特集 1999.10/vol.2-No.7

新聞広告の心理的効果を探る
 

セイバー分析

テレビ広告と同じテーストの新聞広告のケース

 分析の枠組みとして採用したセイバーへの関与度の高低と接触メディアで調査対象者を四分すると各グループは以下のようになった。高関与/新聞・テレビ接触者(n=8、「高・複」と略す)、高関与/テレビのみ接触者(n=10、「高・テ」)、低関与/新聞・テレビ接触者(n=20、「低・複」)、低関与/テレビのみ接触者(n=11、「低・テ」)の四セルである(※3)
 特にセーバーの高関与者が少ないため、統計的な分析はほとんど行えないので、簡単に傾向を述べる。

※3 関与は事前質問で「セイバーについて興味や関心を持っている」で「非常に当てはまる」「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人を高関与、「あまり当てはまらない」「当てはまらない」「全く当てはまらない」という人を低関与とした(「どちらともいえない」は抜いた)。

■実験に使用した新聞広告
■ホンダ セイバー15段新聞広告 ■テレビCF 15秒
ホンダ紙面 テレビCF1
テレビCF2
テレビCF3

■セイバーのサンプル数
高・複 高・テ 低・複 低・テ
8 10 20 11

1)再生知名
 「テレビのみ」の方が、関与にかかわらず再生の結果はよい。これは、スパシオと同様の傾向で、記憶の顕出性だけをとらえればテレビの回数による単純接触効果が大きいからとみられる。

●セイバー再生(5分以内)(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
37.5 40.4 35.0 54.5

2)知識にかかわる項目

 再生、メーカー名再生、価格認知、キャッチフレーズ認知などのデータから特定の傾向を見いだすのは困難である。

●セイバー再生(メーカー正答)(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
62.5 60.0 80.0 63.6

●セイバー価格認知(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
25.9 17.3 17.2 15.1

●セイバー再生(5分以内)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
回答数(件) 3.25 3.00 2.66 2.64
正答率(%) 0.0 40.0 15.0 6.4

3)商品イメージにかかわる項目

 商品イメージについては、一部の項目に関与の影響、接触メディアの影響が見られる。すなわち、「乗り心地」については、高関与者が高く評価しており、この評価についてはメディアの影響が見られない。一方「大きい感じ」「地味」については、テレビのみ接触者よりも複数メディア接触者が高い比率を示しており、新聞が加味されることにより、スケール感やスタイリングがより伝わったのではないかと想像される。

●商品イメージにかかわる項目(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
乗り心地がよい 62.5 60.0 45.0 36.4
走行安定性がよい 37.5 70.0 75.0 54.5
男らしい 37.5 50.5 30.0 36.4
大きい感じ 37.5 10.0 55.0 18.2
刺激的な感じ 12.5 30.0 15.0 18.2
室内が広い 0.0 40.0 35.0 18.2
地味 50.0 10.0 45.0 36.4
理性的な感じ 12.5 30.0 15.0 9.1

4)広告接触時の態度(イメージ処理)
 高関与層は低関与層に比べて、明らかに広告接触時に商品を思い浮かべたり使用を「シミュレーション」したりしている。ただし、接触メディアの違いによる顕著な違いは見られない。

●広告接触時の態度 (イメージ処理)(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
商品を思い浮かべる 87.5 100.0 30.0 45.4
使用感を想像できる 75.0 90.0 35.0 36.4
一つのイメージ 50.0 60.0 30.0 9.1
いろいろなことを
イメージ
37.5 20.0 20.0 36.4
細かいところまで
はっきり
37.5 20.0 10.0 18.2
曖昧 87.5 70.0 55.0 45.5
生き生き 37.5 80.0 25.0 54.5

5)事後評価
 低関与層にとっては、メディア接触が「運転意向」を高める効果を発揮しているだけでこれ以外特にない。高関与者に対しては、「購入意向」で新聞・テレビ接触者が幾分高い以外、特にメディア接触による違いは見られない。
 この事後評価については分散分析、共分散分析を用いて統計的検証を行った。

●事後評価(単位は%)
高・複 高・テ 低・複 低・テ
関心度 75.5 90.0 25.0 27.3
(事前) 100.0 100.0 0.0 0.0
好意度 50.0 90.0 10.0 0.0
(事前) 37.5 70.0 5.0 0.0
ふさわしさ 37.5 70.0 5.0 0.0
(事前) 50.0 60.0 0.0 0.0
運転意向 75.0 100.0 45.0 36.4
(事前) 75.0 80.0 20.0 0.0
購入意向 37.5 50.0 5.0 0.0
(事前) 12.5 40.0 0.0 0.0

(1)分散分析
 この分散分析は、媒体の接触タイプ(つまりテレビのみか、テレビと新聞の複合接触か)とブランドへの関与度とどちらがどの程度事後評価に影響を与えているかを分析するものである。詳細はスパシオの分析と同様であるので参照願いたい。その結果を見ると、関与度が関心から購入意向まで関連性があるとされた。これは、元来セイバーへの関与の高低で分けているのでその傾向が好意、意向まで反映しているからと見られる。
 好意度とふさわしさについては関与のほかに媒体接触の影響が出ており、どちらもテレビのみの繰り返し接触の方が高くなっている。これはスパシオと異なり、セイバーの新聞広告表現がテレビで訴求しているテーストを補強するタイプであり、この点だけをとらえればテレビでも十分伝えられるからとも考えられる。 

●分散分析表
媒体の効果 関与度の効果 媒体と関与度の
交互作用
関心度 ※※
好意度 ※※
ふさわしさ ※※
運転意向 ※※
購入意向 ※※
※※は有意差1%水準、※は5%水準を示す。

(2)共分散分析

 本調査ではテストグループ(複合メディア接触グループ)とコントロールグループ(テレビのみ接触グループ)の事前の評価が異なるため、この事前評価の差異も組み込んだ形で共分散分析を行った。
 その結果、媒体×関与度の効果に有意差が見られたが、四水準間の下位検定(多重比較)では有意差は見られなかった。つまり事前値の違いを考慮すると、統計的な差異が四水準(高・複、高・テ、低・複、低・テ)では見られなかったということである。

6)広告認知反応について(自然言語解析による)
 サンプル数の関係で複合グループとテレビのみグループの対比となっている。発言内容量、使用単語には違いが見られないが、発言内容を意味分析すると新聞・テレビグループの方が多く、情報処理が深く行われたため、多様な発言からなることがわかる。

●発言数の比較

複合

テレビのみ

発言量 3280byte 4145byte
使われている単語数 213語 213語
発言内容のグルーピング数 16グループ 14グループ

●各グループの主要単語
<DE-FACTOによる発言分析(「商品の特徴」についての自由回答)>
[新聞・テレビグループ] [テレビのみグループ]
C-01 山道 峠道 外国 ヨーロッパ 上空 撮影 走る C-01 なし 興味 自然
C-02 橋 つる 走行 似る シーン 走る メーカー 入り口 セミオートマチック 大きな C-02 チェンジ ギア 橋 シーン シフトレバー 入る 走り抜ける ドライバー 走る
C-03 ピアノ 走る ワインディグロード 荒野 荒々しい 橋 盤面 セイバー シーン C-03 山道 トンネル 外国 走らす シーン 車 ワインディングロード 海 アメリカ 部屋
C-04 道路 広い スムーズ 場所 走り抜け チェンジ ギア バー アルミ 爽快 C-04 ない 良く イメージ かっこ 残る カッコイイ アピール 走る 都心 大人
C-05 海 走らす 快適 回る 一本 道 C-05 高速 道 山間 感じ 走る 山岳 ジャズメン オーバーラップ 落ち着く セダン
C-06 所 っぽい 高級 アメリカ 車 受ける シーン ない 良く 等 C-06 場面 セイバー 走行 変える 上がる 音 エンジン 楽器 タコメーター 訴える
C-07 トンネル 感じ 全体 暗い CM 始まる 見下ろす 下 アングル 橋 C-07 峠 橋 良い 街中 デザイン ピアノ 車
C-08 広告 印象 薄い 残り テレビ にくい 白黒 新聞 イメージ 半分 C-08 きれい 心地 受ける インパクト よさそうな 出る 軽快 デザイン 感じ トンネル
C-09 人 TV 楽器 ジャズ 新聞 一緒 車 橋 重なる ミュージシャン C-09 大 感じ 都会 強調 ムード クルマ アメリカ 自然
C-10 記憶 解る ない 残る はいる さほど 様子 少し チェンジ ギア C-10 覚え 抜け出す 事 運転 車 重厚 精悍 疾走 沿う 感じ
C-11 ない 目立つ 浮かぶ C-11 写る 全体 鍵盤 変わる 画 後ろ シフトノブ ピアノ 平原 シフトギア
C-12 出る 最後 ロゴ ホンダプリモ 抜く 海岸線 マーク ホンダ シフト シーン C-12 スピード 音楽 高原 トランペット ものすごい 鍵盤 メーター 軽快 バック
C-13 場面 山 写真 車内 載る 道 舗装 きちんと 操作 砂漠
C-14 道 速い 海沿い 横 走る 撮る 車 長い 前方 前
C-15 海外 夕方 ワインディングロード シルバー 覚え 都市 通り 自然 美しい
C-16 スピード 流れる とても 展開 画面 クイック 背景 広告

結論

豊かなイメージ反応を引き起こす複合効果

  今回の調査で、スパシオ、セイバーの両方に共通した結論は引き出せなかった。その理由として、(1)セイバーの関与度が低くサンプル数が不十分だったため、またスパシオのサンプル数も決して多くはなく、統計的に有意な結論を見いだすのは困難だった。(2)セイバーの広告表現はテレビ広告の一カットを新聞に取り入れたテーストを重視した広告のため、今回の知識形成という視点から十分その効果を見いだせなかったことによる。
 このように広告効果を認知心理学的に厳密にとらえる場合表現の影響は無視できない。
  スパシオを中心にメディア接触、関与の効果を見ると以下の通りである。
 (1)高関与者については、テレビに新聞を加味することによってキャッチフレーズ認知といった知識形成、新発売認知の指標である「新しさ」イメージ、関心の高い商品のスタイルへの興味を満たす「スタイルの良い」イメージなど理性的な中枢処理が行われていることが明確である。
 これは、広告接触時のイメージ処理の回答からも裏付けられる。高関与者が広告を見ている時の態度は新聞・テレビの両メディア接触者の方が、「使用感の想像」「いろいろなイメージ」「生き生きとしたイメージ」などと関与の高い情報処理がされていることを裏付ける反応が高い。
 要約すると、属性の詳細情報の学習と増幅されたイメージがブランドへの好意的な態度を形成する。精緻化見込みモデル(※4)の考え方に沿えば、このようにメッセージが精緻化された場合の態度はより持続的であり、購買行動への影響度も相対的に大きいと思われる。これに対してテレビだけの場合は、繰り返しによるブランドネームの顕出性(つまり思い出されやすさ)は高まるもののそれ以上の深い処理はされないという結果である。このような単純な認知的反応のみを基盤とする態度の持続性や購買行動への影響は少ないと思われる。
 (2)低関与者についても知識形成の指標となるキャッチ認知等は新聞、テレビの両方にふれた方が高い。しかし、商品イメージや広告接触時の態度で見る限りテレビ接触者とそれほど変わらず、周辺的な処理では必ずしも新聞を加味した効果は見られない。また顕出性の指標であるブランド再生についてはこの場合もテレビのみの方が高い。
 (3)関与を問わずにメディア接触の効果を全般的にみれば、メディアシナジーによる知識形成効果はDE-FACTOの分析結果からも含め全般を通じていえる。
 今回の調査から十分な裏付けはないが、テレビ広告に新聞を加味することによって信頼性やニュース性の付与、ひいては販売店への訪問意向が高まるといった効果も期待できる。

※4 精緻化見込みモデル:ペティとカシオッポ(Petty and Cacioppo、1986)が発表したメッセージの処理のされ方の考え方。受け手が、メッセージを処理する動機があり、さらに処理能力がある場合は、そのメッセージは熱心に処理され、関連する情報を集めて、分析し、態度を形成する。これを「中枢的処理」といっている。それに対して、動機が弱いかまたは処理能力が低いときは、メッセージ中のいくつかの手がかりを処理し、弱い態度を形成する。これを「周辺的処理」という。広告の場合について考えると、パソコンに関心があり良く知っている人は、スペックの細かい広告メッセージを評価しその商品の良し悪しを判断する。これに対して、パソコンに関心がないか、知識が乏しい人はスペックは分からないので、出ているタレントや広告の雰囲気から商品の良し悪しを判断する。

  新聞が深い処理を促す点については今回の調査、および過去の文献から次のようにまとめられる。
 CraikとLockhart(1972)の記憶の「処理水準モデル(※5)」から、深い処理(意味処理)をされた情報の方がそうでない場合よりも記憶によく残ることは明らかである。Craikらの研究は言語学習を対象にしているが、広告研究では言語的反応でもメッセージの単純な再生にとどまらず、推論、支持、反論、自己との関連づけのように、かなり高水準の反応まで想定し、また、視覚的イメージのような反応も含めることができる。
 Keller(1996)は、テレビ広告に印刷媒体が加わることでコミュニケーションの「深さと広さ」が増加すると指摘している。「広さ」については、製品に関する全体的な理解が生まれて、態度形成の基礎となると考えられる。DE-FACTOの分析では、複合メディアのグループの方がテレビのみの場合よりも外観に加えて詳細な製品特徴の記述が多い。
 「深さ」と「広さ」に加えて、「言語的・分析的処理に限定されない豊かなイメージ反応」も複合効果の一つといえる。

※5 処理水準モデル:人々が情報を処理するときの深さを処理水準という。処理の深さとは、その情報の意味やイメージを精緻に理解しようと努める程度をいう。関心のある広告に対して人々は関心を持ち記憶にとどめようと努力する。このような場合を処理が深い(処理水準が高い)という。

課題

キャンペーンの狙いに沿った効果尺度の開発を

 今回の調査結果を見ると以下の点が課題となる。
 (1)テレビと新聞の複合効果といったときに、それぞれの表現のあり方、つまりリンクの仕方によって効果も異なる。旧来から言われている統一したコンセプトに沿って「理性訴求の新聞、イメージ訴求のテレビ」の場合、想定した仮説に沿った効果は検証されるが、両者がトーンや商品のテーストを重視した表現などの場合、現在の分析フレームでは効果が見えにくい。
 そもそも広告目標に沿ってキャンペーンで使うメディアの役割が決まるわけであり、各キャンペーンの狙いに沿って効果尺度を考える必要がある。
 (2)商品関与によって情報処理はかなり影響を受けるため、メディア効果の調査設計を十分慎重に行う必要がある。
 (3)今回の調査は短時間の集中露出による効果把握であり、長期効果を見るためには今後の方法論開発が待たれる。



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