いざ、ブランドスタジオ。 ── インタビュー(Ⅰ)
クライアントの要望・課題をワンストップで解決
「ブランドスタジオ」に寄せられる期待
電通デジタル

株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門
オウンドメディア事業部
コンテンツマーケティンググループ
グループマネージャー
今井 裕香里 氏
欧米や日本の新聞社や出版社で、自社が持つコンテンツ制作力、発信力を前面に打ち出した制作組織であるブランドスタジオ(もしくはコンテンツスタジオ)の設立が相次いでいます。その先駆者として、ニューヨーク・タイムズのTブランドスタジオ、ウォール・ストリート・ジャーナルのWSJ. カスタムスタジオがよく知られており、両者の作品は国際広告祭の「カンヌライオンズ」で受賞するなど、高い評価を得ています。
また新聞社以外でもオウンドメディア支援のサービスを開発し、自前の編集チームを作り、パッケージでセールスしている会社もある中、どのように自社の強みを構築し、クライアントのニーズに応えていけばいいのでしょうか。ブランドスタジオ、コンテンツマーケティングに詳しい電通デジタルの今井裕香里さんに、その背景と今後について、お聞きしました。
コンテンツマーケティングの成り立ち
コンテンツマーケティングが広まり始めたのは2013年ごろです。12、13 年ごろから、被リンクに偏重しがちだったそれまでのSEO から、ユーザーが求める情報を掲載した信頼できるWeb サイトを正しく評価するようGoogle のアルゴリズムが変更になり、それに伴いコンテンツ自体の力で検索数・流入数を増やすコンテンツマーケティングが注目を集めたのです。
自然検索結果順位を決定するアルゴリズムは何百という要素があり、中でも重要な要素がコンテンツ更新の網羅性と信頼性です。それまで月5 本程度、コンテンツを更新していた企業が、それだけでは物足りない、1 日で20本は更新した方がユーザーとのコミュニケーションに有益だという風潮になりました。質を担保しながら、大量のコンテンツを自社で制作していこうとすると、相当な負荷がかかります。その制作部門を担うということで、ブランドスタジオの需要が生まれたのではないでしょうか。
また、欧米や日本のみならず、世界全般でフェイクニュースが問題となり、以前に比べ、よりコンテンツの信用性、信頼性が問われるようになったという背景も見落とせません。
日本でも3 年前、大手インターネット関連企業が運営する医療健康情報サイトで、医学的根拠を欠く記事や無断引用が大量に見つかり、大きな問題となりました。その事件が発覚するまでは、発注するクライアント企業側にも、コストを抑えて、なるべく多くのコンテンツをという意識が強くありました。
その事件があってからは、企業側も「信頼性のあるコンテンツをお願いしたいが、費用はいくらぐらいかかりますか?」というスタンスに変わりました。
オンライン・オフラインの融合 新聞社ならではの強み
コンテンツマーケティングは、ダイレクトレスポンスがとりづらいので、どれだけ収益に貢献しているかを可視化しづらい領域でもあります。編集力・取材力を強みとして活動するブランドスタジオにとってはマーケティング活動の支援という点ではハードルになるかもしれません。
そうした中、それぞれのブランドスタジオが生き残っていくには、お客様の抱える課題から、自らの優位性を構築しなくてはなりません。
あるいは、もともと自社で所有している資産・資源を活用していくという方法もあります。たとえば新聞社なら、信頼性・信用性とは別に、関連施設や主催する各種文化・スポーツ事業など、様々な資産・資源を所有しています。そうしたオフの現場とオンラインとを統合したコンテンツマーケティングの創出も可能だと思っています。
長年、オフライン=紙の現場で人々の心をつかんできたノウハウをオンライン上で、お客様のマーケティング課題の解決に役立てることができれば強みになると思いますし、クライアントニーズに対して適切なアンサーがブランドスタジオとの協業や連携であるという選択をするシーンがくるのではないでしょうか。
当社も含め、チームがワンストップでクライアント課題に向き合うことが、流れの速い業界の中で、迅速な課題解決やマーケティング活動の支援の実現を可能にします。(談)
自社が保有するメディアの総称。広義には自社ホームページやリーフレットも含まれるが、自社で運営しているWebサイトやSNSアカウント、ブログなどのこと。
有益な情報の提供を通じて消費者と企業の結びつきを強め、商品やサービスの購買につなげる活動。
今井裕香里(いまい・ゆかり)氏
国内大手ECサイト運営事業会社にて2011年より事業横断型でインハウスSEOコンサルティング業務に従事。2015 年より、現職で顧客と消費者のコミュニケーション戦略立案からプロジェクトマネージメント業務を担当。SEO 知見を軸にした戦略立案からコンテンツの企画、制作ディレクションまで一気通貫で対応できることを強みにコンテンツマーケティング全体のコンサルティングに対応領域を拡げている。