特集 1998.11vol.8

新聞広告とEDI
デジタル化で重要になるカラーマネジメント 大日本インキ化学工業 インキ研究推進室 宍倉正視
 
 オフセット輪転機の普及によって、新聞もカラー広告が当たり前になってきている。今回取材したすべてで、カラー広告の色をどう管理していくか、つまりカラーマネジメントがデジタル制作・送稿の一つの課題として指摘された。カラーマネジメントは広告クリエーティブにとってきわめて重要だが、多分に技術的側面が強い。そこで大日本インキ化学工業を訪ね、カラーマネジメントとは何か、その現状はどうなっているかについて聞いた。

色の辞書の重要性

 カラーマネジメント(色管理)の必要性が強く叫ばれるようになったのは、DTPによる印刷工程のデジタル化が普及してきたためだ。カラーマネジメントはあくまで概念で、アプリケーションソフトやシステムのことではない。「異なる機種間で同じ色の見え方を実現するために色を管理する」ことをいう。これにシステムがついてカラーマネジメント・システムとなると、色管理を行うための道具を指す。モニター、プリンターなどの機器も含めて、カラーマネジメント・システムという場合もある。
 DTPに使われる機器や、印刷のための出力機などの間で色の見え方が違っては、色の安定した印刷物は望めない。異なる機種間で同じ色の再現を実現するカラーマネジメント・システムが必要になるわけだが、これは少し乱暴なたとえでいえば、言語翻訳システムに似ている。 
 日本語と英語の翻訳には、和英辞書と英和辞書があれば事足りるが、これらに加えて、ドイツ語、フランス語、中国語などを相互に翻訳するシステムを作るとなると辞書はいくついるだろうか。そこで考え方を変えて、真ん中に標準言語の辞書をつくることを考えてみる。これなら、日本語と標準言語、英語と標準言語、ドイツ語と標準言語という具合に、言語が増えた分だけ辞書をつくればすむ。カラーマネジメント・システムでは、この辞書の部分を「プロファイル」と呼んでいる。

自社の標準色を決めることから

 色の管理には、まず「どこまで色を合わせるのか」という標準を決定(=標準化)して、その標準をつねに安定した状態に保つ(=安定化)ことが重要だ。オフセット印刷における色の標準についてはアメリカではSWOP、ヨーロッパではユーロスタンダード、日本ではジャパンカラーという標準が設けられている。しかし、新聞印刷においてはまだ規格はない。
 そこで、まずは自社内での標準化をすすめることによって、カラーマネジメントを行っていくことが効率的であろう。たとえば自社の新聞印刷で特定の紙やインキを用いるといったように独自の標準を設けておくことにより一貫した印刷の色が得られる。

色合わせの基準は印刷物で

インキ研究推進室 ではこうした現状で、色合わせの基準はどこに置くべきだろうか。印刷を前提にしたデジタル制作の場合、やはり最終出力物である印刷物を色合わせの基準にしたほうがいい。そうすると、印刷物の色がカラープリンターの出力やモニター上でどう見えるか確認することができる。また、最初から印刷物向けのCMYKで色を作成しておけば、印刷コストも下げることができる。たとえばグレーの色を四色のかけ合わせではなく安価な墨インキ一色で印刷できる。
 もう一つ、色合わせでは「どこまで合わせられるか」と「どこまで合わせれば十分か」の切り分けをはっきりとさせておくべきだ。理論的には色合わせはかなりのところまでできるかもしれないが、そのためには、機械のコントロールをしたり紙や色材を一定の品質に保つことが必要であり、それにはいろいろとコストがかさむ。そこで、デザイン、製版、印刷の全工程にわたって、どこまで合わせれば十分か、印刷部門だけではなく制作会社や広告主など関係者全員であらかじめ合意しておく必要がある。
 印刷機が変われば、あるいは、同じ印刷機でもオペレーターが変われば、色も変わってしまう。そのへんをどう標準化するかも問題だ。このため、たとえば「この印刷機でこの人が刷ったときはこういう色になります」というデータをあらかじめ持ったうえで、刷るときには色に違いが出ないようにそのデータに基づいて変換するといった対処が必要になるかもしれない。

広告主を説得できる標準化と安定化

 次に安定化だが、今のプリンターやモニターは何もしないと色がブレてしまう。このブレの原因としては、それら機器を使用するにしたがって色が変わってくる経時的なものや同じ機種でも印刷するロットの違いによるものなどがある。そのため、色を一定にする定期的な色調節、キャリブレーションが欠かせない。また、モニターに関しては周囲の照明に影響を受けやすいので、環境(照明)を一定にすることが重要だ。一方、印刷機のキャリブレーションについては、そのために印刷するのではコストがかかりすぎる。このため、ある標準の印刷条件を決めて機器(濃度計など)を用いて管理するという方法が実用的である。
 要するに、カラーマネジメントは、それによって広告主を説得できるだけの標準化と安定化を確保するということだ。これは、新聞社の場合だと「この原稿を全国のどの工場で刷ってもこの程度の色のふれ幅に抑えられますし、これは安定化していますよ」と広告主を説得できるような形をつくれるかどうかだと思う。


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