特集 2000.03/vol.2-No.12

動き始めた e コマース
セブンドリーム・ドットコム
 1月6日の発表以来本格的なeコマース(EC=電子商取引)の新会社として注目されていた『セブンドリーム・ドットコム』が2月1日、正式に発足した。「日本型EC」をめざして設立された新会社の概要とねらいについて、セブン-イレブン・ジャパン広報室の山本健一氏に聞いた。
 
山本氏 セブンドリーム・ドットコムは資本金50億円。セブン-イレブン・ジャパンを中心に、日本電気、野村総研、ソニー、ソニーマーケティング、三井物産、日本交通公社、キノトロープが出資する8社の合弁会社だ。具体的に8社のなかで話が進みだしたのはここ1年ぐらいだったという。
 出資比率はセブン-イレブン・ジャパンが51%を占め、同社の子会社ということになる。「何事にも慎重」といわれるセブン-イレブン・ジャパンだが、今回はEC事業の取扱高を2001年度に1,500億円、2003年度に3,000億円と、日本のEC市場の1割のシェアを獲得するという明確な目標を掲げる。
 新会社は、6月に国内最大級のインターネットサイトを立ち上げ、10月からセブン-イレブン内にマルチメディア端末を設置。さらには携帯電話やデジタル放送ネットワークからもアクセスできる店舗と連動させたECサービスの提供をめざす。

コンビニで決済、受け渡し

国内EC市場と7dream.comの取扱高の予測 マルチメディア端末は、現在26都道府県に約8,000店舗あるセブン-イレブン全店に今年10月から来春にかけて設置される。セブン-イレブンの1日の来客数(レジ通過人数)は1店舗あたり平均960人、全国では1日に約770万人が買い物に来る。この来店客に対してマルチメディア端末で、旅行、音楽、写真、物販・ギフト・携帯電話等、チケット販売、書籍、車関連、情報提供サービスの8つのコンテンツを発信する。
 また将来的には、インターネット代金収納サービスやEC会員カードの発行、ATMサービス、金融商品の窓口サービス、さらには、例えば住民票の取得など公共情報サービス、申請手続きサービス、地域情報サービスも考えている。
 このうち、インターネット代金収納サービスは、昨年の11月から既に実施済みで、『セブンドリーム・ドットコム』が提供するサービスについても対応させる。
 現在実施しているインターネット代金収納サービスは、電子商取引の弱点である決済のために店舗の“軒先”を貸すもので、ソフトバンクなどと提携した書籍販売の仮想店舗「イー・ショッピング・ブックス」にも利用されている。
マルチメディア端末 「イー・ショッピング・ブックス」での書籍購入手順は以下のようなものだ。まず、欲しい本を決定。次に「セブン-イレブンで代金を支払い商品を受け取る」「セブン-イレブンで代金を前払いして、宅配で商品を受け取る」「クレジットカードで代金を決済して、宅配で商品を受け取る」のいずれかを選択する。「セブン-イレブンで代金を支払い商品を受け取る」を選択すると自宅周辺の店舗が表示されるので受取店を決定する(自宅周辺以外でも指定可能)。受け取り方法・支払い方法の最終確認をすると払込票が表示される。払い込み番号をメモするか、自身のプリンターで印刷して保存する。通常2、3日でお店に商品が届くので、印刷した払込票を店頭に持参するか、払い込み番号をレジに口頭で伝えれば商品を受け取れる。
 「イー・ショッピング・ブックス」はサービス開始から2か月で会員数が4万人を超えているが、その9割は「セブン-イレブンで代金を支払い商品を受け取る」を選択しているという。
 また、インターネット代金収納サービスのシステムは「イー・ショッピング・ブックス」以外のショッピングサイトにも対応可能になっている。商品の受け取りは出来ないものの、代金の支払いはセブン-イレブンでできる。

携帯からもアクセス

ホームページ インターネットサイトは今年6月に立ち上げる。現在でもhttp://www.7dream.com/のURLにはセブンドリーム・ドットコムのサイトがつくられているが、ここにインターネットショップが開設される。また、独自のインターネットショップだけでなく新会社に参加するNECのビッグローブやソニーのソネットなど他社のサイトとの連携もすすめていく。
 さらに、インターネットショップへはパソコンや店舗のマルチメディア端末からだけではなく、普及の著しい携帯電話やデジタル放送などのネットワークサービスからもアクセスでき、手続きや買い物ができるようにする予定だ。
 「インターネットサイトにはどこからでもアクセスでき、店舗のマルチメディア端末で決済、金融サービス、公共・行政・地域サービスが受けられる」(広報室・山本氏)というのが『セブンドリーム・ドットコム』がめざすECのイメージだ。

新しいECビジネスの構築

 1月6日に行われた『セブンドリーム・ドットコム』の記者発表の席上、セブン-イレブン・ジャパン会長の鈴木敏文氏は「顔の見えるEC」「日本型のEC」を強調した。米国のECはネット上の仮想店舗で買い物をして宅配便で受け取る形が主流だが、「コンビニというインフラが発達した日本だからこそできるECの形」を提供していこうという考え方だ。
 「イー・ショッピング・ブックスでもそうですが、日本はクレジットカードによるEC決済が非常に少ない。ほとんどが銀行振り込みや商品が届いたときにお金を払う代引きです。クレジットカードの番号をインターネット上で使うことにも抵抗がある」(広報室・山本氏)。その回答が、生活のインフラになっているコンビニを利用した「日本型EC」であり、店舗と連動した「顔の見えるEC」でもある。
 コンビニ・ビジネスは商品開発から物流、販売というトータルな基盤があって初めてなりたっている。『セブンドリーム・ドットコム』はECビジネスのために必要な基盤、プラットホームを独自につくり、物販から各種サービスまで一貫して手がけることが特徴だ。
 プラットホームというとわかりにくいが、要は売るための仕組みだ。「商品の開発から商品をどういうふうにお客様に見せていくかというサイトのあり方、商品を届ける仕組み、決済の仕組み、そういうトータルなプラットホームがあって初めてECは広くお客様に浸透していく」。そのために各業界を代表する企業が集まったということでもある。

店舗とネットワークの連携

EC端末のワンストップ化

 『セブンドリーム・ドットコム』が立ち上がると、モノやサービスの売り方はどう変わってくるのか。
 例えば、人気アイドルAのニューアルバムが出たとする。マルチメディア端末にMDを差し込み、アルバムに入っている十曲の中から「いまコマーシャルで流れているこれとドラマで使われているこれ」という具合に特定の曲を選んでMDにダウンロードできる。次に画面には人気アイドルのブロマイドが出てくる。ブロマイドにもパターンがいくつかあって、それを選んでオリジナルのMDジャケットにできる。また、「人気アイドルAのコンサートがあります。チケットを予約しませんか」「きょうのテレビ番組で人気アイドルAがゲスト出演します。ビデオ録画してはいかがですか。ビデオテープはセブン-イレブンにあります」「今週発売のファッション雑誌でも人気アイドルAのファッションが特集されています。一緒にいかがですか」など、その人気アイドルをキーワードに店舗も含めていろいろなサービスや情報を画面上から提供する。これが『ワンストップ化』という考え方だ。

情報・サービスのコンビニ

 こうしたコンビニの変化を山本氏は必然と受け止める。
 セブン-イレブンの1号店のオープンは26年前。そのときは文字通り朝7時から夜11時の営業だった。産業のサービス化が進み生活時間が多様化し始めたころだ。初期のキャッチフレーズ「開いててよかった」に象徴されるようにこのころのセブン-イレブンは、タイム・コンビニエンス、時間のコンビニエンスだった。
 80年代に入りあらゆるものが24時間化してくると、「おいしいお弁当」「おいしいサンドイッチ」「新鮮なサラダ」と質を追求してくるようになった。クオリティーコンビニエンス、質の便利さが求められるようになった。
 そしてこれからますます求められてくるのが、情報やサービスの便利さだという。「セブン-イレブンは電車に乗って行くお店ではなく、首都圏で言うと半径500メートルから1キロぐらいが商圏です。いつ行っても欲しいときに、欲しいものが、欲しいだけ手にはいるお店でなければいけない。その欲しいものがこれからは情報やサービスになってくる」
 今後のセブン-イレブンの店内には、マルチメディア端末と、導入時期はまだ未定だが、ATM機とマルチコピー機が並ぶ。マルチコピー機は高速カラーコピー、ファクス、スキャナー機能、インターネット接続もできる複合機だ。しかし山本氏は、「あくまでもわれわれの本業は小売業です。ATMやマルチメディア端末が店舗にずらっと並び、お弁当ケースが少なくなっていくということは考えていない」という。

店舗もワンストップ化

 しかし、情報やサービスのコンビニエンスは、各店舗に実際に利益をもたらすのだろうか。
 「イー・ショッピング・ブックスではインターネットで注文した本がお店で受け取れます。本そのものはイー・ショッピング・ブックスの売り上げですから、お店に入るのは手数料です。例えば1,500円の本を買うと100円の留め置き料と100円の手数料で200円が店舗に入ってくる」。他のインターネットサイトの代金支払いや公共料金も数十円から百数十円の手数料がお店にはいるだけだ。
 「セブン-イレブンが考えているのは、将来設置していくセブンドリーム・ドットコムにつながる端末や店内ATM機、ファクス機能や通信機能を持ったマルチコピー機をフルに活用し、お客様の身近なお店で文字通りすべてのニーズにこたえられるようにセブン-イレブンそのものを『ワンストップ化』していくことです。それが、料金収納サービスの受付件数を見てもわかるように地域の生活のインフラとしての期待にこたえていくものだと考えています」
 セブン-イレブンでは1987年から「料金収納サービス」を開始している。当初は大きな利益にはならないという周囲の予測もあったが、今や年間受付件数が8,000万件、預かり金6,000億円にも上る。8,000万件ということは1店あたり1年間で1万件、手数料を1件100円としても年間100万円の収入になる。
 しかし、セブン-イレブンの売り上げは、1店舗1日約68万円といわれている。それからみると微々たるものではないか。
 「例えば、将来全店で導入を予定しているATMについても、要するにセブン-イレブンを利用されているお客様のニーズなのです。ですから、私どもはATMを置くことによるプラスアルファの集客効果を期待しています。マルチメディア端末も先ほどのワンストップ化によってお店の売り上げも上がると考えている」

“今”というタイミング

 これまで大手チェーンで何らかの情報端末を置いていないところはセブン-イレブンだけだった。それがなぜ今「セブンドリーム・ドットコム」なのか。
 「鈴木会長いわく、タイミング以外の何ものでもない。要するにタイミングを計っていただけであって、われわれにとってはこれが遅いという認識もないし、逆に進んでいるということもない。われわれがやる以上は本当にお客様のニーズがあることが最も重要ですから」
 こうしたニーズ調査はこれまでも行ってきたし、97年11月から導入した「第5次総合情報システム」は、いつATMが乗っても、EC端末が乗っても対応できるように整備されている。
 「フランチャイズチェーン・ビジネスである以上、絶対失敗は許されない。情報コンビニエンスの時代は一気に来る。その情報のチャンネルとしてセブン-イレブンが中心になっていけるようわれわれは努力するしかない」
 変化しないコンビニには限界が来る。変化への対応でコンビニはこれまで成長してきた。「商品を置きさえすれば売れた売り手市場の時代とは違い、時々刻々と変化するお客様のニーズを的確にとらえ、商品・サービスを提供していく買い手市場の時代になった。そのためには、きめ細かな商品開発や品ぞろえが要求され、当然商品のライフサイクルも短くなってくる」
 2,800種類置いてある商品の7割が1年で変わる。毎週百種類の商品が新規で出てくるが、それは百種類の商品が売り場からなくなっているということでもある。
 「だからこそ基本を徹底しなければいけないし、変化に対応しなければいけない。同じ仕事の仕方をしていてはいけないということが染みついている」。そのセブン-イレブンの基本に徹した変化への対応が『セブンドリーム・ドットコム』にも生かされようとしている。


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