特集 1999.8/vol.2-No.5

ここまできたデジタル送稿
河北新報社
 新聞広告に関する業務の電子化に向けて現在最も進んでいるのが、河北新報社である。
 同社のシステムは、広告のオーダーから紙面取り(割り付け)、原稿の受け渡し、入力、紙面掲載、売り上げ管理、各種データベースの管理、広告会社に対するデータのサポートを一連の流れの中に取り込んでいる。
 これはあくまで「業務改革」であると同社は言う。現状の作業をただコンピューターに置き換えたのではなく、広告局全体の作業を局間を超えた部分まで洗い出し、徹底的に調査し、複数にまたがる作業を一つの工程に置き換え、シミュレーションの後システム化するという手法をとった。このことにより作業の重複がなくなり、結果として大幅な人員削減とスピードアップが図られた。
 さらに同社はこれから到来する電子取引時代への対応と、新聞広告の生き残りのためには業界全体の共同歩調が欠かせないという観点から、そのノウハウやソフトを同業他社にも積極的に提供している。
 河北新報社の広告システムの概要と構築までの流れを同社広告局長佐藤邦夫氏、内務部長森喜博氏と副部長の蜂谷広司氏に聞いた。
 
業務電子化に十年前から着手

パソコン
 河北新報社が広告業務の電子化の開発に着手したのは一九九〇年、翌年にはKIDSと名付けられた「広告ファクスオーダリングシステム」がスタート。ファクスで送られた掲載申し込みの手書き文字は文字認識装置(CRU)でコンピューターで扱える数字、カナに変換され、そのデータを基に、あらかじめ蓄積されているマスターデータベースから、広告主名、広告種別などが補完入力され、掲載料金が算出される。
 引き続き「文字広告システム」の開発に着手、九五年にはパーソナルADの「メッセ(Messe)」が始動、翌年には案内広告、訃報(ふほう)とその他の文字広告の電子入力へと進んだ。並行して九七年には広告会社に売り上げデータを返還する支援システムが稼働、九八年にはOCEAN(画像入力システム)が立ち上がった。この間に同社は「広告業務への電子技術導入による高能率化、省力、省人化の達成」を評価され、「経営・業務部門」で九六(平成八)年度の日本新聞協会賞を受賞している。 広告局完結型のシステムで

 「システム化に当たって一番気をつけなければいけないのは、それが業務改革を成功させるための手法であって、目的ではないということです」と蜂谷副部長は語る。広告局のトップからの指示はさらにもう一つ「媒体だけの利益ではなく、クライアントおよび広告会社の利益も考慮しなければならない」というものだった。当初から広告主、広告会社へのサービス向上、業界全体での共用性を基本に据えた開発を行うという明確なコンセプトのもとに一連の「業革」は進められた。
 同社のシステムの最も大きな特徴はサーバーも備えた「広告局完結型」という点にある。「新聞各社のCTSシステムが作業や人的な面でも変換期を迎えているこの時期に広告局の業務がいつまでもそこに依存していてはいけない、広告の仕事は広告局ですべてやる。CTSの“口”さえ開いていれば、広告局で処理したデータをそこに投げ込めばいい。編集のシステムに変化があっても広告局はデータ管理もすべて自前でやる」(蜂谷氏)という発想は社内事情からだけではなく、将来のEDIも見据えてのことだった。蜂谷氏は振り返ってこう語る。
 「新聞協会の広告電子入力研究会に出席していて考えたのは、広告局の仕事をよそに預けるのはデータの価値観からいうとおかしいんじゃないかということが一つと、将来新聞業界全体で考えるときに、最終的にはデータの標準化、要するにEDI化を考えなければいけないだろう。その時に制作局にEDIのデータの項目を預けることはできないだろう。だったら広告局でデータの管理も含めてやったほうがいいと考えたんです」
 同社のシステムがここからスタートしたと聞けば、申し込みのシステムから開発に着手したこともうなずける。
 森部長は「広告局の作業は複雑な要素が多すぎてシステム化になじまないと思われていますが、しかし、作業の内容を電子化しやすいように改めていく発想も必要だと思います」という。蜂谷氏は当初総務局電算部で広告の売り上げ処理をしていて、日々変化する数字に「広告のシステムにだけには触りたくないと思っていた」そうだが、他社も手をつけていない未開発の分野にいつの間にか引き込まれていった。

同じ作業なら前でさばけ

広告局内 広告申し込みから掲載、売り上げ計上、データベース管理までの流れは次ページの図の通りだが、広告局完結型の利点は、広告原稿が入稿した段階で不備な点をチェックできることだ。これはよそに預けてしまったら絶対にできないという。入ってきた広告の価値を分かっている人間が、これまでは後でやっていた仕事を前でさばくということだ。
 「私は“捌く(さばく)”という言葉がすごく好きで、これは手作業に別れるというふうに考えよう、同じ作業ならできるだけ前でさばけと、この考え方の延長が『広告局完結型』なんです」(蜂谷氏)
 これまではその日の作業をその日にやるのが当然の流れだったが、システムを導入したことにより、状況は一変した。申し込まれたデータがその場で入力、蓄積されるため作業の“平準化”ができ、全部員が仕事の流れを大きくとらえられるようになった。また、細かい手作業も激減した。
 編集と広告のシステムの決定的な違いの一つは広告の場合はオーダーされたものは必ず掲載しなければいけない、さらにお金が絡む、三点目はミスは絶対許されない、四点目は連載や在版の原稿があるということだ。この四点をクリアすることはCTS側では無理だ。CTS側には掲載済みのデータを取り置くという発想はない。同社では広告システムの中に三十八日分のデータを保管してある。だから前月に掲載した原稿を再度という申し込みがあれば、データを呼び出し、ビジュアルで確認して希望の掲載日に送ることもできる。
 「今あるメーンサーバーに外付けのサーバーを取り付けておいて、システムの日付では例えば三十一日なら三十一日間取り置き、これをマイナスした分については外部記憶装置に蓄えればいい」と蜂谷氏は広告の実画像のデータベース化も視野に入れている。
 同社の広告データベースはオーダーが入った時にシステムで振られる十二ケタのナンバーがすべての基礎になっている。広告主別、広告会社別、業種別などコード化したものをナンバーとして振るわけで、いわば背番号ということになる。この番号は掲載日や面が変わっても変化することはない。これが管理データに転用され、今では外務部の営業担当が売り上げデータなどを自分のパソコンから取り出して使っており、広告会社も自社が扱った分に関しては同様のデータを使える。これが広告会社に売り上げデータを返還するシステムだ。

すべてをオンラインに

蜂谷氏 同社の場合、専属の広告会社が仙台市内に四十社、サブの代理店を含めると約百社近くになるが、広告局のシステム化に当たって当初のKIDSシステム導入の際には「何で河北のためにファクスを買わなきゃいけないんだ」、また、文字入力システムが立ち上がった時にも「何でウチがパソコンを……」という抵抗はあったという。しかし、実際に動きはじめてみると、これはいいという評価につながった。そういう過程を経て、記事下、雑報広告をデジタル入力する段階ではほとんど抵抗はなかったという。
 新聞広告の掲載には「場所取り」や「料金交渉」「修正」というどうしても人が関与しなければならない問題が残るが、「それは残ってかまわない“人間系”の部分だと割り切っている」(森部長)。むしろカスタムメードを業界全体で考えるべき時期にきているというのが同社の指摘だ。
 「いつでも、どこからでも、どの機種でも――というのがパソコンがこれだけ普及した時代にシステムを活用する業革の基本コンセプトですから、EDIの標準化も最大公約数を考えてほしいと思っています。各社が個別にオーダーメードをうたい文句にするのではなく、業界全体が共用性を考えるべきです」と蜂谷氏。また、「デジタルやオンラインの取引になった時の一番のメリットはフルカラーだが、品質管理とメンテナンスが非常に大きな問題です。カラーマッチングや校正ゲラの扱いの問題など、これは一つの新聞社が決めるのではなく業界としてコンセンサスがぜひ必要です」とも語る。
 同社は二〇〇一年を目標にOCEANシステムの第二フェーズとして、EDI化、オンライン電子送稿を見据えてすでに動き出している。ここでは原則として持ち込み原稿はなくなり、すべての原稿はデジタルデータとして広告会社、制作会社からのオンライン送信にする予定だという。

河北新報社広告局のデジタル化の歩み
1990 広告業務電子化開始
1991.3 KIDS(広告掲載申し込み自動処理システム稼働)
1992.11 文字広告システム研究着手
1995.4 Messe(パーソナルAD)稼働
1996.2 案内広告稼働
1997.7 代理店支援システム(売り上げデータ返還システム)、PCオーダー稼働
1998.4 OCEAN/Object-Image Composing Electronic Advertisement Network-system(画像入力システム)第1フェーズ稼働
2001.4 OCEAN(画像入力システム)第2フェーズ稼働予定


OCEAN


河北・文字入力システム
 案内広告、訃報・災害広告、情報広場メッセ(パーソナルAD)がパソコンから簡単な操作で入力できるシステム。
 パソコン上にあらかじめ「管理情報入力画面」と「原稿入力画面」を設定し、それぞれはマウス操作とワープロを扱える程度の知識があれば、だれでも入力できる。
(1) 広告会社で入力されたデータは電話回線を通じて、河北新報社の「文字広告電子入力システム」に送信される。
(2) 受信したデータは受け付けサーバーで不正なデータがないかチェックする。
(3) 入力端末からは「管理情報」と「原稿情報」が同時に送信され、受信されると同時に分離する。
(4)-1 「管理情報」データは「広告掲載申し込み自動システムサーバー」に送られ、種別や扱い店を判別し掲載料金を算出する。
(4)-2 「原稿情報」データは「中組みサーバー」に送られ、小組みの体裁になる。
(5) 広告申し込み自動処理システムサーバーで、判別された内容や、掲載料金は、中組みサーバーに送られ、そこで作成された小組み体裁と合成されて「広告申し込み確認票」が作成される。
(6) 「広告申し込み確認票」は送信時に指定されたファクスに返信されるが、広告会社が送信してから確認票を受け取るまでの時間は2〜3分。
(7) 広告会社は、この確認票で掲載日、掲載料、原稿内容、体裁まで確認することができ、修正、訂正があれば締め切り時間までに再度データを送信すると、訂正受け付けの確認票が再度返送される。
 このシステムによって、申し込み翌日の掲載が可能になり、広告量が大幅に増えた。
(メッセ申し込み確認票)
メッセ申し込み確認票




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