特集 1998.12/vol.9

外資系広告会社のビジネスルール
ブランド構築とメディアプランニング力への自信 オグルヴィ&メイザー・ジャパン エグゼクティブ・メディア・ディレクター ジャネット・フィッツパトリック
 
 オグルヴィ&メイザーはすでに日本に進出しているJ・W・トンプソンとともに英WPPグループ(ロンドン)を支える広告会社だ。同社のメディアプランニングや広告取引に対する考え方をエグゼクティブ・メディア・ディレクターのフィッツパトリック氏に聞いた。

オグルヴィ&メイザーのビジネス・コンセプト

――オグルヴィ&メイザーが日本に進出してきた、その意図をまずお聞かせください。
 オグルヴィ&メイザー・ジャパンの設立は四年前。もともと日本が重要なマーケットであるという認識はあったし、グローバルネットワークは日本抜きでは成り立たないという理由からだ。
 日本は進出に難しい国だという認識は十分あったが、一〇〇%オグルヴィ&メイザーとして進出している。提携という形では進出しなかった。
 日本は変化が非常に激しい国だが、ブランドの役割は決っして小さくない。クライアントのブランド構築をお手伝いすることが私たちの使命だ。この分野でオグルヴィ&メイザーは非常に実績のある広告会社だ。我々は三百六十度の「ブランド・スチュワードシップ」という哲学を持っているが、これはあらゆる広告、宣伝活動に必要なソリューションをクライアントに提供するという考え方だ。マス広告だけでなく、ダイレクトマーケティング、インタラクティブ・コミュニケーション、プロモーション、コンサルタント業務にもこれから発展させていくつもりだ。

バイイングを行わないことで柔軟な対応が可能に

――現在のクライアント、業務はどのようなものですか?
 当初は従業員数が十二人だったが、いまでは百三十人にふくらんでいる。主要クライアントには、IBM、日本リーバ、コダック、アメックス、新しいクライアントではチューリッヒ保険などがある。現在は多国籍企業にフォーカスしているが、今後は日本のクライアントも獲得してゆきたい。
 また、この四年間で最も発展したのはメディア部門だ。現在メディア局には二十三人のプランナーがおり、何を買うかはコントロールしているが、メディアバイイングはほかの広告会社に任せている。バイイングをしないからこそ柔軟に動ける利点がある。設立当初の選択は、非常に賢い選択であったと考えている。しかし、今後は幅広い展開をしていきたい。

――直接的なバイイングもあり得るということですか?
 提携という形ではあると思う。今回、持ち株会社のWPPと旭通信社の提携があり、そうした所との提携はあるだろう。

――日本以外の国では、バイイングはどのように行っているのでしょうか。
 オグルヴィ&メイザーは世界的にフルサービスを提供している広告会社だが、メディアプランニングも重要視しており、メディアを効率的に買う方針を持っている。メディアバイイングの専門会社としては、オグルヴィ&メイザーとJ・W・トンプソンのメディア局が一体となってつくった独立採算の「マインドシェア」という会社がある。日本ではまだ出来ていないが、アジア、ヨーロッパ各地で活躍し、アジアではシェアがナンバー1の国もある。同社はメディア専門の会社だが、ブランドを担当している私たち広告会社とも非常に密接な関係をつくっており、一緒に仕事を進めている。

広告取引は一〇〇%公開の姿勢で

――海外、特にアメリカやヨーロッパと日本とでは広告会社の仕事の進め方に違いがあると言われますが、どんな違いがあるとお感じですか。
 外資系広告会社は、金銭的な広告取引は一〇〇%公開という姿勢を持っている。また、ヨーロッパやアメリカではコミッションレートも固定で、ネットインボイスを添付する点も日本とは非常に違う。
 責任の大きさも違う。広告会社は、クライアントの年間予算を預かっているのでその予算をいかに効率よく配分したか、売り上げ実績をいかに伸ばしたかに対しての責任を負っている。したがって、洗練されたプランニングが重要になってくる。メディアプランニングも専門的な知識を非常に要求される仕事の一つだ。
 これはオグルヴィ&メイザーの特色かもしれないが、非常にコンサルタント的なポジションにいる点も異なる。たとえばクライアントと意見の相違があれば、必ずディスカッションをする。コンサルタントとして一緒にやっていくという姿勢を持っている。また、商品中心ではなく、どのような制作物もすべてブランドを中心に考えることを基本としている。

――オグルヴィ&メイザー・ジャパンとしては、日本でどのような仕事の進め方をしていくつもりですか?
 会社として一〇〇%情報公開をして行く方針だ。必要があればクライアントに対してネットインボイスを出している。多国籍企業は世界各国で金銭面をクリアにしたいという気持ちがある。広告会社としてもそれは非常にいいことだと思っている。

――日本と海外との情報公開の差を、具体的な例で紹介していただけますか。
 イギリスの場合、テレビは視聴率と同時に放映の証拠書類がもらえる。放映する広告についてテレビ局は、ある程度の視聴率を保証している。さらに、メディアオーディッツなどのようなメディアコストを監査する会社が存在している。この会社はメディアの基準コストを提供するために、クライアントの情報をプールしている。そして、イギリスはどの広告会社もコミッションが均一に固定されており、放映料や掲載料はすべて把握可能になっている。メディア会社は日本でも同じサービスを提供しようと頑張っているが、そのためにはクライアントからの情報提供が必要だ。残念なことに日本では、クライアントからの情報提供は習慣になっていない。

●オグルヴィ&メイザー制作の広告作品
IBMCF IBM新聞広告

米英と日本の新聞のポジションの違い

――メディアプランナーとして、欧米と比べた日本の新聞の特徴をどうとらえていますか。
 アメリカの新聞は地域の情報紙という意味では非常に強い。イギリスは全国紙のほうが強い。新聞が占めるポジションでは日本と似ているが、その中身、市場が違うと思う。たとえば、日本では宅配率が高く、一定の部数が保証されている。イギリスは即売が多い。また、政治的な位置がはっきりしているという点も違う。一番大きな部数を誇るのはタブロイド紙で、割りと娯楽がメーンになっている。

――外資系企業には日本の新聞の信頼性の高さや宅配率の高さははじめは理解してもらえないと聞きますが?
 私どもの方でもアドバイスするし、日本で新聞が非常に強い媒体であるというのはすぐ理解できることだと思う。

バイイングにおけるメディアプランナーの役割

――メディアプランニングでは「オプティマイザー」というプログラムで、媒体選択の最適化を図っていると聞きますが?
 オプティマイザーはテレビを中心にして使われるシステムだ。オグルヴィ&メイザーとJ・W・トンプソンでは共同で「スーパーマイダス」というシステムを使っている。メディアプランニングでは、まず自分がある媒体を買うことによってどんな目的を果たしたいのかというのを明確にし、予算配分を考えた上で、オプティマイザーでベストなスケジュールを見いだすという使い方をする。これはテレビに関するデータが比較的整備されているため、利用可能になっている。
 プリント媒体については、ターゲットがどのように媒体に接していて、記事に対してどのような気持ちを持っているのかという具体的なことが残念ながら分からない。
 しかし、これは他の国でも言えることだが、メディアプランニングでは、必ずしもその数字だけをみるのではなく、その数字の裏に隠されていることも十分把握していく必要がある。消費者が媒体に対してどんな気持ちで接しているかの把握は、今後の課題だ。
 こうしたデータも、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスでは手に入れやすい傾向にある。

――日本のACR調査をどう評価しますか?
 十分ではない。まずサンプル数が小さい。期間も短い。それから柔軟性において限界がある。調査の手法、方針としては非常にいいが、ちょっと規模が小さいと思う。

企業も消費者もグローバルの時代へ

――最後に広告会社がグローバル化してきた理由をお話しください。
 まず、日本市場のように参入が非常に難しい国では、強いビジネスが必要とされる。日本に進出してくるクライアントにとって海外でパートナーを組んでいる広告会社と一緒に参入することは、心強いことだと思う。
 また、広告会社のグローバルなネットワークは、広告を世界的に統一できるという意味で、クライアントにとって大きなメリットだ。クリエーティブのデータも電子メールで送り合って、世界中でデータを共有することも可能だ。ほかの国の調査や成功事例にアクセスしやすくなるし、クライアントに対してグローバルな情報を提供できる。
 企業はグローバルになればなるほど、あらゆる活動を世界的に統一したいというニーズが高まってくる。広告活動もその一つだ。企業はすでにグローバルになりつつあるが、それと同時に海外旅行者の数字を出すまでもなく、消費者側もグローバルになっている。そういう意味では広告主側も誤解を受けないような統一したメッセージを消費者に送り込まないと混乱が起きる。その一方で、進出した国の文化にも合わせなければいけない。広告でも、広告戦略やアイデアは世界共通だが、表現はその国にあったものを考えながらやるべきだ。そういう時代がすでに来ているのだと思う。


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