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AI技術で「アイデア発想」を支援するサービスをローンチ(博報堂 エグゼクティブクリエイティブディレクター 八幡 功一さん)

博報堂は今年7月、TISと共同開発したAI技術を活用した発想支援クラウドサービス「AIブレストスパーク」の有料提供をスタートさせた。同社のクリエイターが長年培ってきたアイデア発想メソッドが搭載された新サービスの内容や開発に至った経緯について、同社の開発責任者であるエグゼクティブクリエイティブディレクターの八幡功一さんにお聞きした。

── まずは、「AIブレストスパーク」の開発に至った経緯について教えてください。

僕は1983年に博報堂に入社したのですが、当時は、企業からオリエンがあってプレゼンするまでに、少なくとも1か月の猶予をもらえていました。ところが、いまの時代、とにかくスピード感が重視され、場合によっては、「では、来週、プレゼンをお願いします」と言われることもあります。

よいアイデアを生み出すには、ブレインストーミングを行い、たくさん拡散させて、できるだけたくさんの切り口を用意し、取捨選択していくという作業がとても大事です。ただ、時間が限られているので、それもままならない。そうした時に、AIを使って機械的に切り口を生成するツールがあれば、若い社員のみんなに役立つのではないかと、まず思ったわけです。

あと、これはとても個人的な事情なのですが、僕はあと2年足らずで定年を迎えます。個人として培ってきた僕の発想のノウハウを若い世代に伝え、業界に恩返ししたいと思ったのも、開発を思い立ったきっかけの一つです。

AIブレストスパーク

※「AIブレストスパーク」ホームページ:https://www.ai-b-spark.com/

── 総合ITサービス企業のTISさんとの共同開発になりますね。

このアイデア自体はだいぶ前からあって、5、6年前には弊社のイントラのシステムを使って、今回と似たようなことをしようと試みたことがあります。ただ、システムのスペックの問題などもあって、完成にまでは至りませんでした。

僕は昨年まで、博報堂のクリエイティブの知見を活かして新しいビジネスを立ち上げるビジネスインキュベーション局の局長を務めていて、そこで改めてこのアイデアを活かせないかと検討しました。

ちょうどその時期に、TISさんでも、弊社と同じようにビジネスイノベーション事業部という部門 ができて、何か新しいことに取り組みたいと模索されていました。

博報堂のアイデアとTISさんのAI技術を掛け合わせることで、ウインウインの関係が築けるということで、共同で開発することになりました。

3つのフィールドがアイデアのヒントに

── 「AIブレストスパーク」の使い方と機能についてご解説ください。

パソコンで「AIブレストスパーク」にログインすると、「ひらめきマップ」「ブレストアイデア」「ノート」の3つのフィールドが出てきます。メインになる機能は先の2つで、画面上部の検索画面にキーワードを入力すると、AIが一斉に200から300のWebページをクローリングして、同じ文章の中にそのキーワードと一緒に含まれる共起語の頻度を数えあげます。それが放射型となって、「ひらめきマップ」に表示されます。

たとえば、「ビール」と入力すると、「原料」「濃い」「ホップ」「クラフトビール」「歴史」と、クローリングした時点での共起語トップ5が表示されます。その5つの先には、その各々と共起度が高い言葉が、枝分かれしながら表示されていきます。いわば、言葉の連想ゲームが可視化されているのです。

「ブレストアイデア」では、言葉と言葉を意外接着させます。例えば、「睡眠負債」という言葉が新しく生まれたように、新しい価値の創造は、言葉と言葉の意外な結合から生まれます。ビールだと、「QRコードビール」とか「失敗しないビール」とか、様々な意外な組み合わせがAIによって提示され、新しいアイデアのヒントとして使うことができます。

キーワードと意外接着する言葉のカテゴリーは、「アシストワード」「社会課題」「トレンドワード」「JK用語」などの違った切り口で、生成が可能です。たとえば「社会課題」に切り替えると、「ビール女性活用推進」とか「マイノリティ受容ビール」のように、社会課題のフィルターを通した語句生成がなされます。

いずれの機能も、ワードだけでなく、フレーズ=キーワードが含まれた文章の生成もできます。

「ノート」では、気になったワード、フレーズを書き留め、島分けしたりして、考えをまとめる際に役立ちます。

あと主な機能としては、行き詰まったときに、発想の転換をうながす、「他人アタマ」機能があり、いまは「作詞家」「ビジネスマン」「主婦」の3つの違った視点から「ひらめきマップ」を表示してくれます。

「連続刺激モード」では、1行ずつ画面いっぱいにワードやフレーズを連続表示することで、右脳的な発想の飛躍を可能にしてくれます。

AIブレストスパーク メイン画面

ひらめきマップ ブレストアイデア ノート 他人アタマで考える

AIブレストスパーク 連続刺激モード

連続刺激モード

博報堂オリジナルの発想支援メソッドを搭載

── 「AIブレストスパーク」を使うことで、どのようなことが可能になるのでしょうか?

商品説明に「博報堂発想支援メソッド搭載」とあるように、弊社のクリエイターが身につけている発想プロセスを抽出してAIに搭載していますので、弊社のクリエイターと同じプロセスでブレストを経験することができます。

具体的には、ネットを真上から俯瞰して見下ろすことができ、その上で、意外な言葉と言葉を結合させて提示してくれるので、自分ひとりではたどり着けないような、発想の遠いところにまで連れていってくれます。それによって、思ってもいないアイデアを生むことができます。

── 八幡さんの知見もふんだんに織り込まれているそうですね。

「アシストワード」の機能についてもそうですが、そのほかに「着眼点」といって、そのキーワードに対して、このような着眼点があると示唆してくれる機能もあります。この機能については、僕が長年ノートに書き留めてきた着眼ワードが、1000以上は使われています。それを僕のノートのままに表示すると、僕が丸裸にされてしまいますので、ランダムに順番は変えていますけれど。

「混沌」がアイデアやひらめきを生む

── 改めて、八幡さんのこれまでのキャリアについて、ご紹介いただけませんでしょうか。

自動車、トイレタリー、飲料、食品など、さまざまな企業の広告キャンペーンを担当させていただきましたが、特に好きなのは、新商品の開発段階から参加させてもらい、商品そのものにもアイデアを出しつつ、コンセプトやネーミング、パッケージを決定し、市場導入戦略を練り上げることでした。

また、博報堂のクリエイターの才能を、どう育てどう活かすかということにも、長く携わってきました。

今回の「AIブレストスパーク」の開発は、その両方の流れの交点かもしれません。広告会社のクリエイターが、いろんな異業種企業とコラボして新しいチャレンジをすることにも、旗を振って来ましたから、自分でも実践できて、ちょっとうれしいです。

── そのようなキャリアを持つ八幡さんの目には、いまの若いクリエイターの方々はどのように映っているのでしょうか。

僕らが若手のころは、インターネットの検索もない時代で、ヒントに困ったら青山ブックセンターに行って、片っ端から本や写真集に目を通すようなことをしょっちゅうしていました。

いまはネットで簡単に調べものができるようになりましたが、検索結果をそのまま会議で出したりする人がいるのです。「それは検索の結果であって、あなたの考えではないですよね」と言うこともあります。

やはり、チームの脳内が一度「混沌」となるくらいまで、大量に考えなければ、新しいアイデアとかひらめきは生まれません。しかし、いまの若い人が「考えてきました」と言ってくるレベルは、僕らがやってきた「考える」に遠く及ばないという現実もあります。

ですから、「たくさんの切り口を持っていると、これだけよいアイデアが生まれるよ」ということを若い人たちにも経験してもらいたくて、この「AIブレストスパーク」を作ったという側面もあるのです。

ただ、いくつもの切り口を掛け合わせて、アイデアを飛躍させ、新しいものを生み出すのは、AIではなくて、最終的には人間の仕事です。そこは忘れないでほしいと思っています。

新聞広告の強みと魅力

── 新聞広告については、どのように評価していらっしゃいますか?

紙に印刷され、めくってそれに出会うという体験が、印象を深くしていると思います。「朝刊のあの辺にあった広告」と覚えることは、ネットの広告では無理です。人間の脳は、物質化された情報の方が好きなのでは?表示スペースが大きい、というのも強みの一つだと思います。見開きだとポスターに匹敵するぐらいの広さで、とてもインパクトがあります。

あと文字があって、詳しく説明することもできるのも強みだと思います。広告の手法として、あえてビジュアルだけで訴える手法もありますが、僕がもともとコピーライターだったせいか、文字で呼びかける方に、より魅力を感じます。

── 最後に、今後の「AIブレストスパーク」の展開についてお願いします。

この10月17日にスマホ版(無料版)、11月1日にスマホ版(有料版)をローンチ(公開)します。さらに、「AIブレストスパーク」の解説書として「AIで楽しく発想強化する本」を、11月1日にCCCメディアハウスより刊行の予定です。あと、TISさんが発言記録用のスマートスピーカーを販売されており、それにAIブレストスパークの機能を搭載したものを来年春頃に発売する予定です。

「他人アタマ」の機能については、いま搭載されている3つに加え、たとえば「学者アタマ」とか、「医者アタマ」「コスメアタマ」といったように、さらに数を増やしていく予定なのですが、実はAIは、だじゃれを作ったり、韻を踏ませたりするのが得意なのです。機械的に似たような音を探してくればいいだけですから。「だじゃれモード」の搭載も検討していますし、もしかしたら、ラッパーの方向けに進化していくかもしれません。とはいえ、まずは、所属の部署名に「企画」とか「イノベーション」が付いた企業人の方々に向けて広くアピールしていきたいと思っています。

── ありがとうございました。

八幡 功一(やはた こういち)

博報堂 エグゼクティブクリエイティブディレクター
1983年博報堂入社、コピーライター。
自動車、トイレタリー、飲料、流通、食品、通信等、様々な企業の新商品開発、市場導入戦略、IMC戦略などの立案・実施に携わってきた。
博報堂イン・プログレス社長、クリエイティブ戦略企画室長、クリエイティブデザイン局長、ビジネスインキュベーション局長なども経験。
博報堂のADとフォトグラファーによる「人間の本能を刺激する写真展 ~ 脳よだれ展」のプロデュースや「エネルギー問題に効くデザイン」「そもそもをデザインする」「Hakuhodo Art Directors Works & Styles シリーズ」等、出版物のプロデュースも。

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