特集 2000.09/vol.3-No.6

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 郵政省の「通信白書」の推計では、日本のネットユーザーはすでに2,700万人を超えている。急速に普及しつつあるインターネットは、人々の情報接触や買い物行動にどのような変化をもたらそうとしているのだろうか。今回の特集では、実際の調査をもとに、こうした変化の実態とデジタル時代のマス広告の機能と役割を考える。
特集1
 
 日本広告業協会「広告の機能と役割小委員会」は平成11年度の研究プロジェクトとしてデジタル時代のマス広告とインターネット広告の役割を明らかにする研究を行い、結果を発表した。インターネットは従来の情報行動、購入決定プロセスにどのような変化をもたらすのか。ブランド構築の上でマス広告とインターネットはどのような役割を果たそうとしているのか。小委員会幹事の鈴木宏衛氏に寄稿してもらった。
1 はじめに

[調査の概要]

調査目的
インターネットの浸透によって生活者の意識、ブランド意識、購買行動がどう変わるか、その結果として広告の機能・役割はどう変わるかを展望する。

調査地域 首都圏

調査方法
対象者に対するデプスインタビュー。対象者は事前にインターネット接触状況や過去の購買行動について磁気式でアンケート記入。またパソコン周りの写真を提供してもらう。インタビューは広告業協会会議室にて一対一のデプスインタビューで実施。

抽出方法
対象者については以下の12名とした。
20代 男4 女2  40代 男0女1
30代 男0 女2  50代 男2女1

実施時期 1999年12月
 日本広告業協会「広告の機能と役割小委員会」は広告の持つ機能と役割について研究し、広告の価値を広く社会に啓蒙(けいもう)する活動を行っている委員会である。今回の研究は、インターネットをはじめとするデジタルメディアが普及し、インタラクティブ広告が定着する中で、マス広告とインタラクティブ広告の広告効果がどう発揮され、どのような補完関係や相互強化作用を持つのかを明らかにすることにより、これからの時代の広告メディアの役割と機能を明らかにしようというのが狙いであった。あわせて、ブランディングに広告、特にマス広告が果たす役割が強く意識されている現在において、インターネットがブランディングにどのような力を発揮するのか、これも明らかにしたいと考えていた。
 本稿は各委員の結果解釈も含め、この成果を要約して本誌上で紹介するものである。なお、リポートは日本広告業協会で実費頒布している[注1]
 調査方法については、ダイナミックに変化しつつある動態を説明する仮説構築が重要と考えデプスインタビュー[注2]を行うことになった。定性調査の解釈は広告会社各社のマーケティングエキスパートから構成される小委員会メンバー、および早稲田大学商学部の嶋村助教授、専修大学経営学部の石崎助教授にも分析をお願いした。またデプスインタビューの運営は、この分野に関心が高く、消費者調査のエキスパートである長原マーケティング研究所長原紀子氏に依頼した。
 本調査は定性調査であるため、定量的な傾向を表したり、明確に断言できる事実を提示するものではないが、マス広告とインターネットのかかわりについて幅広い仮説を提起できたと考えている。

[注1]:『マスメディアとインターネットの情報融合で広がる広告ビジネス』同報告書のお申し込みは、日本広告業協会、電話03-3562-0876
[注2]:グループインタビューをさらに進めた心理学的なカウンセリング手法を利用した調査方法。ターゲットイメージとなる人を呼んで、さまざまな話の中から徐々に心理の深いところまで切り込んでいく。対象者の深層にある問題解決の糸口を探りあて、有効な仮説設定が可能になる。


2 情報行動の変化とブランディングの今後

 インターネットの利用が進むにつれて人々の生活行動にも変化が表れている。具体的には、生活時間が夜型となり、睡眠時間が切りつめられている。メディアとのかかわりでは、深夜のテレビ視聴が減った、漫然とした新聞閲読が減った、読書時間が減ったという状況は、マス媒体による広告活動を考えていく上で今後の課題であるといえる。
 人々にとってテレビやラジオは気軽に視聴できる媒体であるが、インターネットは入手したい情報が明確であるという点で新聞や雑誌に似ているといえる。インターネットの利用による変化は、生活時間にメリハリを付けたという言い方ができるかも知れない。
 インターネットが生活に入り込むことによって、日常の行動を起こす前に必ずネットでチェックするという合理的、情報重視型の行動が増えている。この情報チェックの際にいかに企業のホームページに導いてくるかが課題であり、そのためには企業や商品のブランド価値を高めるための日ごろの広告活動が今まで以上に必要となってきたといえる。

情報行動はどう変わったか

 マスメディアとインターネットの情報行動の関連について調査結果をまとめると、次の5つの傾向を指摘できると思う。

(1)広告や情報への接触は、目的や商品によってすみ分けられている
 新製品の認知は、主に新聞・テレビの記事と広告・交通広告・メール広告で、興味を持った商品についての詳しい情報は、カタログ・専門雑誌・ホームページで、最終的な判断は友人・知人・販売員のアドバイスと現物を見た感じ、というすみ分けがされている。
 食品はテレビ、映画・書籍などは新聞、車・電気製品・パソコンなどは新聞・テレビ・雑誌で接触するなど、商品分野によって広告や情報への接触は異なる。
 その理由は、調査対象者の意思というよりは、広告や情報の媒体露出のバランスが商品によって異なっているためと、対象者自身もクールに認識していることが多い。ホームページは、より詳しい情報の検索やマスメディアには載らないマイナーな情報の検索のための便利な情報として位置付けられている。

(2)マスメディアから情報を得てホームページを見る人が多い
 新聞(記事・情報)、テレビ(記事・情報)、雑誌(記事・情報)からキーワードやアドレスを知り、ホームページを検索する人が多い。インターネットをよく利用する人は、マスメディアで興味を持った情報をインターネットで詳しく調べようとする習性があるが、マスメディアはそれに対応できていない場合も多い。テレビなどで、アドレスがメモできないうちに表示が変わってしまったりすることに不満を持つ人がいる。

(3)インターネットで知った情報がマスメディアに出ると印象が深まる
 マスメディアに出る情報やCMを、インターネットで既に知っていた経験を持つ人は、テレビCMを見て、再確認することで、先に知っていたという満足感を感じる。普段ならやり過ごすCMもインターネットで見ていたことから印象に残るものとなる。

(4)インターネットをマスメディアの代わりにする人もいる
 家で新聞を一紙とり、他の新聞はインターネットでチェックする人がいる。見逃した連続ドラマは、テレビ局のホームページであらすじをチェックする人もいる。
(5)インターネットは、〈もうひとつのメディア〉

 インターネットは既存のメディアと相互補完関係にある〈もうひとつのメディア〉として位置付けられている。インターネットを便利な情報源として使いこなしている人は多いが、いざアクションを起こすとなるとインターネットの情報のみで動く人は少ない。たとえば、雑誌に掲載されていることを確認してから行動に移る人がいる。金融機関の場合、ホームページの内容だけでなく、規模・知名度などからも判断する人がいる。

ブランディングとの関係

 こうした情報行動から見る限り、インターネットは現段階では「ブランド構築メディア」というより、「情報提供メディア」である。多くの場合、インターネットの情報だけで行動を起こすケースは乏しく、事前のブランドについての知識や信頼感があること、あるいはマスメディアで言及されていることによって購買行動が喚起される。
 メディア自体への信頼性に裏付けられたマス広告による保証がなければインターネットだけでブランドに対する信頼を獲得するのは難しいということだろう。
 ネットでの購買経験者は、商品情報への確信度、決済方法の安心感、販売側の信頼感など購買決定に至る情報処理要因の不安定さもうかがえ、その「ネット情報の不安定さ」を補うのが新聞や雑誌・カタログ・テレビなどのマス媒体である。単に、インターネットの双方向性が脆弱(ぜいじゃく)だということではなく、自分が集めた情報を「客観性」などの基準でさらに絞り込みたい、ジャッジしたい、ということでマスメディアが求められている。
 その一方で、既に形成されているブランドへの愛着・信頼感をインターネットが一層強化する傾向は見られる。
 インターネット時代のマス広告は、コミュニケーション戦略におけるブランドの定義付け、ターゲットのセグメンテーションの重要性がますます高まるものと考えられる。

インターネットユーザーの特徴


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