特集 2000.10/vol.3-No.7

広告主はメディアをどうとらえているか
事例の蓄積から導き出す媒体戦略
 常に広告出稿の上位企業に名を連ねるトヨタ自動車。説明型の商品であるクルマの広告キャンペーンはメディアミックスの典型だが、多メディア化の中で、どのような視点から媒体選択をし、広告展開を行っているのだろうか。宣伝部メディア・イベント室長の河野弘氏に聞いた。
 
――キャンペーンの媒体選択の基本的な考え方について。
 
車種によって媒体選択は千差万別です。基本的には車種担当制をとっていて、キャンペーンのメディアミックスは、各担当が考えます。
 車種担当をサポートするのがメディアグループです。それぞれのメディアの窓口としての実務と、各媒体の効果的な使い方、相乗効果を高める使い方など、車種担当がメディアミックスを考えるベースになる理論の構築や事例収集を通じたモデルの作成を担当しています。
 また、立体的なキャンペーンを組み立てるために、各種のイベント開催など販促活動支援の観点に立ち検討していますが、車種によって媒体の予算配分はかなり違います。

●媒体効果を数字で押さえる

――最近発表になった新型カローラのような車種だと、やはり予算も大きくなる?
 カローラは基幹車種のひとつですが、だから予算を多くつけるという考え方はしていません。まず、キャンペーン目標を設定し、ターゲットに合わせて媒体選択と必要な媒体量を車種担当が計算する。これは、どの車種でも同じです。ただ、結果として重要な車種は、当然のことながら必要額も増えてきて、パッケージとしては最終的には大きくなる。
 たとえば、今回のカローラは従来のご年配のお客さまもたくさんいらっしゃる。加えて、その下の世代に対しても幅広くメッセージを届けたい。そう考えると、やはり新聞媒体も重要だろうし、インターネットも考える必要がある。結果として、すべての媒体をカバーするかなり大きいキャンペーンになっています。

――キャンペーンの媒体効果を測る尺度としては?
 最もベースにしているのは車名認知率です。ほかにキャンペーン認知率、広告認知率も参考にしています。具体的に目標とする車名認知率を確保するためにどのくらいのリーチ&フリークエンシーが必要か出てくる。それから、とくに新聞で考えたときには内容の理解度を一つの尺度にしています。昨年、読売新聞と電通の協力で「新聞広告とテレビCFの相乗効果」の実験調査を実施しましたが、テレビと組み合わせた時の新聞の商品理解まで含めて実績を蓄積して、実際的なモデルを作りつつあるところです。これまでは経験則に頼っていた部分もあったのですが、媒体効果を数字で押さえる方向で努力しています。

●カローラの新聞広告   ●カローラのテレビCF
カローラ紙面 TVCF1
TVCF2
TVCF3
TVCF4
2000年9月9日朝刊
 
●北野武を使ったカローラの15秒CF
「あんたへ」
「2000年だ、21世紀だと騒がしいけど、
何かちっとは新しいこと始めたか?」
「カローラがこんなに変われる時代だ」
「あんたはどうだい?」
「Drive Your Dreams.」

――モデルづくりはどの段階まで。
 いろいろな数字はそろってきました。車名認知率は当然ですが、キャンペーン後には必ず調査を実施していますので、媒体別の認知効果や予算によるキャンペーンの認知率といった過去の数字はある程度はたまってきています。ただし、普遍的なモデルを作るのではなく、さまざまな事例を蓄積し、今後の多種多様な車種の媒体戦略の大きな枠組みにしたいと考えています。

■各メディアの位置付け−マーケティング過程におけるメディアの機能
マス媒体は、「認知→関心喚起」までが主たる役割。
「車名認知→商品理解」はテレビ、「商品理解→来場促進」は新聞(雑誌)。
各メディアの位置付け

●マスの役割は認知と理解

――媒体の役割が、買い回り品とクルマのような耐久消費財では違うと思いますが。
 クルマの買い替えサイクルは、短くても4、5年以上です。スーパーマーケットの棚に並ぶ商品なら、広告で気に入ってもらえればすぐ指名買いしてもらえますが、クルマはそうはいかない。
 クルマの場合のマス広告、特に新聞、テレビの役割は、まず車名を覚えてもらい、次にそのクルマを理解してもらうことで関心を喚起し、次のアクションにつなげるところまでです。次のアクションとは、試乗会に行く、カタログを取り寄せる、インターネットのホームページで詳しい情報を取ってもらう、あるいはトヨタのお客様相談センターに電話してもらうといったことです。一義的にはそこまでがマス広告の役割だと考えています。

――以前は、新車が発表されると、まず新聞の朝刊からキャンペーンがスタートした。
 最近は変わってきています。
 まず車名の認知、次に理解を目的にした流れの方が効果的だからです。新車が発売された場合、お客さまにまず届けたい情報は「トヨタ」が「○○」という車名の「××」タイプの新車を発表した。この三つぐらいですから、テレビの方が認知は早い。キャンペーンの立ち上がりは、テレビCMを1、2週間流して、ある程度のリーチを確保してから、15段の新聞広告で具体的にクルマの特徴やスタイルをきちっと見せるという方が今は普通です。
 新聞のもうひとつの役割は、新車発表会の告知です。テレビでもやりますが、クルマのよさを理解してもらった上で、その地域の販売店への来場まで落とし込むのは新聞の方がやはり強い。新聞広告をテレビCMの後に出稿する、しかも発表会に近付けて出稿するのはそういう意図があります。

――新聞に求める役割が、最近は変わってきた?

 発表会告知でも、ディーラーの住所、電話番号もある。情報をぱっと見せて理解してもらう。テレビより複雑な内容を伝えられるという意味では昔と変わっていないと思います。

――立ち上がり以降のキャンペーンの展開、その他の媒体の使い方について。
 より高い認知率獲得に向けて、テレビは継続していきます。カローラの場合は、セダンの発表会と翌週のワゴンの発表会との2週連続、全15段で発表会告知および来場促進を目的に新聞に出稿しました。
トヨタHP
トヨタのホームページ
http://www.toyota.co.jp/
 雑誌はターゲット・オリエンテッドで表現を変えていくケースもあります。ラジオはテレビCMと連動させ、CMの記憶を呼び覚ます相乗効果をめざします。
 また、新聞や雑誌広告、テレビCMには、必ずURLを入れ、トヨタのホームページにお客さまを誘導する工夫をしています。昨年の秋から始めましたが、スペース的にも大きく扱い始めたのは今年に入ってからです。ホームページへの集客という意味では、バナー広告のウエートは低いですね。
 ただ、ベースのホームページ自体には期待しています。やはり情報量が違いますから。来てもらったら、知りたい情報が全部入っています。しかも、一度見に来てくれた人はブックマークしてくれる人が多い。

●新聞中心の車種も

――新聞広告はクルマへの関心喚起と発表会告知が役割の中心ということですが。
 車種によっては新聞主体の広告キャンペーンも展開しています。これは、キャンペーンの時期やターゲット特性などを考えたときに、ある車種では新聞を活用した広告展開が有効であると判断できるからです。
 たとえば、セルシオやプログレ、クラウンといった高級車の購入層は、年齢もかなり高く、しかもクルマにこだわりがある人たちです。こういうお客さまに広告を届けるには新聞が最も適している。プログレは全7段、全5段を使ったカラー広告で2年前からシリーズ広告を打っています。ただ、全国出稿で全15段という使い方はなかなかできません。本当に15段が必要なのか、リーチから見てどの新聞が効率的なのか、広告の出し方を含め検討中です。

――企業広告の媒体選択については、どう考えていますか。
 企業のメッセージをお客さまに真摯にお伝えする必要がある場合は、新聞も使います。エコプロジェクトはその代表的な例です。

●セルシオも新聞広告中心の展開 ●プログレのシリーズ広告
セルシオ紙面
2000年9月9日朝刊
プログレ紙面1
2000年4月24日朝刊
プログレ紙面2
2000年5月19日朝刊
  プログレ紙面3
2000年7月19日朝刊

●メディア競合激化の時代に

――インターネットが普及すると、顧客と直接情報のやり取りができるため、ビジネスのやり方も変わってくる?
 クルマには、必ず登録、納車がありますから、住所も家族構成も把握できる。車検がいつあるから、次のおすすめはいつということもわかる。自動車販売はお客さまのお世話をずっとしていく商売です。CR(カスタマー・リレーションシップ)と声高に言われていますが、クルマはずっと昔からそういう意識で商売をしてきました。インターネットができ、相互情報交換でCRが簡単になるということではけっしてないと思います。

――BSデジタル放送など新媒体も登場しています。
 新しいメディアの登場は、選択の幅が広がり、多彩なメディア戦略が可能になるということで、大いに期待しています。
 BSデジタル放送については、今後の視聴世帯の拡大に期待するところが大ですが、既存のテレビ媒体とは異なる、たとえば、トヨタという企業を全面に出しながら楽しめる番組にチャレンジするのも面白いと思います。
 インターネットが急速に普及し、BSデジタル放送も始まるなど、今はメディア競合激化の時代です。新しい経験則を作っていかなければならないので、われわれにとっても好機と考えています。
 メディアが増えたので予算も増やすというわけにはいかないので、こういう時代こそ知恵をしぼり合い、トヨタらしさを発揮していかなければならないと考えています。また、メディア間の競争がクライアントへのより質の高いサービスにつながることを期待しています。




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