特集 2001.2/vol.3-No.11

メディアの地殻変動

 デジタルメディアが次々と登場する中で、これまでのメディアの効率や効果を見直すさまざまな議論が起こっている。現在の状況を象徴しているのが、今春からサービスが開始される次世代携帯電話であり、昨年12月に始まったBSデジタル放送だろう。広告メディアとしての表現力を持ち始めた携帯電話とは、どんなメディアなのか。BSデジタル放送は、広告主にどのようなインパクトを与えているのか。効果・効率論だけではなく、広告にとってメディアとは何かという新たな視点からの議論も待たれている。

広告メディアとしての携帯電話
 世界に先駆けて日本で始まる。NTTドコモが「W―CDMA」規格で5月、KDDIが「cdma2000」規格でこの秋にサービスを開始する。注目は動画や音楽の取り込みがより高速になるブロードバンド化で、本格的な広告媒体としての活用が期待されている。ネット接続された携帯の現状と今後について、KDDIの高橋誠氏と同社の「EZweb」向けネット広告会社エイワンアドネットの園田愛一郎氏に聞いた。
 
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W-CDMA/cdma2000
 次世代携帯電話の規格には、W-CDMA (ダブリュ・シーディーエムエー)とcdma2000(シーディーエムエーニセン)の2つがある。ITU(国際電気通信連合)が標準化を進めている次世代通信方式IMT-2000の日欧標準案として提案されたのがW-CDMAで、同北米案がKDDIの採用したcdma2000。ともに、高速移動時144kbps、歩行時384kbps、静止時2Mbpsのデータ伝送能力があり、動画・音声によるリアルタイムの通信が可能と言われている。

――今、携帯はどのくらいの頻度で新製品が出ているのですか。
 
高橋 1メーカー、だいたい6か月に1回くらいですね。

――そんなものですか。もっとサイクルが短い気がしていました。
 
高橋 いろいろなメーカーから出てくるからです。1銘柄が半年に1回で10銘柄くらいありますから、年間20機種ぐらいの新製品が世の中に出ていることになります。今、2年前の携帯を持ち出すと周りの人に驚かれたりしますよね。
 園田 1か月に2機種近くは新しい機能を持ったモデルが出てると思うと、確かに少し異常な世界かもしれませんね。それだけ、市場が急成長しているという証拠だと思います。

モバイルインターネットの現状

――ネットに接続された携帯の現状をお聞きしたいのですが。
 高橋 99年の2月22日から始まったドコモのiモードに続いて、われわれKDDIのEZwebは同じく4月14日にサービスを開始しています。それまでもメールなど簡単な通信機能を備えたものはありましたが、携帯からインターネットにアクセスする“モバイルインターネット”の登場で、携帯の歴史が大きく変わりました。携帯にブラウザーとeメール機能が載った一昨年の春が、非常に大きなターニングポイントになったといえます。また、そのコンテンツ制作にかかわる企業などが活躍し始めた。
 加入者数も、iモードが1,700万人、EZwebは昨年末のツーカーも含めた数字で500万人を超えています。
 携帯のインターネットとパソコンのインターネットとの違いは、今のところ前者は携帯電話事業者が加入者全員のプロバイダーを兼ねていることです。パソコンの場合はニフティやDIONなどさまざまなプロバイダーがありますが、携帯は電話事業者が兼ねている。プロバイダーとしてみるとauの500万人という加入者数は日本で2番目くらいの大きさになるわけです。今は、圧倒的にモバイルをベースにしたプロバイダーが上位を占めている状況です。
 今のところは、文字、あるいは簡単な画像や着信メロディーなどだけですが、今年の春以降はブロードバンド化され、送れる情報量が大きくなります。

ブロードバンド化される携帯

――送れる情報量が大きくなると何が変わるのですか。
 高橋 今までの携帯のデータ通信速度は大して速くなかった。EZwebで14.4キロビット/秒、iモードで9.6キロビット/秒という速度でインターネットに接続していた。当初の携帯の画面は小さかったから、情報量としてはそれで十分でした。
 ところが、画面サイズが大きくなり、白黒画面がカラーになりと、データ量がどんどん増えてきた。そこで、太い“土管”にする必要が出てきたわけです。
 今年の五月にドコモが「W―CDMA」、今年の秋にはわれわれauも「cdma2000」を出す予定です。そうなると、今まで静止画像程度しか送れなかったものがちゃんとした動画も送れるようになる。
 携帯は、一昨年にインターネットに接続され、昨年からカラー画面に、あるいは音楽も和音が増えていった。今後も、パソコンと同等の表現能力を持つものに進化を続けていきます。そういう意味からも、広告媒体としての価値はより上がってくると言われています。

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ブロードバンド
 広帯域、高速な通信回線によって実現される次世代のコンピューターネットワークと、その上で提供される大容量のデータを活用した新たなサービスの総称。光ファイバーやCATVなどの有線通信技術やIMT-2000といった無線通信技術を用いて実現される。一般には500kbps以上の通信回線がブロードバンドと言われる。その逆がナローバンド。現在のインターネットは、電話回線やISDN回線による数十kbpsの回線が主体になっている。

――もう一つ、メール機能がありますね。
 高橋 携帯は今までは文字通り電話だったのですが、インターネットを手に入れたことによって情報のポータル、窓口になれた。広告サイドから見れば、これは一番本人に届きやすい手段ということです。
 パソコンは、電源を入れて、自分から能動的にインターネットにアクセスしていって、初めてバナー広告が目に触れるわけで、タイムリーではありません。携帯にはプッシュメール機能があり、知らせたい側が知らせたいときにユーザーに情報を伝えられるリアルタイム性がある。ブロードバンド化で、それがより表現能力を持つわけで、広告の世界でも非常に重要視されてくると思っています。

――ブロードバンドになると、CMなども簡単に送れるようになると言われていますが。
 高橋 すべての端末がブロードバンドを利用できるようにはならないと思います。今年始まる段階では、せいぜい64から128キロビット/秒ではないでしょうか。技術的には2メガビット/秒まで高速化できますが、携帯に割り当てられた有限の周波数帯をできるだけたくさんの人に使ってもらおうと思うと、実際にはできない。四六時中ブロードバンドだと、その周りの人はだれも電話ができなくなります。

――それぐらいでも、動画は使えるわけですか。
 高橋 動画をリアルタイムで再生するストリーミングという技術がありますが、完全なストリーミングまで持っていくには時間がかかると思っています。今年は、ダウンロードしながらストリーミングする方法が中心になると思います。
 園田 動画はできても5秒、10秒のスポット的なものです。今までパラパラマンガだったものが、普通のアニメーションとして見られる程度にはスピードのステージが上がるということです。
 高橋 それに、現在の携帯の通信料はパケットの量に比例しますから、料金体系が今のままだとすごい料金になってしまいます。そのあたりのバランスを見ながら、どこまで動画を出していくかを決めるのが今年でしょうね。日本だけではなく、世界的にもパケットの料金はまだ高い設定になっています。

携帯で先行する日本

――ネット接続された携帯の話は欧米からはあまり聞こえてこないのですが。
 高橋 普及は日本が一番早いですね。韓国も一緒くらいのスピードです。ヨーロッパ、アメリカはパケット方式の通信の導入が遅れている。ヨーロッパは今年の春ごろからGPRS方式〔注1〕で本格化すると思いますが、アメリカはまだまだですね。欧米の場合には、家庭や企業で使っている通信料金が格段に安いですから、一般家庭にインターネットが入る速度が日本より非常に速かった。日本の場合は、通信料がまだまだ高いなどの問題があって、インターネットをやるにも非常に通信料金が高い。逆に、そういう状況が、日本で携帯が普及した理由になっていると思います。
 欧米の場合はパソコンから携帯のインターネットにベクトルが動いていますし、日本はどっちかというと携帯でまず入って、そこからパソコンへという動きになっている。ベクトルが逆になっているような気がしますね。
 園田 最近の若い人もそうです。中学生、高校生はパソコンを使う前にまず携帯ですから。

〔注1〕GPRS方式(General Packet Radio Service)は今年欧州で普及が見込まれている携帯電話の通信方式で、これまでのGSM方式(Global System for Mobile communication)を高速化した技術から第2.5世代と呼ばれる。ちなみに、第3世代はUMTS方式(Universal Mobile Telecommunication System)。

広告メディアとしての可能性

KDDI広告紙面
――携帯の広告メディアとしての可能性をどう見ていますか。
 園田 まず数がすごい。逆説的かもしれないですが、携帯はマスメディアでもあるのです。iモードが1,700万人、EZwebが500万人。新聞に匹敵するか、それ以上のメディアになっている。しかも、あっと言う間にマスメディアになってしまった。
 もちろん、単なるマスメディアではありません。1人に1台のメディアです。しかも、アドレスなどを入れてカスタマイズしているので完全に自分のものになっている。全体としてみればマスであって、しかも個人のメディアなのです。
 また、双方向のメディアでもある。もともと電話ですから、他のメディアで広告を見たときに電話やメールですぐにリアクションできる。モバイルインターネット上のwebにもアクセスできる。BSデジタル放送のデータ放送の要素も持っています。
 もう一つは、時間に限定されずいつでもアクセスできるメディアだということです。パソコンと違って、常に持っているメディアです。若い人は時間に関係なくメールをやり取りしているので、寝る時もまくら元に置いている。学生は、固定電話も目覚まし時計も持たずに携帯1台で済ませる。携帯で決済や個人の身分証明ができるようになれば、それなしでは過ごせないようになります。携帯は、「これ1台でいい」というメディアにこの1年でなってくると思います。
 さらに、位置情報です。その携帯を持っている人がどこにいるかが分かるメディアだということです。プライバシーの問題はありますが、マーケティングツールとして考えると今までにないさまざまなことができるメディアです。パソコンのインターネットとも全然違うメディアになり得る。

――携帯というと若者のメディアというイメージがある。
 園田 今のところは若い人が中心ですが、ビジネスにも非常に有効なツールです。パソコンと同じような環境を外で持たせられるという意味ではビジネスにも使える。また、パソコンに抵抗感のある主婦も、インターネットの世界に気軽に入っていけます。

ほかのメディアと組み合わせて

――携帯は、メディアミックスのやりやすいメディアでもある?
 高橋 テレビ朝日の「タイムショック」という番組で、現在その実験をやっているところです。ユーザーがテレビを見ながらクイズに参加できる仕組みです。ユーザーを公募して、番組と同じ時間に放送の給付信号と合わせてクイズ画面が変わり、リアルタイムで答えられるものです。
 放送と通信の融合は以前から言われていますが、それが商用化されるのは今年からではないかと思っています。

――携帯単独より他のメディアとの連動の方が、より効果が上がる。
 高橋 確かに、携帯は双方向メディアですが、下りをブロードバンドで落としても画面の大きさなどの制約が出てくる。ユーザーの目や耳で感じさせるためには、やはり、テレビで見せて、そのレスポンスを携帯で返してやるという方が広がると思います。新聞、交通広告との連動も考えられます。
 BSデジタル放送でも、双方向にするためにはセットトップボックスを電話につながないといけない。その点、携帯は手軽です。そういう融合スタイルが出てくると思いますね。

メディアレップの役割

――最近、インターネット広告会社が数多く生まれています。
 園田 エイワンアドネットは、KDDI、博報堂、アサツーディ・ケイなどの出資で昨年12月に設立された会社で、一般的にはメディアレップと呼ばれる形態です。KDDIの開発したメディア・EZwebを使って、今までにないマーケティングを展開するのが役割です。
 iモードではすでに広告が出ていますが、EZwebにはこれまで広告はありませんでした。ユーザーから見ると、サイトには無料サイトと有料サイトの二つがあるわけですが、有料サイトは今は通信事業者が月額いくらという固定料金で通信料に上乗せして回収の代行をしている。サイトのコンテンツを制作する企業をコンテンツプロバイダーといいますが、ユーザーからの利用料金だけではなく、広告というもう一つの収入源をコンテンツプロバイダーに提供させてもらうという考えからです。それによって、新しいコンテンツ開発が進み、EZweb全体の活性化の一助となるということもエイワンアドネットの目的の一つです。

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プロバイダー
 インターネットにサービスを提供する事業者をプロバイダーと呼ぶ。一般的には、家庭などからインターネットにアクセスするために契約するインターネット・サービス・プロバイダーのこと。ほかに、ホームページの制作などコンテンツの制作にかかわるコンテンツプロバイダー、複数のユーザーに対してデータセンターからインターネット経由でアプリケーションサービスを提供するアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)などがある。

――インターネット広告会社とこれまでの広告会社の違いは何ですか。
 園田 従来の広告会社は媒体の場所取り、時間取りが重要な業務になっていたと思うのですが、インターネット広告会社、特にモバイルインターネット広告会社は、携帯の技術そのものを知らないとハンドリングできない点です。
 広告会社だけではなくて通信事業者が出資して広告会社をつくった理由はそこにあります。技術が進むスピードも速いし、それをいかに先取りして応用していくかは、やはり通信事業者の技術の話が分かる人間がその会社の中にいないとできない。

――配信サービスに特化している広告会社もありますが。
 
園田 数社が携帯への配信サービスを行っています。ただ、本当に携帯の技術が進んだときに、進化したマーケティングモデルを提供できるかですね。われわれは配信もやるし、新しい技術も分かる。

究極の暇つぶしメディア

――具体的には、どのような展開を考えていますか?
 園田 まずは、この2月からバナー広告などの基本的なところからスタートします。それと同時にサイト型も立ち上げます。それからやや遅れますが、メール型広告。データベースを使ったマーケティング展開は、さらにそのあとになると思います。
 サイト型というのは、いくつかのコンテンツを集めたサイトです。例えば、「得する情報」というおすすめサイトがあって、そこを開くと異業種で数社の懸賞やセールなど必ず読んだ人が得したり、興味を引く情報が書いてある。そういう企業の広告ばかりを集めたサイトです。広告臭があまりないようなユーザーが読んでも暇つぶしの情報として面白いサイトです。

――暇つぶしメディアと言えば、これまではテレビでした。
 園田 モバイルインターネットは、究極の暇つぶしメディアという面を持っています。もともと空いた時間に読んだり、見たりする性格が強い。広告もコンテンツの一つという形を取れば抵抗はないと考えています。
 メール型は、送信に事前の承諾が必要なのでもう少しあとでと考えています。

――インターネットはマーケティングを変えるといわれてきましたが、携帯のインパクトはさらに大きい気がします。
 園田 私自身としては、先ほど言ったモバイルインターネットのメディアとしての特性を生かし、新たなマーケティングのモデルをつくっていきたいと思っています。
 特に注目しているのは、携帯を持っている人の場所がわかる位置情報や時間にかかわらずターゲッティングできる点です。難しいのはプライバシーの問題ですが、そのへんをうまくクリアできれば、今までにないマーケティングの世界を築いていきたいという考えはあります。マスであり、究極の個の媒体であるモバイルインターネットは、究極のワン・トゥ・ワン・マーケティングのためのツールです。今あるメディアの中で、それができるのは携帯だと思います。
 例えば、山田さんが渋谷の109の前を2時50分に歩いていたとしますね。彼のこれまでのモバイル歴と渋谷109の店のバーゲン情報を結び付ければ、3時からバーゲンやりますという情報を山田さんの携帯に送れる。ものすごく的確なマーケティングができるようになります。

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位置情報検索サービス
 現在携帯電話で使われている位置情報サービスは、携帯電話端末の位置データを基地局経由で通信センターのサーバーに送信、サーバーから端末向けに現在位置の周辺地図などを配信する仕組みになっている。近い将来は、カーナビゲーションなどで使われているGPS(全地球測位システム)がこのサービスに使われ、より精度が上がる。GPSは上空2万kmを飛ぶ24個の人工衛星から電波を受信し、地上の受信機の位置を特定するシステムのこと。

プライバシー保護の問題

――今の話に関連して聞きたいのですが、携帯の場合、アクセスしている人がだれかまでわかるわけですよね。
 園田 通信事業者は自分の所の加入者はある程度の属性も分かっていますが、通信の秘密の保護義務がありますから、開示できません。広告に使うときには、事前に承諾を得て、その目的のためだけにデータベースをつくっておいて、メールを配信していく。マーケティングに活用しようとすると、何らかの形で同意された大きな会員組織を作っておかなければいけない。通信事業者が携帯のポータルを独占していると言っても、それをそのまま使えるわけではない。そこが難しいところです。
 高橋 自分の今いる場所が地図で表示される位置情報サービスも、そのあたりを非常に考慮しています。自分の位置情報が広告主サイドに伝わってしまうのはユーザーの個人情報を公開してしまうことになる。
 だから、位置情報を送る前にも、「あなたの携帯の位置情報を送っていいですか」と必ず聞く。これで本人の同意を得るわけです。「はい」とユーザーが押してから位置情報を送る仕組みになっています。
 この仕組みを活用している一つがトヨタの@NAVI.COMというサイトです。現在は基地局を使った簡易な位置情報ですが、今年の後半にはGPSを使ったより精度の高い位置情報サービスになります。

――近所のお店の情報も出る?
 高橋 例えば、レストランやホテルでも自分がいる地点から何キロ以内のホテルとグルメ情報をと指示すれば出してくれます。どこに行くのにどの地下鉄や電車を使ったらいいかも出る。

――課金のシステムは、どうなっているのですか。
 高橋 @NAVI.COMは今のところ無料です。
 ただ、有料化については通信事業者が自ら決定しているわけではなく、コンテンツプロバイダーがいろいろなビジネスモデルに照らし合わせて決めている。それに技術的に対応できるかが通信事業者の仕事です。
 例えば、グルメ関係ではクーポンと組み合わせて掲載料として売っているコンテンツプロバイダーもいる。ユーザーからもお店からももらうという二面立てでやっているところ、懸賞サイトとの組み合わせなど、いろいろなバリエーションが今できつつあります。

広告会社のデータベース

――モバイルインターネットを積極的に活用している企業にツタヤがありますね。
 園田 これからはデータベースを持っている企業がやはり勝つと思います。ツタヤオンラインは、リアルの会員がいるから強い。もともとリアルのビデオレンタルショップで、かなりの数の会員数を持っている。それでCDが発売されたときに事前にインターネットに流す。非常にレスポンスがいい。属性が分かっていて、その人たちの購買履歴を全部データベースで持っていますから、このアーティストが新しいCDを発売するときにはどの層の人に出せばいいという蓄積がある。一番進んだマーケティングのモデルだと思いますね。また、携帯に送られてきたクーポンを持っていけば安くなるし、それによってお客様の利用率も上がった。それがまた正のスパイラルを生んで、うまくまわっている。

――これからは広告会社がデータベースを持つようになる。
 園田 通信事業者が持っているお客様の情報は通信にしか利用できません。だから、広告会社としてマーケティングをやっていく場合には、独自につくらざるを得ない。その会員をどう集めるかが工夫のしどころです。
 高橋 携帯は旅行に向いています。阪急交通社が「m―trip」の実験を始めています。旅行に必要な事前情報、オプショナルツアー、レストラン情報の提供から添乗員との連絡までをEZwebで行うものです。旅行に添乗員がいらなくなり、しかも携帯をガイドにして歩くわけですから、どういう場所に興味を持ってアクセスしたかをデータベースに蓄積でき、また次のリターンにつながる。
 自社のデータベースを十分に生かしていきたいという企業からの提案もある。そういういろいろなプレーヤーもこれから出てくると思います。われわれはそのためのプラットホームを提供し、なおかつわれわれができる範囲であればビジネスを仕掛けていく。そういう形になっていくのでしょうね。

――広告会社自身がデータベースを持つ考えは?
 園田 リアルな世界でいろいろなお客様情報、会員情報を持っている企業は、auのプラットホームを使ってもらえば非常にタイムリーなセールスプロモーションができる。逆に、エイワンアドネットはリアルなビジネスをやっていませんから、業種を問わずどんなリアルなビジネスでも使えるような透明なお客様のデータベースを持つ必要がある。それは、工夫次第だと思っています。今、始められるのはリアルな商売をやっている企業にわれわれのプラットホームを提供し、今までできなかったかゆいところに手の届くマーケティングを提案することです。

メール広告の展開

――メール広告については、どうお考えですか。
 
園田 メールマガジンに広告を出すこともありますし、メールそのものが全部広告だというメール型の広告もあります。

――メールもやはりプライバシーの問題が絡んでくる。
 
園田 ある会員組織をつくり、ユーザーに「興味のある分野の企業から新製品情報やキャンペーン情報がメールで来ることはかまいませんか」という事前の承諾が必要になる。メール型は事前の承諾がなければトラブルの元になりますし、そこは工夫をする必要がある。
 高橋 迷惑メールも、携帯の機能としてフィルターをかけられるようにしてあります。キーワードさえ入れてもらえば、そのメールは届かないようにすることができます。しかし、基本的にはやはり事前登録型になるでしょうね。
 園田 携帯もパソコンのインターネットの世界に近づいています。インターネットはわけの分からないメールがけっこう来ますが、携帯は数が少なかったこともありスパムメールは比較的少なかった。だから、携帯のメール型広告もパソコンと同じような問題が表面化する前に、やはり事前の承諾をえて、きちっと対応しておくことが必要だと思います。

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メール広告
 メール・ニュース、メールマガジン、メーリングリストなどを広告メディアとしてとらえ、数行のテキスト広告を掲載する形が最も多い。ユーザーが希望するジャンルの情報をカスタマイズして配信するオプトインメールもあるが、企業自ら行う場合もあるなど広告とマーケティング、販促手法との境目は判然としない。また、広告、勧誘などを目的に無差別に大量送付される迷惑メールのことをスパム(spam)メールという。「spam」は、元は米国の食品の缶詰の名前。

著作権の問題

――ブロードバンド化すると著作権の問題も出てくると思うのですが。
 高橋 実は携帯は、インターネットから落としたデータは外に出せないようプロテクトがかかっています。著作権管理者からすると安心して著作物を提供できる仕組みができているのです。
 ただ、問題がこれから起こるかもしれない状況も出てきています。16和音の着メロやカラオケを携帯の中に入れておきたいニーズから、メモリーサイズがどんどん大きくなってきた。そうすると今度は、メモリースティックやSDカードを着けるという話になってくる。そのときには、著作権保護技術というものが必要になってきます。

――外部メモリーに移せば友達の携帯でも、パソコンでも読める。
 
高橋 そういう著作権保護のシステムを次世代の携帯では考えていかないといけないと考えています。
 そうすると、機能的にも携帯はパソコンと変わらなくなる。ネット上から情報を探してくるとか、来た情報を分類して知らせてくれるとか、今後、携帯は自分のやりたいことを代行してくれる代理人、エージェント的なものに進化していきそうな気がしますね。



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