特集 2000.05/vol.3-No.2

「家」の時代
家電がネットワークされる意味
 エコーネットは、Energy Conservation and Homecare Networkの略称だ。エネルギー保護と在宅医療のネットワークという名前が表しているように、省エネと高齢化社会のホームケアのために考えられた日本で生まれた家電のネットワーク方式だ。電灯線や無線を使って家電のネットワークを組むことができ、既存の家でも設置が簡単に低コストでできる点が最大の特色だ。また、どんな家電でも動くオープンシステムにもなっている。
コンソーシアムの設立

山田氏 エコーネット・コンソーシアム(理事長・佐野令而松下電器産業技術顧問)は、松下電器産業、日立製作所、東芝、三菱電機の4社が幹事会社になり、家庭内のネットワーク化を推進するために1997年12月に設立されている。翌98年10月に東京電力とシャープが加わり、現在はこの6社のA会員と65社のB会員で組織が運営されている。コンソーシアム全体の運営や具体的な標準仕様の作成はA会員が担当し、B会員はできあがった規格を使っていろいろなサービスや装置を作っていく。また、そのための意見や要望を出すという役割分担になっている。
 コンソーシアム設立のきっかけは、電気・家電業界が96年に通産省からの研究委託を受けてつくられた「21世紀のホームネットワークのあり方に関する調査研究委員会」(96年10月〜97年5月)だった。そこで次世代のホームネットワークのあり方がまとめられ、設備系ネットワークの開発と国際標準化をすすめるべきだという提案が委員会から通産省になされた(97年6月)。
 一般家庭のエアコンや冷蔵庫などの白物家電やビルの空調・防犯設備などをエコーネットでは「設備系」と呼んでいる。コンソーシアムの山田淳・普及委員長は「委員会では、映像系やパソコンなどのコミュニケーション系全部をひっくるめて検討したが、一緒のネットワークにするのが適切かどうかという議論があった」という。映像系にはかなり高速の伝送速度がいる。そのため通信チップも高額になる。映像系と同じようにエアコンや冷蔵庫を管理をすると、非常に高価なネットワークになる。それで、「映像、コミュニケーションなどのいわゆるエンターテインメント系と設備系はネットワークを分けよう」という話になった。
 価格競争の激しい家電では、100円、200円のコストが問題になる。「通信チップは数百円に納まらないと厳しい」という事情もある。

省エネの限界と高齢化社会

 エコーネットが家電業界や電力会社などを中心に開発がすすめられてきたのには二つの社会背景がある。
 一つは二酸化炭素の削減問題。第一次石油ショック以降、産業界のエネルギー消費量は省エネ努力の結果ほぼ横ばいだが、家庭部門は2倍に増えている。家庭の省エネ問題を根本的に解決しない限り、地球温暖化防止京都会議の目標を達成できない。
 「確かにエアコンでも消費電力は数年前に比べかなり少なくなっている。しかし、使用台数が増えているので、結局電力の使用は落ちていかない。家電単体での省エネは技術的に限界に近づきつつある」と山田氏はいう。「要するにシステムとして考えていかなければ、これ以上の省エネは限界だということが技術的ニーズとして出てきた。そのためにも、ネットワークを組む必要がある」
 もう一つは高齢化対策。高齢世帯は2010年には全世帯の34.5%を占めるといわれ、介護やホームケアを社会全体の問題として考えていかなければならない時代になってきた。ネットワークを組めば、センサーを使って高齢者の安否確認も可能になるし、異常があれば家族や介護センターに知らせることもできる。

エコーネットの仕組み

 エコーネットでは通信用として基本的に電灯線を使用する。家電製品にエコーネットのチップが組み込まれていれば、電源プラグをコンセントに差し込むだけでネットワークにつながる。電灯線ではなく、無線や赤外線でやり取りすることもできる。つまり、既築のビルや家でもエコーネットは簡単に利用できるということだ。
 また、既存の家電もアダプターを付ければエコーネットにつながる。AVC系ネットワーク[注3]とはゲートウエーを介して接続され、ネットワークにつながったパソコンやテレビから、つけっぱなしのエアコンを消すことも可能になる。
 電力量計からつながる「コントローラー」(図)は、データを収集して、センサーによって家電をオン・オフにしたり、省エネ運転にするといった機能を果たす。エアコンには温度センサーが付いているが、その情報をコントローラーが認識して、室温が高いとまず換気扇を回し、それからエアコンを起動するといったことも外出先からできるようになる。それぞれの家電に温度センサーを付ける必要もなくセンサーを共有できるようにもなる。
 エコーネットの実証実験は昨年の11月に行ったが、これはエアコンを使って行われた。家庭のエネルギー消費の割合は、エアコンが22%、冷蔵庫が20%。照明が18%を占める。最近のエアコンはインバーターになっているので、スイッチを入れると一気に冷やして、後は省エネ運転になる。消さない方が効率的な場合もある。こういうこともコントローラーの設定で、最適に行うことができるようになる。
 コンソーシアムの役割はこうしたエコーネットの規格と普及活動で、これを利用し、どういうサービスや装置を提供するかは各企業のアイデア次第だ。

[注3]AVC系ネットワーク:AV機器とコンピューターのネットワークのこと。

エコーネットのイメージ

電力会社の新しいサービス

 エコーネットは一戸建てやマンションなどの個人住宅だけでなく、コンビニや小規模スーパーなどの店舗、中小規模のビルまでを対象にしている。
 大きなビルはビル管理システムが導入され、エネルギーの使用管理やそれに基づいた省エネ運転のシステムが導入されてきている。ところが、「店舗も含めた中・小規模ビルのエネルギーの使用実態は、実はあまり分かっていない」(山田氏)。エコーネットを使うと機器それぞれのエネルギー使用量も把握できるので、エネルギーマネジメントやコンサルティングといったサービスも可能になる。
 エコーネットに電力会社が参加している理由は、ここにもある。家庭用の電力自由化も取りざたされているが、顧客をつなぎ止める意味でも、こうしたサービスは有効になる。
 もちろん、原子力発電所の新設は難しいし、火力発電所の新設も二酸化炭素排出の問題がある。電気の効率的な使用は、電力会社にとっても非常に重要だ。消費者ニーズで家庭の電気使用量は増え続けてきたが、あらゆるところに限界が見え始めている。

循環生産への第一歩

 エコーネットでは、家電それぞれの使用状況だけでなく、家電の製造番号も把握できる。「リモートメンテナンスのアプリケーションを作れば、例えばメンテナンスサービスセンターから家電品の使用状況が分かる。無理な運転の仕方をしているとか、そろそろ寿命に近いということも当然分かる」。そうすると、メンテナンスや新機種への交換のおすすめといったビジネス展開も可能になる。その時、古い家電を引き取るという形にビジネスの形が変わっていく。オンラインで管理され、機器の使用状況もわかっているので、部品のリユースもしやすくなる。エコーネットは、家電のリサイクル、循環生産への第一歩としても大きな意味を持っている。

コンソーシアムの今後の活動

 コンソーシアムは実証実験を経てこの2月にエコーネットのバージョン1.0を完成させた。まだ公開は会員に限定しているが、特許やロイヤルティーの取り決めが完了したのち一般公開する予定だという。
 エコーネットの基礎確立をめざしたフェーズ1は99年度で終了したが、4月からはエコーネットの普及だけでなく、新たな技術課題にも挑戦していく。家庭にも普及し始めている高速無線の規格への取り組みやインターネットとの連携などが視野に入っているという。
 設備系家電のネットワーク化は欧米でも進んでいる。アメリカはCEバスという規格で、やはり電灯線や無線を使った標準化が進められている。ヨーロッパはヨーロピアン・コンバージェンス・アソシエーションが統合に努力している。そして日本の設備系家電の標準がエコーネットシステムということになる。
 「昨年10月にアメリカに行き、向こうの団体の人たちといろいろ話し合いをした。ヨーロッパとも、今年意見交換をしながら国際的な標準化を図っていく予定だ」。こうした話を聞くと「標準化にも国際間の壁」と考えがちだが、それぞれの技術が確立してしまえば、技術的にはあまり問題はないと山田氏はいう。「アプリケーションがCEバスとエコーネットを操作できるようにすればいいわけで、そんなに難しい話ではない。一番大事なのは、どれだけいいアプリケーションが出てくるか。それが出てきたら、一気に市場ができると思う」



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