特集 2000.03/vol.2-No.12

動き始めた e コマース
三井物産
 三井物産は、セブンドリーム・ドットコムはじめ、インターネット関連事業に投資している。その投資残高はこれまで1,100億円に上るという。eコマースに対する取り組みについて三井物産IT推進部長佐伯基憲氏に聞いた。
 
IT推進部は昨年10月に発足したということですが、その背景と役割は?

佐伯氏 インターネット人口が急激に拡大してきたことによって新しいビジネスが生まれてきた。eコマース、電子商取引は今や国内・国外の両面で舞台が広がりつつある。その中で、総合商社である三井物産が注目しているのはBtoBといわれる企業間取引だ。
 三井物産は明治9年の創立だが、常に新しいものを取り入れ新しい産業を作り出して来た。その時代時代の伸びる分野に、われわれの経営資源である人と金を投入してきた。そういう意味で、今は「サイバーフロンティア」に投資を集中している。
 インターネットも大したことはないと見くびっていると、淘汰される側に回るおそれがある。ましてやインターネットは仲介者を必要としない面がある。ネット上に取引の場が出来るということは、われわれが汗を流しながらやってきた仲介商売が消えてしまうおそれもある。
 IT(情報技術)を取り入れて三井物産の現在持っている商売を強化していくか、今までなかった商売をつくっていくか。三井物産には17の営業本部があるが、それぞれ主体性と具体性を持って、しかもスピーディーに取り組む時期にきている。
 そのために昨年10月、全社の情報のハブとして機能するための部署「IT推進部」ができた。基盤システム作りと保守運用の技術者集団である「情報通信システム部」と三井物産の戦略立案の参謀本部である業務部の中で会社全体の情報化をプランニングしてきた「情報化推進室」が合体して、いうなれば戦略の企画立案と実行を同じ部でやるようにした。意思決定や判断のスピードを上げ、時代に合った的確なアドバイスをしていく。全社的にそれを推し進めるというのがわれわれのミッションだ。

セブンドリーム・ドットコムだけでなく、ネット関連事業全般に投資していますが。

 インターネット関連事業への投資は情報産業本部が担当し、投資先はネット関連のほとんどすべての分野を網羅している。「東京電話」の東京通信ネットワークや電力系のデータ通信会社パワーネット・ジャパンなどのネットワークインフラ、AOLジャパンなどのインターネットサービスプロバイダー(ISP)、Eメールのアウトソーシング会社であるクリティカルパスなどのアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)、セキュリティーなどのeコマース分野、スカイパーフェクTVなどのデジタル放送事業など情報産業本部のネット関連事業投資総額はすでに1,100億円に達している。
 ネット関連事業への投資は一見するとルーレットのチップを張っているようにランダムにも見えるが、今は変化のスピードが速い。じっくり考えて「これだ」というところに何百億円も投入することはできない。
 昔のように完全に「あなたと友達」という世界ではなく、この世界ではコンペティターだが、この世界では共同してやるなど複雑な面がある。
 また、第一種通信事業者を含む27社が参加するADSL協議会では三井物産がホスト役を務めており、既存のNTT東西地域電話会社の同軸ケーブルを使用した光ファイバー並みの性能を持つ高速大容量回線(ADSL)の整備を推進している。

今後のIT事業戦略

大企業がeコマースに参入してきた背景をどうとらえていますか。

 実際はまだ、形になっていない。模索段階と言った方がいいかもしれない。
 技術的にはクリアしなければならない点はあるが、東京電力は彼らの強みである送電線を通信に活用する方向に動いているし、トヨタは自動車産業のあり方を変えるのではないかと言われるインターネット・サイト「GAZOO(ガズー)」を立ち上げるなど、大企業も新しい時代感覚を持って本業をさらに生かしていく場所を見つけ始めたということだと思う。

インターネットのセキュリティーの問題が問われていますが、eコマースの決め手になるのは何でしょう。

 決済、信用程度を把握するような機能がないとECは進まないと思う。三井物産でいえば今まで経理部、財務部、審査部がやってきたことと同じ信頼度がネット上の取引でも求められる。
 ネット上の取引は値段の差がものすごくある。極端な例だが、ネット上でオークションをやると世界で一番安い値段に下がる。それに耐えられる人でないと、ネットで商売ができない。ところが生き残ったところには、脱落した人の分の商売が来るから量が増える。そうすると次にまた値下げ要求が来る。これの繰り返し。だから相当覚悟しないと、ECの商いをしようということには、なかなかならない。
 その時に何が最終的な決め手になるかと言えば、やはり「信用力」「ブランド力」だ。値段が10円から1万円くらいのばらつきがあった時に、だれと商売をしていいのか。10円の人から買って本当にいいのか心配になる。その時に決め手となるのが、その会社の世間的な評判や信頼度になってくる。それが老舗がeコマースに乗って来るひとつのポイントだと思う。だからある面では、三井物産という名前が通用している間にECにシフトしないと出遅れる危険がある。
 アマゾン・ドットコムより安いオンライン・ブックショップは実はたくさんある。先ほどのオークションも個人向けのECの場合、ネット上でどこが一番安いのかを検索するような情報システムを組もうとすると大変膨大なシステムになるから、それは事実上は出来ない。やはり一番知られている信用度の高いところからみんな買う。
 BtoBの世界で三井物産が果たしていかなければならない役割も、そこにあると考えている。

セブンドリーム・ドットコムをどのように見ていますか?

 自分たちの本業でどれだけ稼げるかということで、各企業は参加している。やるという決断自体が大変な経営判断だったと思う。コンビニというインフラをECのプラットホームとして使う発想はあってもいいし、コンビニは狭いスペースの中で多機能化していかざるを得ない。それが各店舗の収益につながっていくかどうかはコンビニが本業として解決していくべき問題だろうし、また解決していくだろうと思う。
 さくら銀行のATMを導入したampmは集客力が高まったと聞く。セブンドリーム・ドットコムもセブン-イレブンとオーナー両者にメリットがあるという関係が構築される可能性は十分ある。ただ新たな問題点が生まれる可能性ももちろん否定できない。未来のことに挑戦しているのだから、何が出てくるかわからないからだ。
 以前の大量生産の規模の経済や多角経営の範囲の経済から今は完全に「時間の経済」に移っている。インターネットによって瞬時にニーズ、欲求が解決されるようになってきた。これは人間の感覚を変える。例えば、今欲しいからインターネットで注文しても、それがすぐ届く物流の高速化の仕組みが出来ていないと、最終的な満足にはつながらない。今の物流には「高速化」という大きなニーズがある。それを実現した企業が次の時代の物流の勝者になっていくと思う。
 宅配便の取次店は今や郵便局や交番よりも多い。しかし、在宅率の低下などから届ける時にはやや問題が出てきた。それを埋める形でコンビニがECの拠点として生かされていくかも知れない。


動き始めたeコマーストップページヘ→

「日本型EC」の成功をめざしてヘ
セブンドリーム・ドットコム→


eコマースの先駆け「ロッピー」ヘ
ローソン→
もどる