特集 1999.1/vol.10

座談会写真 1999新聞広告の課題
広告主座談会

松井広告局長
笹原氏
渡辺氏
小川氏
 
 本誌では昨年十一月中旬、広告主企業の皆さまを対象に新聞のポジショニング、日ごろの広告活動の中での課題、今後のマス広告の役割、利用している広告効果指標など「新聞広告」に関するアンケートを行った。今回の特集では、回答から見えてきた課題について広告主企業の宣伝担当の方々にお話を聞いた。また、アンケート結果についてもまとめた。

 松井 お忙しいところ、おいでいただきましてありがとうございます。本日お集まりいただいたのは、今回の私どものアンケートに寄せられた内容を拝見して、これはもう少し深く意見を伺いたい、我々にもメディアとしての考え方がありますし、それぞれ少しずつ理解を深めていきましょうという趣旨です。
 まず、新聞というメディアはどのようにとらえられているかという点からお聞きしたいのですが、どうぞ、遠慮なくおっしゃってください。その代わりこちらも、こういうことはどうなんだろうということを言わせていただければと思います。
 小川 広告媒体ということだけにとらわれず話をさせていただくなら、個人的には非常に好きな情報媒体であることは間違いありません。しかし、情報ソースと時代のマッチングという点ではまだまだ改良の余地があると思います。マーケティングの発想に立てば、もっとうまくやっていけるようなことが多々あるんじゃないかなというのが偽らざる実感です。新聞の提供する情報と時代のニーズとのミスマッチングが、ちょっと出てきてるかなと感じるところがあります。 
 渡辺 印刷媒体というのは繰り返し読めるもの。そのへんの随意性、繰り返し性。そういうものを非常に重視しています。
 笹原 私個人としては新聞はいろいろなメディアがある中で非常に信頼性の高いメディアであるというふうに思っております。信頼性のほかにも、詳細性、一覧性など新聞はほかのメディアにない特徴を非常に持っている媒体です。

広告活動の中の新聞のポジション

 松井 広告活動の中での新聞のポジションについてはどうお考えですか。
 渡辺 私どもの場合、製品特性からいって、やはり新聞媒体は非常に重要な媒体です。製品がコンピューターですからかなり内容を説明しませんと理解していただけない。新聞広告のあのスペース、それから印刷媒体の繰り返し読めるという特性、そういう点を非常に重要視しています。メディア戦略の中でも中心的なものかなと思います。
 小川 新聞のポジションはあいまいになってきています。同時に、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、四媒体の中でのシェアも、新聞はちょっと低下傾向にあるのかなという状況です。もう少し具体的に言えば、車というのは非常に金額が高いし、代替サイクルも長い。商品の構成要素もいろいろなファクターから成り立っていますので、広告も複合的なコミュニケーションをしているという特徴がある。そうしたさまざまな使い方の中に照らし合わせても、こういうときは必ず新聞ですよという場面がやや減ってきています。かつては、必ず新聞を使っていた局面があったのですが、最近そういうところも、新聞以外の媒体にいってしまっているという部分が出てきています。
 理由もはっきりしていて、やはり私どもが新聞広告を使ったときの効果が非常に見えづらくなってきている、客観的な効果があいまいだということですね。それから、特にテレビとの比較をいろいろ試みているんですけれども、断定するには、量的、レベル的に不十分だが、感覚的な部分でコスト的にもややネガティブな印象を持っています。

トヨタ紙面

 松井 単純なコスト比較ではそういう面があると思うのですが、新聞には総合的にプラスの面もあると思っているんです。プラスの面というのは、新聞記事というものはもっと評価されるべきじゃないかということです。これは自動車業界の方、皆さんに伺いたいことですが、新車が出れば新聞は記事の中に必ず載せているんですね。
 小川 はい。
 松井 ところが、そういうことはもう当然のことだと自動車メーカーの方は考えているのかなと思うんです。仮に、こういう慣習を新聞全紙がやめたとするとどうなるか。やはり読者が「トヨタが新車出したよ」という情報は新聞から得ている割合が非常に大きいんじゃないかなと思う。ところが、新聞が新車発表のニュースを書くことはすでに当たり前になっている。記事として書くことが当たり前だと思われているものだからその点はあまり評価されていない。少なくとも宣伝部にとってはネ。皆さんの宣伝活動は記事掲載の後からの話になっている。その後の段階では、まさにご指摘の点は十分にあると思いますが。
 また、新聞記事には、業界にとって具合の悪い記事も確かにあるけれども、自動車のシェアの話であるとか、あるいはプリウスの環境の問題はこういうことになってるんだよということも書くというプラスの面もある。テレビが報道番組としてトヨタ自動車の性能や業界の良い話題を取り上げるっていうことは、僕はめったにないと思うんですね。ところが、新聞はそういうもんだと思われているものだから、そこが全然評価されてないという点が非常に残念な思いがするんです。
 小川 載せていただいて非常に有り難いという認識はかなりあります。当たり前っていうことでは全くないですね。
 私どもが行った消費者のグループインタビューでも、記者発表のパブリシティー記事を見るという声は出ています。パブリシティー記事でいろいろ知って、それから考えるという声は複数のグループインタビューで出ています。
 松井 そういう結果が出ているのは大変有り難いことです。新車などの認知の突破口を開いているのが新聞なんだと考えた場合に、次の段階では多少テレビのほうがいいということはあるのかもしれないけれども、やはり重視されるべきだと思うのですが。
 小川 最初の即効性の部分ではおっしゃる通りです。しかし、世間一般に対してトヨタの新しい車のイメージまでを一気呵成に広く浸透させるのはやっぱり電波系が得意だろうと思います。私どもが新聞広告で狙っているのは、やはり商品がだいぶ複雑になっていますから、商品を理解してもらうということ、あるいは実際にディーラーへ来てもらうということです。本当に買う気になって考えてもらうことを新聞媒体の機能としては重視しています。
 松井 なるほど。
 小川 それとは別に、新聞を中心に展開しているのが企業広告です。私どもでは環境キャンペーンを「エコプロジェクト・キャンペーン」と称していますが、九七年一月から一貫して新聞の役割を重視し、やや複雑な、あるいは社会的テーマ設定感を狙った企業メッセージを打ち出しています。
 渡辺 私どもでは商品の内容によって媒体を使い分けています。一般的には、テレビは娯楽性が強いという特性があり、CMでは新製品やキャンペーンなどの告知として使っています。テレビで得た認知を新聞では、到達力、速報性、ニュース性、解説性を利用して、広く詳細に伝える。さらに、雑誌媒体でそれをより専門的に伝えていくという使い方ですね。新聞の場合、マスを対象に詳細に伝えるという役割がやはり中心になると思います。
 笹原 ビール業界で本格的に新聞の広告を使い始めたのは、当社がCIを導入した昭和六十一年ぐらいからです。それ以前のビールの広告は、ほとんど夏場、テレビだけのイメージ広告が中心だった。暑い、ノドが渇いた、ビールがうまいというようなイメージ優先のテレビ広告を中心にやっていた。
 昭和六十一年にCIを導入し、またその翌年の六十二年にスーパードライを発売したことによって、いろんな詳しい情報をお客様に理解してもらわなくてはいけないということになりました。お客様とより深いコミュニケーションを取る必要が生まれたことが、本格的に新聞広告を使うようになった理由ですね。
 ですから、たぶんトヨタさんをはじめとした車のメーカーさんよりは、新聞の利用がだいぶ遅れていたのかもしれないですね。
 ご存じの通り、昭和六十年以前までは当社は非常に厳しい状況でした。ビールメーカーが四社あって当社のシェアは一〇%を切る時期もありました。そこでCI導入、スーパードライ発売となり、伝えるものが非常に多かったものですから、それ以来、新聞はプリント媒体の中心として活用させていただいています。
 また、さきほどのパブリシティー記事ですが、ビールも四社の前月の出荷量が課税数量という形で各社から次の月の半ばくらいに発表になるんですね。それに関連する記事が出たあとに、たとえば、スーパードライが対前年比一二〇%増のご支持をいただきましたという、記事を受けた広告展開もしました。
 松井 ビールの場合のテレビのコマーシャルの役割っていうのは逆に言うと「あ、うまそうだ」とかですかね。
 笹原 極端に言えばそうです。ビールは戦前戦後は高級品だったけど、いまや大衆消費財です。三百五十ミリリットル缶一本二百二、三十円の商品ですから、なんだかんだ難しいことは言いましても、最終的にはおいしそうだな、飲みたいなというイメージは非常に重要です。
 しかし、スーパードライという商品は戦後や高度成長期を通して変わらなかったビールの味について、実はお客様の求める味は変わってきているという仮説を立てて開発された商品です。開発時に大規模な嗜好(しこう)調査をかけ、お客様の嗜好にマッチして、さらにその嗜好のトレンドの流れの一歩進んだところにポジショニングして商品作りをしました。
 それからビール業界の味の戦争が始まったわけです。そうすると今度は、お客様が数あるビールの中で特定のビールを選ぶ基準は何なんだということで、最終的に店頭で選ぶときに、こういうイメージでこんな味のビールであるという明確な特徴、選択基準となるようなコミュニケーションを新聞を使って展開しました。

アサヒビール紙面

新聞広告を利用する時

 松井 そこでちょっと小川さんに伺いたいのですが、多種多様な商品があって、機能の説明に新聞広告を活用してきたんだという笹原さんのお話がありましたが、自動車にもそういう面があると思うのですが……。
 小川 ありますね。
 松井 これは別にいいとか悪いとかということではなくて、自動車の営業部隊が気にしているのはテレビにどれだけ出るかということの方で、新聞に何段広告が出るかということはほとんど気にされてないという話を聞いたことがある。小川さんの冒頭のお話からすると、自動車の場合、活字で説明するみたいなことは必要がなくなってきているのかなという感じを受けます。ビールと一体どこが違うんだろうという点についてはどうお考えですか。
 小川 ご指摘の点は、非常に重要なポイントだと思います。車の場合、より詳しい情報を伝えるツールとしてはカタログがあります。また、販売店、ディーラーは試乗会にかなりウエートをかけています。いわゆる買ってくれというような雰囲気のない試乗、自由に乗れる体制を徐々に作っています。やっぱりここがなんといっても強いんですね。それから車の自動車専門誌にも相当詳しい情報が書かれます。そうなりますと先ほどの新聞のポジションなんですが、入り口のイメージのところにテレビがあります。新聞もその要素はあるんですが、ちょっと弱い。詳細情報という面では、カタログ、専門誌、試乗があるわけですね。ですから、新聞のポジションが非常に……。
 松井 狭くなってる。
 小川 双方から侵食されているというのが今の状況です。そんな中で新聞の役割で今、私どもが一番重視しているのは、ディーラーへの集客です。人を動かすということに対して新聞は非常に効果がある。新車のイベントへの集客効果や、応募型キャンペーンへのレスポンス寄与力が圧倒的だということはあると思います。次に企業広告。そして商品理解への説明というようなポジションではないでしょうか。
 松井 渡辺さんのところはどういう新聞の使い方をされていますか。
 渡辺 トヨタさんの使い方と私どもの使い方は若干違うと思いますね。私どもの場合は、パソコンの個人用はテレビを使いますが、やはり、大部分はテレビを使わず新聞を中心に雑誌でフォローするという使い方ですね。逆に言えば、新聞も十五段なら十五段の中に入れる、読者に合わせた内容が重要なんです。
 松井 そうするとIBMさんの場合には、むしろ新聞を使っていただく場合にはどちらかというと企業人というか、コンピューターを導入する立場にある人に参考になるような情報を新聞広告で流すことを第一義としてやっている。そういうことですか。
 渡辺 商品特性からいきますと、経営者からビジネス関係の方々ですね。IBMの製品はビジネス向け情報処理ですので、サーバーとかいう形で皆さんお使いだと思うんですけれど、企業や部署の情報処理をどうするかを考えている人、読者のどのぐらいのパーセンテージになるか分かりませんが、そういう方を対象にした広告です。ですから、当然、情報がある程度きちんとした形で伝わる媒体を使っています。
 今、私どもは「eビジネス」をテーマにした広告展開をしています。これはインターネットを使った商取引、インターネットを中心としたビジネスの推進を支援する会社であるということを訴えるキャンペーンです。なじみのないものですから、先ほども申し上げたような対象の方々にご理解をいただくために新聞はなくてはならない媒体です。新聞は信頼される情報が多いですから、企業の信頼性を高める相乗効果に期待しています。
 笹原 媒体にはそれぞれの役割があります。トヨタさん、IBMさんほど細かい情報じゃないのかもしれないですが、ビールにとっての詳細情報を伝えなければならないときにプリント・メディアの新聞を中心に活用しています。大黒柱であるスーパードライについては、常にテレビコマーシャルでイメージを構築しながら、新聞では詳細情報、たとえば辛口という味の特徴、その辛口というのはなんなのという詳しい内容を伝える。また、先ほども言いましたが、スーパードライはおかげさまで、これだけ多くの皆さまにご支持いただいてますというメッセージを新聞広告で伝える。これは「やっぱりこれを飲んで間違いないんだ」とユーザーに確認してもらうという意味もあります。

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