特集 1999.9/vol.2-No.5

新聞とテレビのシナジー効果
新聞広告とテレビCFの相乗効果 ー自動車広告による実験調査リポートー 読売新聞社広告局マーケティング部
 
●はじめに

 多くの広告キャンペーンは複数のメディアを使って多重的に消費者に伝達される。メディア単体ごとに広告効果を論じていては、実際に展開されるキャンペーン目的にかなうメディアミックスであるかを見誤る恐れもある。それぞれのメディアが持つ広告情報伝達機能を明らかにし、効果的なメディア計画を立案するためのデータ開発を試みる第一歩として、読売新聞社と電通は共同して、「新聞広告とテレビCFの相乗効果」の実験調査を実施した。
 具体的には、「新聞広告+テレビCF」という複合的な広告刺激を受けることによって、「認知(ブランド知名)」「ブランド理解」「イメージ喚起力(処理)」「態度変容」に至るまでの情報処理プロセスという心理変容過程の中のどの部分に特に高い効果を発揮するかを、「テレビCFのみ」から受ける効果と比較検討し、効果の違いを仮説(後述)に基づいて検証した。
 調査は「テレビCFのみ」に接するグループ(テレビグループ)と「新聞広告+テレビCF」に接するグループ(重複グループ)とに分けて心理変容過程を追った(実験調査の概要は十七ページ以降の「調査概要」参照)。この両グループの違いは、「新聞広告十五段とテレビCF二回に接触した」点と、「テレビCFのみに四回接触した」という点である(表1参照)

表1 与えられた広告刺激の種類
テレビCF 新聞広告
重複グループ 2 回 あり(15段)
テレビグループ 4 回 なし

 もちろん、今回の調査だけですべてを解明することは不可能である。また、数少ない実験素材(広告作品=新聞広告、テレビCF)では、クリエーティブ要因などの差異による結果の変動も大きく、対象となる商品それ自体に対する調査対象者の関心・関与度の違いも考慮に入れる必要があり、同種の実験データを数多く蓄積していかなければ、普遍化したデータとは言い難い。
 また、実験条件の差として表れる新聞広告十五段とテレビCF二回分の効果を比較しているものではない。従って新聞広告十五段がテレビCF二回に充当するという意味ではない。加えて実験(集合室)調査の性格上、テレビ番組(CF)は他の刺激を排除した形で強制的に視聴させている点を考慮する必要もある。日常的なテレビ視聴とは環境が異なることも事実である。

■グループの定義


●文章、表組みの中にある
」「T」「C」の意味
」= 重複グループ全体
「T」 = 重複グループの中でも新聞広告を再認できたいわゆる「真のテストグループ」
「C」 = テレビグループ全体
●仮説と検証

 調査設計時の仮説は、「テレビCFのみの広告接触よりも、新聞広告+テレビCFの重複接触の方が、情報処理においてより深い広告効果が得られる」とした。
 具体的には、テレビCFの接触だけで効果が上がるのはブランド知名、イメージ喚起力(処理)であり、これに新聞広告の接触が加わることで、広告内容想起とブランド理解(知識)および態度変容の効果が上がると考えた(表2参照)
 結果として仮説と反したものは、「テレビCFのみ」で「イメージ喚起力(処理)」は効果があると立てた仮説が、今回の実験結果では思ったほどのスコアを得ることが出来ず、「○→△」(表2参照)となった点である。その他のポイントについてはおおむね仮説を立証できる結果を得た。

表2 仮説と結果(○=十分効果あり、△=効果不十分)
テレビCFのみ テレビCF+新聞広告
(仮説) (結果) (仮説) (結果)
1.ブランド知名
2.ブランド理解(知識)
3.イメージ喚起力(処理)
4.態度変容
※色のついた部分が仮説と違った結論となった

●分析の視点

 今回の調査目的は、テレビCFだけに接した人と新聞広告とテレビCFの両方に接した人との心理変容の差を見ることである。従って本調査結果報告は、重複グループ()の中で広告接触後の調査で、新聞広告をはっきりと再認できた回答者(真の重複グループ=T)だけを取り出してテレビグループ(C)と比較した。
 また、自動車広告に対する反応という一般的な調査結果記録の意味で、二つのブランドの平均をとC(ともにN=74)に分けて〈参考〉として記した。

●調査結果

1. 認知(ブランド知名)効果

 広告刺激を受けることによる商品認知に関しては、「ブランド知名」を取り上げ、刺激提示後のブランド名の再認(助成想起)スコアで比較した。 
 二つのブランドの再認スコアは、若干Tが高いものの、両グループすべてで九割を超える結果(表3参照)となった。仮説において、「事後の両グループのスコアは等しい」と設定したが、結果も仮説を大きく覆すものではなく、広告刺激によるブランド知名の効果は、両グループにおいて余り差はないという結果となった。

表3 車名(ブランド名)再認の割合 (単位:%)
事前(参考) 事後
スパシオ T(n=44) 93.2 100.0
C(N=74) 97.3 98.6
セイバー T(n=40) 47.5 97.5
C(N=74) 32.4 90.5
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 69.6 96.6
C(N=74) 64.9 94.6
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

 一方、再生(純粋想起)スコアは、広告刺激の前後でたずねており、単純比較が可能である(表4参照)。「セイバー」に関しては、事前の再生スコアが両グループとも「ゼロ」で、事後スコアだけで比較するとTのスコアが高い結果となった。反対に「スパシオ」は事前と事後の上昇幅はCの方が高かった。

表4 車名(ブランド名)再生の割合

事前(%)

事後(%)

スパシオ

T(n=44)

9.1

72.7

63.6

C(N=74)

2.7

78.4

75.7

セイバー

T(n=40)

0.0

60.0

60.0

C(N=74)

0.0

54.1

54.1

<参考>
※両ブランドの平均

(N=74)

2.7

66.9

64.2

C(N=74)

1.4

66.2

64.8

※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

 事後の再生スコアがかなり高い水準で現出した点については、実験室調査という手法上、関心領域の形成が容易にできてしまうことと、調査票効果が考えられる。

2. ブランド理解(知識)効果

 ブランド理解(知識)は、広告メッセージからどのような知識を得たかということの指標の一つとして、「キャッチフレーズ」の理解度を測定した。キャッチフレーズは、新聞広告、テレビCFに共通して提示されている情報であるからだ。また、広告刺激からどのような知識が形成されたかという反応の総量(平均回答数)についても比較した(表5参照)

表5 キャッチフレーズの正答率と平均回答数(事後)

正答率(%)

平均回答数
(件)※※

スパシオ

T(n=44)

25.0

2.52

C(N=74)

14.9

1.76

セイバー

T(n=40)

25.0

2.80

C(N=74)

28.4

2.69

<参考>
※両ブランドの平均

(N=74)

21.6

2.52

C(N=74)

21.6

2.08

※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの
※※この設問に回答した総数を、N数で割った値

[1]正答率

  二つのブランドで反対の結果となった。「スパシオ『カタチがきいてる』」に関しては、Tの正答率がCより10.1ポイント高い。正答率としては第五位と決して高いスコアではないが、回答上位三つの選択肢にはすべて「かたち」というワードが入った答えがランクインしており、正答を含めた四項目のうち三項目まででTがCを上回っている。両グループ間の比較は、Tの方が「かたち」というキーワードがより正確に伝わっていることが確認できる(表6参照)

表6 キャッチフレーズ認知(事後) (単位:%)
スパシオ 新しい
かたち
気になる
かたち
かたちの
発見
刺激の
ある生活
カタチが
きいている
カタチの
きもち
T(n=44) 50.0 38.6 20.5 8.2 25.0 15.9
C(N=74) 35.1 28.4 12.2 6.8 14.9 6.8
新しい
刺激
スパイス
ライフ
ひとにやさ
しいかたち
刺激の
あるかたち
わからない 平均回答数
  (件)
T(n=44) 11.4 25.0 36.4 11.4 0.0 2.52
C(N=74) 4.1 28.4 36.5 2.7 0.0 1.76
セイバー グルービン 走る喜び フィーリング クルージング 走りのジャズ
セッション
大人の走り
T(n=40) 25.0 52.5 17.5 22.5 27.5 47.5
C(N=74) 28.4 31.1 4.1 17.6 33.8 52.7
走りがきい
ている
奏でる走り スタイリッ
シュな走り
ストレートな
フィーリング
わからない 平均回答数
  (件)
T(n=40) 15.0 25.0 40.0 7.5 0.0 2.80
C(N=74) 17.6 31.1 32.4 20.3 4.1 2.69

 「セイバー『グルービン』」は、スパシオとは逆にCの正答率がTを3.4ポイント上回った。新聞広告では『GROOVIN'』と英語で表記してあった点、テレビCFでは音声でそのまま発音されているという、クリエーティブ要因からの影響を考慮して判断する必要がある。

[2]平均回答数

 スパシオ、セイバーともにテレビCFのみから受ける広告刺激と新聞広告を組み合わせることによる重複刺激では、重複刺激を受けたグループの回答数が多いという結果が出た(表6・平均回答数参照)
 二つのブランドに対して調査票に記した十のコピーは、どれも当該ブランドを表現する言葉として不適切なものではなく、新聞広告、テレビCFのいずれからも導き出せる言葉である。平均回答数も正答率と同様、ブランド理解(知識)の一つの指標とみなすことができるとすれば、Cの平均回答数が両ブランドともに少なかったという事実は、ブランドの知識がTほど言語化されて記憶に残っていないと考えられる。
 このように、用意したキャッチフレーズを正しく記憶しているか、関連したブランド知識が形成されたかという二点を総合して判断すると、ブランド理解(知識)の効果に関しては、「新聞広告+テレビCF」の重複刺激の方に高い効果を認めることができる。

(付記)価格認知状況

 全くの同条件比較ではないので、ここでは「付記」にとどめるが、ブランド理解(知識)の指標の一つとして、「価格認知状況」も調べた(表7参照)

表7 価格認知状況(事後) (単位:%)
スパシオ 99万円
以下
100〜
119万円
120〜
129万円
130〜
139万円
140〜
149万円
150〜
159万円
最低価格
認知状況
T(n=44) 13.6 20.5 18.2 22.7 9.1 4.5
C(N=74) 13.5 21.6 17.6 17.6 4.1 9.5
最高価格
認知状況
T(n=44) 2.3 0.0 9.1 11.4 2.3 20.5
C(N=74) 2.7 4.1 8.1 10.8 9.5 23.0
160〜
169万円
170〜
179万円
180〜
199万円
200万円
以上
不明
最低価格
認知状況
T(n=44)
6.8 0.0 0.0 4.5 0.0
C(N=74) 1.4 1.4 1.4 4.1 8.1
最高価格
認知状況
T(n=44) 11.4 6.8 13.6 18.2 4.5
C(N=74) 10.8 1.4 9.5 13.5 6.8
セイバー 199万円
以下
200〜
239万円
240〜
259万円
260〜
279万円
280〜
299万円
300〜
319万円
最低価格
認知状況
T(n=40) 37.5 20.0 22.5 10.0 0.0 0.0
C(N=74) 32.4 33.8 16.2 0.0 2.7 1.4
最高価格
認知状況
T(n=40) 10.0 17.5 15.0 2.5 10.0 10.0
C(N=74) 9.5 20.3 6.8 1.4 9.5 21.6
320〜
339万円
340〜
359万円
360〜
379万円
380万円
以上
不明
最低価格
認知状況
T(n=40) 0.0 2.5 0.0 0.0 7.5
C(N=74) 0.0 0.0 0.0 1.4 12.2
最高価格
認知状況
T(n=40) 12.5 10.0 2.5 2.5 7.5
C(N=74) 1.4 13.5 0.0 4.1 12.2
いずれも網の部分が正答

 二つの車の最低と最高価格を自由回答形式で記入させたもので、集計は表7のような単位でまとめた。最低価格、最高価格ともにTの認知が圧倒的に高く、また「不明」の割合もTの方が少ない結果となった。
 車という比較的高額商品を購入する際に、価格はかなり大きな判断材料になると考えるのが一般的である。ブランド理解を促進するための伝達手段として、新聞広告を組み合わせることによる効果は大きいと判断できる。

3. イメージ喚起力(処理)効果

イメージ喚起力(処理)について、広告刺激提示後の平均回答数と、イメージ反応の測定尺度のスコアの一部を用いて両グループで比較した(表8参照)

表8 それぞれのブランドに対するイメージへの反応(事後)
平均回答数
(件)※※
いろんなことをイメージした
肯定 計(%) 否定 計(%)
スパシオ T(n=44) 7.57 50.0 38.6
C(N=74) 6.73 35.1 41.9
セイバー T(n=40) 6.18 32.5 42.5
C(N=74) 5.46 27.0 40.5
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 6.57 32.4 43.2
C(N=74) 6.09 31.1 41.2
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの
※※この設問に回答した総数を、N数で割った値

[1]平均回答数

 比較したのは、それぞれのブランドに対するイメージの反応の総量(平均回答数)である。二つのブランドともにTの方が、Cよりも平均回答数が多いことから、豊かなイメージが喚起されているという結果となった。イメージの広がりという点では仮説に反して、新聞広告にも接触したグループの方が、高い効果を得ることができると言える。

[2]イメージ反応の測定尺度

 前記の結果を裏付けるために、広告から連想したイメージについても考察した。Babin and Burns(1998)によるコミュニケーションへのイメージ反応の測定尺度に基づき、イメージの「精緻(せいち)さ」、「量」、および「鮮明さ」の三次元について測定した設問の一つである(注)

(注)(出典)Babin, L. A. and A. C. Burns, A Modified Scale for the Measurement of Communication-Evoked Mental Imagery,Psychology and Marketing, Vol. 15(3), 1998, pp. 261-278

 広告から連想したイメージとして「いろんなことをイメージしたか」という「量」の測定尺度の設問(SD法による七段階の回答)を取り上げた。
 結果として、肯定的な回答(「非常に当てはまる」+「当てはまる」+「やや当てはまる」の合計値)が否定的な回答(「まったく当てはまらない」+「当てはまらない」+「あまり当てはまらない」の合計値)を上回ったのはスパシオのTだけだが、セイバーに関しても肯定計の比較ではTがCを上回っている。スパシオに関してはかなり明確に「新聞広告+テレビCF」の効果が実証されたが、セイバーについても同様の傾向が読みとれると言える。
 イメージ処理の差を考察するに当たっては、広告情報の差という点が最も大きく影響することは当然であろう。当該商品の特性を広告情報によってどれだけ伝達できるかという、コンセプトワークやクリエーティブ要因による影響が大である。もう一つは、この広告情報を伝える手段としてのメディアの特性ということである。次から次へと様々な商品情報が視聴者にとって受動的に伝達されるテレビCFと、関心・関与度の高い商品については読者が繰り返し能動的に閲読することが可能な新聞広告というメディアの差、つまりメディア接触実態の違いも、この点に関するスコアの差になって表れたと考えられる。

4. 態度変容効果

 態度変容効果については、「興味・関心度」「好意度」「適合度」「運転意向度」「購入意向度」の五つのポイントについて、広告刺激の前後でそれぞれ同様の質問をし、肯定的な回答(前問と同様に三つのカテゴリーを足しあげた数値)の変化で測定した。
 なお、事前質問において、商品の「名前を知らない」と答えた人の割合(全体)は、スパシオ4.7%、セイバー60.8%と大きく異なっている。

[1]興味・関心度 設問:〜について、興味・関心を持っている(表9参照)

 スパシオではTの肯定計は45.5%(事前)から59.1%(事後)へと13.6ポイント上昇したのに対し、Cは4.0ポイント(31.1%→35.1%)の上昇にとどまり、実測数値、上昇ポイントともにTの方が高いスコアとなった。セイバーに関してもTは15.0%(事前)から52.5%(事後)へと37.5ポイント上昇しているのに対し、Cでは29.7ポイント(13.5%→43.2%)と数値の違いはあるが、スパシオと同じ傾向を示している。
 態度変容の第一ステップとも言える「興味・関心度」に関して、「新聞広告+テレビCF」の組み合わせによる広告刺激の方が、「テレビCFのみ」の広告刺激より効果的である。

表9 興味・関心度
事前、肯定 計
(%)
事後、肯定 計
(%)
スパシオ T(n=44) 45.5 59.1 13.6
C(N=74) 31.1 35.1 4.0
セイバー T(n=40) 15.0 52.5 37.5
C(N=74) 13.5 43.2 29.7
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 23.6 42.6 19.0
C(N=74) 22.3 39.2 16.9
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

[2]好意度 設問:〜のことが好きだ(表10参照)

 広告情報に接することによって形成される好意度はそれ以降の態度変容に大きな意味を持つことになる。
 スパシオに対する好意度は、Tでは9.1ポイント(38.6%→47.7%)上昇し、Cにおいては8.1ポイント(20.3%→28.4%)上昇した。セイバーの場合、Tは37.5ポイント(2.5%→40.0%)の上昇に対し、Cは24.3ポイント(9.5%→33.8%)となり上昇幅は違うもののいずれもTの方が好結果を得ていることがわかる。
 好意度の形成という効果も、「新聞広告+テレビCF」の組み合わせによる情報伝達のほうが有効である。

表10 好意度
事前、肯定 計
(%)
事後、肯定 計
(%)
スパシオ T(n=44) 38.6 47.7 9.1
C(N=74) 20.3 28.4 8.1
セイバー T(n=40) 2.5 40.0 37.5
C(N=74) 9.5 33.8 24.3
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 16.9 35.1 18.2
C(N=74) 14.9 31.1 16.2
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

[3]適合度 設問:〜は自分に合っている(表11参照)

 適合度(広告商品が自分に合っていると思う度合い)については、スパシオとセイバーでは、反対の結果となった。スパシオは、前後の差異はどちらも負の値となり、Cの方がその差は小さかった。一方、セイバーは、前後の差異はTの方が高いスコアの結果を得た。
 この項目においては、「新聞広告+テレビCF」と「テレビCFのみ」で比べた場合、どちらの方が効果が高いかを結論づけることは難しい。
 実験室調査という短時間の広告接触において、その商品が自分に合っているか否か(適合度)という態度変容が生じることは考えにくい点と、スパシオとセイバーの事前適合度の大きな差から生じる事後データの数値を比較すると、この結果から一概に効果の優劣を論じることは難しい(「結果に対する留意点」(後述)参照)
 事前の認知(肯定計)が極端に高いスパシオのTにおいては、新聞広告で情報を確認した結果として情報処理が進み、自分にとっての判断がより明確になったと解釈することもできる。

表11 適合度
事前、肯定 計
(%)
事後、肯定 計
(%)
スパシオ T(n=44) 36.4 27.3 -9.1
C(N=74) 10.8 9.5 -1.3
セイバー T(n=40) 7.5 20.0 12.5
C(N=74) 9.5 18.9 9.4
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 15.5 20.3 4.8
C(N=74) 10.2 14.2 4.0
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

[4]運転意向度 設問:〜に乗ってみたい(表12参照)

 スパシオでは、前後の差異はCのスコアが高い結果を得た。一方、セイバーでは、前後の差異はスパシオに比べて大きかったものの両グループの差はほとんどなかった。
 この項目においても、「新聞広告+テレビCF」と「テレビCFのみ」を比べてどちらの効果が高いかを結論づけることは難しい。
 スパシオのTの場合、前後の差が小さいという結果が出たのは、適合度と同様に、事前において既に運転意向度のスコアが高かったためで、これが広告接触後の増加幅が少ないという結果となったと思われる。

表12 運転意向度
事前、肯定 計
(%)
事後、肯定 計
(%)
スパシオ T(n=44) 47.7 52.3 4.6
C(N=74) 28.4 37.8 9.4
セイバー T(n=40) 17.5 60.0 42.5
C(N=74) 13.5 55.4 41.9
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 27.7 48.0 20.3
C(N=74) 21.0 46.6 25.6
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

[5]購入意向度 設問:〜を購入したい(表13参照)

 スパシオに対する購入意向度は、Tの場合22.7%(事前)から27.3%(事後)へと4.6ポイント上昇した。セイバーの場合、事前の肯定計が低スコアということもあり、15.0ポイント上昇しているが、傾向は同一である。 
 一方、Cはスパシオの場合はほとんど変化がなく、セイバーも10.8ポイント上昇でTの三分の二程度であった。
 購入意向におよぼす効果は、広告効果の一連の流れの中でも最も期待される効果であり、「新聞広告+テレビCF」の組み合わせによって伝えられる広告情報の方が高い効果があることを示している。

表13 購入意向度
事前、肯定 計
(%)
事後、肯定 計
(%)
スパシオ T(n=44) 22.7 27.3 4.6
C(N=74) 12.2 10.8 -1.4
セイバー T(n=40) 2.5 17.5 15.0
C(N=74) 5.4 16.2 10.8
<参考>
※両ブランドの平均
(N=74) 8.1 17.6 9.5
C(N=74) 8.8 13.5 4.7
※両ブランドの平均は、ブランド別のスコアを平均したもの

5. 調査結果のまとめ

 広告は、企業のマーケティング活動の中で消費者に対する重要なコミュニケーション活動の一つである。
 広告効果には「広告表現効果」と「媒体効果」の二つの側面があり、それは車の両輪に例えられる。表現面の効果はその広告自体にどの程度の注目・説得効果があるかということであり、媒体効果とは使用媒体に対する広告の投下量などによって消費者にどの程度の広がりや深さで到達したかという点と、各媒体が持っている各々の特性と消費者の媒体に対する信頼度や質的な利便性の影響が大きいと考えられている。
 さらに、これら一般的に考えられている広告効果と受け手である消費者の当該商品(企業)に対する関心(関与)度の高低によって、個々の広告効果を検証していかなければならない。
 「はじめに」でも記したとおり、今回一回だけの調査ですべてを語ることはできないが、一つの傾向を読み取ることは可能だと思われる。「認知(ブランド知名)」「ブランド理解」「イメージ喚起力(処理)」「態度変容」に至るまでの情報処理プロセスという心理変容過程の中で、「新聞広告+テレビCF」という組み合わせの情報刺激の方が、「テレビCFのみ」で受ける情報刺激よりも高い効果を発揮するということである。
 調査は「テレビCFのみ」に接するグループ(C)と「新聞広告+テレビCF」に接するグループ(T)とに分けて心理変容過程を追っていったわけだが、「ブランド理解」「イメージ喚起力」のポイントで、「新聞広告+テレビCF」の方が効果が高いことが実証され、「態度変容」レベルの中でも「興味・関心度の喚起」や「好意度の形成」については同様の結果が検証された。
 残念ながら「適合度の判断材料として」と「運転意向への誘導」に関しては、個々の商品の差異や広告情報(クリエーティブ要因を含む)の違いなども影響し、明確な結論を導き出すには至らなかったが、広告効果として最も価値が高いと考えられる「購入意向の意思形成」には「新聞広告+テレビCF」の組み合わせの方が高い効果が期待できるという結論を得た。

結果に対する留意点

 本調査のフレームは、(Tを含む=以下同じ)とCとの間で広告刺激の提示前と提示後で比較できるものはそれを比較すること。もう一つは、とCで提示後のみのスコアを比較することで、提示する広告刺激の効果の差異を検討するものであった。このため広告刺激の提示前のスコアは、いずれにおいてもとCとの間にあまり差がないことを前提として設計した。
 しかし、事前調査の結果、次の項目において、とCとの間の差が大きく、それが解釈を困難にしている(表14、15、16参照)

表14 車に対する両グループの事前スコア比較
再生ブランド数 関心度(%) 関心度(平均)
(N=74) 15.74 86.5 5.82
T(n=44) 16.05 88.6 6.00
C(N=74) 14.74 81.1 5.43

表15 スパシオの両グループの事前スコア比較 (単位:%)
興味・
関心度
好意度 適合度 運転
意向度
購入
意向度
(N=74) 36.5 28.4 24.3 37.8 14.9
T(n=44) 45.5 38.6 36.4 47.7 22.7
C(N=74) 31.1 20.3 10.8 28.4 12.2

表16 セイバーの両グループの事前スコア比較 (単位:%)
興味・
関心度
好意度 適合度 運転
意向度
購入
意向度
(N=74) 10.8 5.4 6.8 17.6 1.4
T(n=44) 15.0 2.5 7.5 17.5 2.5
C(N=74) 13.5 9.5 9.5 13.5 5.4

 クルマという商品そのものに対する興味・関心や、関与においては、のスコアが全般的に高い。個々商品別では「スパシオ」の場合、「興味・関心度」「好意度」「適合度」「運転意向度」「購入意向度」のいずれにおいても、のスコアが高い結果となった。逆に「セイバー」では「運転意向度」以外の項目ではCのスコアが高い結果となった。
 当然ではあるが、とCの対象者割り当ては、実施会場において無作為に割り当てたものである。つまり、本来なら、ここで取り上げたスコアについて、これだけの差が生じることは想定しておらず、解釈にあたっては(1)事前、事後のスコア変化を「増分」とし、これを効果と解釈する場合、(2)元々のサンプルが持つ商品や広告に対する関与の違いによって結果が異なってくる点を考慮しなければならない。
(清積)
(→調査概要へ
 次号のojo誌上(10月号)では、新聞とテレビの広告相乗効果を認知心理学的な視点から、東京経済大学の岸志津江教授が、商品関与度の高低と接触メディア別に調査対象者を4分割して、それぞれのグループの相乗効果の差異について報告する。




(→広告効果と新聞広告の役割
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