を見越した新たなビジネスモデルをすでに模索中だ。しかし、他の大手レコード会社はナプスターとの提携には慎重な態度を崩していない。
 勝訴したとは言え、米レコード業界も、問題がすべて解決したわけではない。ナプスターを利用して交換された曲は、判決前の1週間だけで2億5,000万曲にものぼった。これは、サービス停止を恐れて利用者が殺到したためで、こうした無料サイトの人気がいかに高いかがわかる。
 無料のニーズが高い限り、取り締まっても違法を承知で次々と新たな無料サイトが開設されるイタチごっこが続くことも予想される。
 しかし、少なくとも今回の判決で、ネット企業と音楽業界は、著作権を守りながら利用者が納得できるビジネスモデルを模索する新たな段階に入った。



 大手ゲームソフトメーカーのコナミ(東京都港区)が、人気ソフト「ときめきメモリアル」のストーリーを改変するメモリーカードを輸入販売したスペックコンピュータ(福岡市)を相手に著作権侵害に当たるとして約1,000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第三小法廷(奥田昌道裁判長)は13日、コナミ側の主張を認めてスペックコンピュータに約114万円の賠償を命じた大阪高裁判決を支持し、同社の上告を棄却する判決を言い渡した(2月13日読売新聞夕刊) 。
 「ときめきメモリアル」は、プレーヤーが架空の高校の男子生徒になり、1人の女子生徒を選び、高校生活3年間の行動を通じてさまざまな能力を身に着け、卒業式にこの女子生徒から愛の告白を受けることを目指す恋愛シミュレーションゲーム。スペックコンピュータが販売していたメモリーカードには「ときめきメモリアル」で使用される「パラメータ」が書き込まれていて、プレーヤーがこのゲームを始める時に「パラメータ」をゲーム機に読み込んで使用する。
 これによって、 普通にこのソフトを実行したのでは決して身に着けることができないはずの能力が得られたり、高校入学当初は登場しないはずの女子生徒が現れたり、プレーヤーは必ず愛の告白を受けられるようになってしまうという。
 判決では「本件メモリーカードの使用は、本件ゲームソフトを改変し、著作者がもっている同一性保持権(注3)を侵害するものと解するのが相当である。本件ゲームソフトにおけるパラメータは、主人公の人物像を表現するものであり、その変化に応じてストーリーが展開されるものであるが、本件メモリーカードの使用によって、本件ゲームソフトにおいて設定されたパラメータによって表現される主人公の人物像が改変されるとともに、その結果、本件ゲームソフトのストーリーが本来予定された範囲を超えて展開され、ストーリーの改変をもたらすことになるからである」として、「ゲームソフトの改変だけを目的とするメモリーカードを輸入、販売した同社は、ゲームソフトの同一性保持権の侵害を引き起こしたものであると判断、不法行為に基づく損害賠償責任を負う」と結論付けている。

(注3)同一性保持権:著作者の意に反して著作物の題名や内容の変更、切除、その他改変を受けない権利。一九八六年に改正された著作権法で著作者人格権が付与された。著作者人格権は著作者の人格的価値を保護するもので、「同一性保持権」のほかに、未発表の著作物を発表する「公表権」、著作物の原作品に著作者名を表示するかまたはしない権利としての「氏名表示権」がある。



 この5月から次世代携帯電話が登場し、携帯のブロードバンド化が始まるといわれている。映像や音楽、ゲームなどの同時再生やダウンロードもスピーディーにできると期待されている。そこで問題になるのが、こうした映像や音楽の著作権保護の問題だ。
 「NECが著作権保護を強化した携帯向けの音楽・映像配信システムを発表した」と報じているのは、2月2日の日経新聞朝刊。レコード会社などの配信元が音楽を聞く回数やゲームをする時間を制限することも可能で、配信された音楽や映像をメモリーに落とし、別の携帯電話で聞くことを防止する機能もついたシステムだ。NECではこのシステムを年内にも実用化、コンテンツ各社や通信事業者に採用を呼び掛けるという。
 これまでの携帯電話は、メモリーカードもなく、メールにも添付ファイル機能がなかったため、別の携帯電話にダウンロードした音楽や映像を渡すことは不可能だった。また、通信速度そのものが遅かったため、音楽や映像を見るためのツールとしては能力不足だった。それが、通信スピードが大幅に上がることで可能になる。また、最近は携帯電話にもメモリーカードを装着した新機種が登場しはじめている。音楽を記録したメモリーカードを渡せば、別の携帯電話でも聞くことができるようになる。著作権保護は携帯電話にとっても、大きな課題になってきた。
 新システムの仕組みは、音楽などのコンテンツの課金や再生回数などの情報を配信元から暗号化して専用のサーバー経由で、携帯電話に送るもの。利用者はこの暗号を解くカギ(パスワード)を購入して、音楽や映像を楽しむ。携帯電話のメモリーカードにコンテンツを収録しても音楽や映像は暗号化されたままなので、パスワードがわからない限り複製したり第三者へ譲渡したりすることはできない。
 これまでもパソコンなどで著作権を保護するシステムはあった。ただ、やりとりする情報の量が大きいため、機能で劣る携帯電話に転用することはできなかった。NECは課金や再生回数など重要な情報はより複雑な暗号を使い、音楽や映像などのコンテンツには単純な暗号を使うことで、情報処理量を従来の百分の一に減らし、携帯電話でも十分に処理できるようにした。
 音楽・映像配信は、NTTドコモやKDDIグループがPHSを使ったサービスをすでに実施している。現在のPHSには複製防止機能はあるが、第三者への譲渡を防いだり、再生回数や時間を制限する機能はついていなかった。
 PHSの現在のサービスでは1曲に付き250円から350円を課金しているが、新システムでは再生回数を制限できるため、1回当たりの再生料金を低く設定できる。



 ケーブルテレビの回線や電話の一般回線を使った高速通信サービスADSLの登場で、インターネットの接続スピードは大幅に向上しつつある。映画をオンラインでみることも可能になってきた。ここでも問題になるのが、作品の著作権保護だ。
 日本テレビ放送網とNTT東日本などで構成するビーバット企画は13日、ドラマや映画などの作品の著作権を保護した上で一般向けにインターネット上で販売するシステムを完成させたと発表している(2月14日読売新聞朝刊)。今回発表した「コンテンツ保護・管理システム」は、高度な電子透かしと暗号カギを用い、コンテンツ保護と配信管理を可能にした点を特徴としている。電子透かしの強度を変更することで、動画へデータが変更・改ざんされた場合も、透かしから不正使用を判別できるという。
 発表では、5月からテレビ局など85社が参加して無料サービスを試行し、6月からは有料サービスにのせたい考えだという。利用料金は内容によって異なるが、数百円から数千円を予定している。



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