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読売新聞 海外駐在員リポート

from Europe

パリは優秀なブランドマネジャー

4月にパリに赴任し、東京にいたときに比べて普段の生活で広告に接する機会が減った。テレビCMや新聞広告は日本よりも少ない印象で、近隣諸国よりも高い12%超という広告シェアを持つ屋外広告でさえも景観保護で制限され、広告サインがランドマークになるようなスポットはない。目にする広告は、日本では馴染(なじ)みの薄いフランス企業が中心で、日本人の私でもわかるのは自動車と化粧品、ラグジュアリーブランドくらいだ。

それもそのはず、総広告費は日本の3割以下、名目GDPも日本の約半分。ここフランスの市場規模を考えれば、この露出量は妥当なのかもしれない。

では海外企業にとって、この国、この街でプロモーションへの意欲が低いのかといえばそうではない。従来型メディアでもデジタルでもないパリ独特のマーケティング手法、つまり、この街が培ってきたブランドイメージを活用するプロモーションが盛んだ。

世界屈指の有名セレクトショップ「colette(コレット)」は、ラグジュアリーブランドのブティックが立ち並ぶサントノーレ通りにあり、店内は、同店のトレードマークの鮮やかなブルーの水玉をあしらったコラボレート商品のほか、個性豊かな服やアクセサリー、雑貨、書籍などがディスプレーされている。先日、今年12月20日に閉店することが発表された後も、多くの人でにぎわっている。

にぎわいは店頭だけではない。コレットのフェイスブックのフォロワーは世界中に約27万人、インスタグラムは約100万人にのぼる。コラボレーションやイベントの情報は世界中のファッションニュースを通じて広がることに加え、年間3000万人と言われるパリへの観光客による拡散も期待できる。コレットと一緒にキャンペーンやイベントを実施するということは、すなわちグローバルな宣伝展開を意味するのだ。

日本のスポーツメーカー「アシックス」も、コレットとのコラボ商品を販売し、パリでも成功を収めているブランドの一つだ。同社は、一昨年、昨年とコレット店内でショップ・イン・ショップを展開、1階のスペースを「コレット×アシックス」でジャックした。このプロモーションも奏功してか、セーヌ川をおしゃれに走る、あるいはかわいい愛犬と散歩するアイテムとして、パリジャン、パリジェンヌに受け入れられている。このキャンペーンは、日本のセレクトショップで関連イベントが行われたほか、アメリカ、イギリスなど日仏以外の国でもファッションサイトに取り上げられている。

コレットとのショップ・イン・ショップは、「ユニクロ」も2009年のオペラ店の開店に合わせて実施している。ユニクロはすでに06年から著名デザイナーとのコラボ商品を展開し、センスのいいブランドとして認知されていたが、その後、14年にファッションエリアのマレ地区に出店。日本のインテリアデザイン事務所「ワンダーウォール」が手掛けたマレ店は、内部の空間、陳列が他の店舗とは趣が異なり、このエリアの雰囲気に溶け込んでいる。

パリの特徴は、ファッション、食、芸術のコンテンツにおけるブランドイメージが、世界の共通認識になっているということである。そこに観光による発信力が加わり、街の至るところが「媒体」となっている。長い年月をかけてこのイメージを確立してきたパリ市、パリ市民は非常に優秀なブランドマネジャーだ。

阿部泰三 パリ駐在

パリの旅行ガイドには「店に入るとき、出るときは挨拶(あいさつ)をしましょう」と書いてあります。確かに店やエレベーターなどで人と目が合うと、笑顔で言葉を交わします。先日、バスに乗ったときのことです。「ここで運転手を交代します。ありがとうございました。さようなら」と言い、運転手がバスから降りようとすると、乗客全員が運転手に「さようなら!」。日本人の私にとっては衝撃のシーンでした。

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