新聞広告がSNSで広がっていく ── 紙拡散「よみバズ」の力 ── インタビュー(Ⅳ)
教えたくなる、深読みしたくなる
そんな新聞広告が拡散する
- ◆ リアルの共有意味が若者に生まれている
- ◆ 新聞広告はリアル「自分で手に取れる」「わざわざ手に入れる」
- ◆ 新聞はデジタル以上に、親子で共有しやすい

株式会社アサツー ディ・ケイ
ソリューション・プランニング本部
兼 若者プロジェクトリーダー
藤本 耕平 氏
若者の非デジタルへの興味は高まる傾向
ワカスタ(若者スタジオ)は、アサツー ディ・ケイ(ADK)が2012年に始めた若者マーケッター集団で、メンバーの大学生たちが若者向けに新商品・キャンペーン開発を行っています。私は創設から携わっています。
若者による新聞広告の拡散が起こるのは納得できます。SNSを断つデジタルデトックスをする若者が出てくるなど、非デジタルへの興味が高まる傾向にあり、リアルの共有が意味を持ってきていることが考えられます。最近話題になっているのが、横浜にできたウォールアートで、エンジェルウィングスといって、その前に立つと天使のような写真が撮れてインスタ栄えするというもの。また、東京ディズニーランドで改装中のイッツ・ア・スモールワールドの工事壁面がフォトスポットになっていたり、わざわざ行ってリアルに身を置く、という意識が若者の中で芽生えているのでしょう。デジタルではない広告展開の可能性を感じます。
新聞広告はその日ならではのもので、自分で手に取れるリアル、わざわざ手に入れるリアルがあり、ツイッターと相性がいいですね。親から子へ「今日こういう広告が出ているよ」と伝わって親子で共有されるケースも多いでしょう。デジタル広告が親子では共有できないのとは対照的です。一般的に、若者は新聞を読んでいない、という先入観があるかもしれませんが、若者自体は割り切ってますよ。興味あるコンテンツかどうかが大事で、これは自分向けのメディアじゃない、というようなことは考えていない。ワカスタのメンバーでスポーツ雑誌を愛読している男子がいるのですが、どのライターの記事がおもしろいか、まで把握していますからね。
深読みしたくなる新聞広告は拡散されやすい
私は、若者についても研究しているのですが、若者のクラスター分析をして、7つのグループができました。その中の「内輪ネタリスト」と名づけたクラスターが、ツイッター拡散のヒントを教えてくれるように思います。このグループは、はやりかどうかよりも、自分の好きなことを分かり合える仲間ととことん話したい人たちで、ツイッターで広くつぶやいて、反応してきた人とグループを作って話したりしている。
たとえば、新聞広告に登場したアニメコンテンツのキャラクターがなぜこのキャラなのか、なぜこんなポーズやセリフなのか、いくらでも深読みして拡散してくれる。裏読みしたくなったり、作者の意図がどこにあるかをあれやこれや推理してくれたり、そういう反応をしてもらえそうな文脈を作ると、新聞広告の拡散の可能性はもっと広がるのではないでしょうか。敏感な人たちなので、こちらの目論見(もくろみ)がばれていやがられないようにしなくてはいけないのですが(笑)。
「早く拡散したい」新聞広告とは?
ワカスタメンバーの大学生座談会(抜粋)
“紙拡散”の起点を作っている若者自身は新聞広告についてどう思っているのでしょうか。ワカスタのメンバーである現役大学生6名に話を聞きました。メンバーの多くは、リアルの友人用と、趣味・同好の仲間用の好きなものアカウントと、複数のツイッターアカウントを使い分けています。好きなものアカウントでは、ファン仲間に新聞広告が拡散することを実感しているそうです。では、リアルの友人用アカウントでつぶやくとしたら、どんな広告ですか?

佐久間ひなのさん
見つけたら教えたくなるようなもの、「やっぱり」「実は」みたいなものですね。間違い探しも面白い。「早く拡散したい」って思うことが一番の原動力だと思うので。

秋屋光さん
使いやすいフレーズがあることかな。「そうだ 京都、行こう。」を学校に来ない友達に、「そうだ、学校、行こう。」と送ったことがあります。

堀内麻衣さん
みんなが楽しんで体験できるようなこと。以前、「あなた、これを解けますか」といった内容の塾の広告がリツイートされてきて、実際に解いてみて無理だなあと思って、「くそ、難しい」ってリツイートしました。

奈古澄香さん
写真を「撮ろう」って思えるもの。例えば、動いたり、立体だったり、ちょっと変化があるようなこと。そうすると、さらに「これ面白い」「広めよう」ってなる。

渡辺亮太さん
新聞の紙の薄さを生かして折り曲げて遊ぶみたいな工夫があったら面白そうだと思いますね。表裏で透かして見るのもいい。

三好裕太さん
最近、エモい、心を揺さぶられるような広告、読ませるようなものって、若者に響くと思う。一緒に読んでいると「ああいいよね」「共感できるよね」みたいなものです。親子ものもエモいです。