特集 1998.5/vol.2

規制緩和時代のマーケティング ―ビッグバン本格化―
景気対策としての規制緩和 経済団体連合会 立花宏氏

 「戦後五十年、日本は平等、公平といった“左足”をずいぶん出してきた。チャンス、挑戦といった意欲をいま一度起こすためには、競争という“右足”を出さなければいけない。左足だけ出し続けても体全体は前へ進みません」。その右足が規制緩和だと語るのは、経団連常務理事の立花宏さんだ。
 経団連は一九九四年五月に豊田章一郎氏が会長に就任して以来、規制緩和を大きな旗印の一つに掲げ、折にふれて規制緩和の提言を行ってきた。
 目下、日本経済は深刻な不況に覆われていて、規制緩和も景気対策とのからみで議論されることが多いが、経団連も「規制緩和は有力な景気対策になる」という立場を前面に押し出している。今年二月、政府・自民党に対して出した追加的経済対策の要望書のなかでも政府の規制緩和推進新三か年計画の作成に言及して「経済効果の高いものを中心に抜本的なものをとりまとめ、着実な実行を図る必要がある」と訴えた。
 とはいえ、経団連の会員企業のなかには規制緩和で不利益を被るところもけっして少なくないはずだ。会員は一枚岩で規制緩和を主張しているのだろうか。「少なくとも総論では規制緩和に賛成です。そのうえで、各論反対という業界はなくはありませんが、最近では各論でもいや応なしに規制緩和のほうに追い込まれてきていますね。昔に比べると、経済界全体としては規制緩和に反対しないようになりました」と立花さんは打ち明ける。
 景気対策として有望な規制緩和の分野については、「住宅分野と情報通信分野の二つが最も期待できるのではないでしょうか」と指摘する。
 「まず住宅分野は、依然として内需拡大の一番の宝庫ですね。家が狭いし、遠距離通勤の人も多い。土地の利用や容積率の規制、建築に関する規制をもっと合理化しなければなりません。税制面では米国のような住宅促進税制に変えたら、という考えもあります。情報通信分野では、驚くほど遅れているのが行政の情報化なんです。役所が情報通信サービスのお客さんになればいいと思います。行政はユーザーとして最大だから、それだけで情報通信のマーケットが拡大していきますから」
 ところで、立花さんはこれまで実施された規制緩和から次のような教訓を得ている。「一番の問題は規制緩和の検討を始めてから実施するまで時間がかかることです。たとえば、ガソリンスタンドのセルフサービスですが、五年前に議論されたのに実現したのはやっと今年の四月でした。五年もたてば一昔もいいところ。本来持っている規制緩和の効果がそがれてしまうんですね」。景気対策としての規制緩和はスピードがカギだということだ。


(→ビッグバン本格化へ
(→ビジネスチャンスを生かす7つの視点へ
(→事例1●サービスによる商品力強化へ
(→事例2●規制緩和のニュース性へ
(→事例3●流通戦略の再構築へ
(→競争激化で試される日本のプロポーションへ
もどる