特集 1998.5/vol.2

規制緩和時代のマーケティング ―ビッグバン本格化―
事例1 マイレージは、複合的サービス提供のツール 辻村和利氏

 近年、国内航空の規制緩和は急激に進んできた。中でも幅運賃制度(注)の導入以降、航空各社は一層の競争力を問われることとなった。運賃、機内のトータルサービス、そしてマイレージとそれぞれサービスを強化してきたが、現在、その主戦場はマイレージに移った観がある。
 搭乗距離、提携ホテル等の利用に応じて無料航空券などをプレゼントするのがマイレージサービスだ。従来、国際線で実施されてきたものが、昨年四月から国内線にも拡大した。全日空でこのサービスを受ける「ANAマイレージクラブ」の会員は一年前から四倍近い伸び率となり、これは業界トップである。それをさらに、今年四月から順次パワーアップに乗り出した。国内無料航空券の必要マイル引き下げ、国内・海外の提携ホテルを従来の約十倍の九百二十八ホテルへと増強、提携先の海外航空会社をブリティッシュ・エアウェイズ、キャセイパシフィック航空等にルフトハンザ・ドイツ航空を新しく加えて九社体制へ、などの特色が盛り込まれ、強い商品力を備えた。
 もちろん他社もサービス強化をしてくるなかで、過当競争の恐れはないのだろうか。しかし、全日空広報室の辻村和利さんはこう言って否定する。
 「マイレージの競争は健全化したなかで推移しています。むしろ利用率はまだまだ低いんです。皆さまには一度は使っていただき、なるほどマイレージはこんなメリットがあるのか、と実感してもらいたいわけです」
インスタントカード マイレージをより訴求するために、数々の広告・広報戦略がとられているが、新聞広告では何が期待されるのか。利用層の大きな柱の一つがビジネスマンであることを踏まえ、「新聞はビジネスマンが必ず目を通す媒体としての価値は変わらないですから、そこでは、端的に分かりやすく説明するということ自体が非常に求められてくるのではないでしょうか」と辻村さんは話す。
 競争激化に際し、マイレージは顧客の“囲い込み戦略”と評される。むろん利用者数を増やすことは前提としてあるが、それが最終目的ではないようだ。むしろ、全日空がサービス産業としての多様化へ向かう象徴と見ることができる。たとえば、クレジット機能の付いたANAカードと連動(積算マイルに換算)させることで、ショッピング、グルメといった生活シーンと、全日空への搭乗を自然と結びつける効果を持つ。さらに他マーケットと積極的に提携していくことで、旅客サービスにとどまらない複合的サービスを提供していく。マイレージのパワーアップはそんな方向性を持っているものだ。

注)運輸省の算定する標準原価を上限運賃として、航空会社が自由に運賃を決められる制度。一九九六年導入。


(→ビッグバン本格化へ
(→ビジネスチャンスを生かす7つの視点へ
(→事例2●規制緩和のニュース性へ
(→事例3●流通戦略の再構築へ
(→景気対策としての規制緩和へ
(→競争激化で試される日本のプロポーションへ
もどる