第41回受賞作品(2024年度)
■グランプリ
- 雪印メグミルク株式会社
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2024年12月27日/全国版/朝刊/全15段
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制作者賞
- CD:廣畑 聡 [電通]
- AD:澤海 康弘 [電通]
- C:中里 耕平 [電通]
- CP:朝鍋 健太郎 [電通クリエイティブフォース]
- PR:小川 篤史 [二番工房]
- PR:熊谷 英之 [たきコーポレーション]
- D:佐々木 真秀 [たきコーポレーション]
- D:徐 家桐 [たきコーポレーション]
- P:浅川 英郎 [小池事務所]
- MP:田中 僚 [電通]
- MP:天羽 秀太 [電通]
- AE:刈屋 敦 [電通]
読者モニターからのコメントよくぞ言ってくれた、と感謝したくなる広告です。母が若い頃から3cmも低くなり、骨粗しょう症でした。今は治療薬を服用してなんとか進行を抑えています。台所に立つ女性の姿で、ハッと気付いた読売新聞読者の方が多くいらっしゃったのではないでしょうか。加齢で背が縮むのは仕方がない、と考える方々に注意を促してくださいました。(女性50代)
上手い広告だと思いました。年を取った親を見たら、また自分自身でも感じる、身長が縮む状況を、情的に見事に表現し、それを実際の商品ではなく、商売の本体のミルク製品すべてにつなげているところが素晴らしいと思いました。よく情的に偏り、実際何を言いたいのかよくわからなかったり、商品をアピールするばかりで、何がいいのかよくわからないといった広告が多い中で、この広告は素晴らしいバランスで表現されていると思います。この広告については、言うことがないです。絶賛です。(男性60代)
腰が曲がるのは背骨がすり減っていくからというような話をどこかで聞いたことがあったので、広告に興味を持った。年末の時期にタイミングもよく良い広告だなと思った。文章も好印象だった。写真も広告の内容がよく伝わる。(女性40代)
■準グランプリ
- タイガー魔法瓶株式会社
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2024年9月1日/全国版/朝刊/全15段
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制作者賞
- CD:安藤 宏治 [博報堂]
- AD:小野 真臣 [博報堂プロダクツ]
- D:村尾 侑里子
- C:澤田 浩二 [旦/AKEGATA]
- AE:龍水 万紀夫 [博報堂]
- AE:国岡 奈緒子 [博報堂]
- AE:松井 文 [博報堂]
読者モニターからのコメント新聞紙を燃やしてご飯が炊けるということを新聞広告で伝えるというのが広告媒体としてピッタリで面白いと感じた。(男性29歳以下)
本当に新聞紙一部でご飯が炊けるのか、実践してみたいと興味を持ちました!面白いなぁ~と。地震や台風でライフラインがダメになった時の、防災への備えに、良い商品だと思います!とっても画期的で、私の度肝を抜かれました!(女性40代)
この新聞を燃やしてください、というコピーと商品を中央に配置したシンプルなレイアウトが印象的な広告だと思いました。新聞1部でごはんが炊ける、という特徴も防災の日に相応しいと思いました。(女性50代)
■準グランプリ
- Uber Eats Japan合同会社
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2024年6月21日/東京本社版/朝刊/全15段
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制作者賞
- CD: Go Sohara [Special Group]
- CD/AD: Ryuhei Nakadai [Special Group]
- CD/C: Shinichi Takizawa [Special Group]
- CEO & Partner: Cade Heyde [Special Group]
- Partner: Lindsey Evans [Special Group]
- Partner & Chief Creative Officer: Tom Martin [Special Group]
- Partner & Chief Creative Officer: Julian Schreiber [Special Group]
- Head of Strategy: Celia Garforth [Special Group]
- Strategy Director: JJ Bender [Special Group]
- Senior Strategist: Kai Lambert [Special Group]
- Team Lead: Hanna Scott [Special Group]
- Business Director: Johnson Liu [Special Group]
- Business Manager: Amol Yachi [Special Group]
- Production Director: Lim Yeong Gwang [Special Group]
- PR: James Hashimoto [Special Group]
読者モニターからのコメント50%OFFを印象付けるために、思い切って半分をなくすというのがすごく面白いなと思いました。一目瞭然でいいですね。(男性40代)
全面広告の半分利用、おもしろ広告だと思います。テレビCMでの画面、半分利用とリンクしてよいと思います。50%OFFの広告として、Uberの企業イメージアップになるよい広告だと思います。チャレンジ精神などを感じます。(男性60代)
広告を見たとき、印刷されてない、と思ったが、すぐに広告の意図を理解できた。このような広告を見たのは初めてかも。そのくらいインパクトがあった。また、縦半分だけでも、意味は伝わるものだな、と思った。(女性50代)
- AD:アートディレクター
- AE:アカウントエグゼクティブ
- C:コピーライター
- CD:クリエイティブディレクター
- D:デザイナー
- M:モデル
- MP:メディアプランナー
- P:フォトグラファー
- S:スタイリング
選考委員講評


東京藝術大学
学長特命・美術学部デザイン科教授
企業と広告に必要なことは、その取組がどれだけ社会の役に立てるのか、その出稿がどれだけ人を救い、幸せにすることができるのか、ということなのだと思います。帰省の年末というタイミングに掲載された「CHECK −2cm」、商品名の上にブランド名でなく社名を添えた、9月1日 防災の日の「魔法のかまどごはん」、結果的にインクの消費も半分に削減することのできた「ピザ50%OFF」。それぞれ決して派手さはありませんが、それぞれの在り方で社会課題に向き合おうとする矜持と愛を感じる新聞広告たちでした。

一番印象的だったことは、雪印メグミルクの「母さん、少し小さくなった?」とタイガー魔法瓶の「この新聞を燃やしてください。」のどちらを大賞とするかで、広告のあり方が問われると審査員の皆さんで話し合うこととなったことです。前者は、一人一人の胸に突き刺さる人生の一場面が描かれていて、広告を超えて映画的でもある「心」に向けた広告。後者は、新聞だからこそ訴えかけられ、しかも防災の日に出稿するという企画が明快な広告。共に素晴らしい広告と讃えながら悩みました。広告が減ってきている今、私たちは何を大切にしていくのか。議論を重ねた結果、「人生」の一部となる広告を今回は大賞とさせていただきました。この広告をみてどれだけの方が自分自身、そして大切な家族と重ねたことでしょうか。新聞広告だからこそ、明確に伝えたいことを深く染み込ませることができることを証明できたと思います。今回の受賞作全てに拍手を送ります。

今年は、広告の表現の幅が広かったような気がします。それは、ひとつの流行をみんなが追いかける時代から、それぞれの価値観で選択する時代になったからかもしれません。Uber Eatsの「50%OFF」で新聞の半分を白紙にしてしまうインパクトや、タイガー魔法瓶の「この新聞を燃やしてください」というコピーの強さも印象に残りました。しかし、グランプリが雪印メグミルクの「母さん、少し小さくなった?」に決まったのは、紙面から滲み出て来る、普遍的な人間ドラマに心を打たれたからだと思います。新聞広告の可能性をさらに感じた作品でした。

グランプリの雪印メグミルクは、「母さん、少し小さくなった?」というコピーが写真の風合いと相まって心にぐっときた。写真の光の具合や「母さん」の台所での立ち姿には、自分の実体験のように感じさせる力があった。準グランプリのタイガー魔法瓶は「防災の日」に掲載し、「この新聞を燃やしてください」というコピーのインパクトの強さが際立った。準グランプリのUber Eatsは、新聞のページをめくる手が思わず止まる仕掛けに成功し、ピザがすぐに届くイメージも上手に伝えていた。昨年度と比べて全体に強いメッセ―ジ性のある作品が減ったと感じたが、読者に強い印象を残す作品が選出されたと思う。

今回グランプリを受賞された広告には、一枚の紙面であるにもかかわらず、その写真やコピーから多くの物語を創造することができました。もしかしたら、広告としては、はっきりとわかりやすいものではなく、世界観も少し暗いと感じられるものかもしれませんが、私にはとても深く読者の方に沁み込むものになったのではないかと思うのです。なんだか懐かしい実家を想起させるお台所もその要因であったかもしれません。まるで匂いまでしてきて鼻の奥がツンとする感じでもありました。準グランプリの2作品のうち、Uber Eats Japanのものは、とても優れていると私も思っていましたが、どちらかと言われた時に、雪印メグミルクが僅差で私の中に深く刻まれました。
(選考時は読売新聞東京本社 取締役ビジネス局長)
コピーライター
グランプリ審査は雪印メグミルクとタイガー魔法瓶の選択で近年にない接戦となり、審査委員の意見交換も活発に行われた。介護と防災、どちらの作品も今日的テーマを土台にしたジャーナリスティックな広告でありながら、その表現法は180度異なる。前者は見るものの情感に訴え、背後のストーリー性まで感じさせてくれている。一方で、後者の新聞というメディアを「物」として扱う意外性もじつに見事なものだ。どちらが心に残るのか、人を動かせるのか。ジャッジはほんとうに微妙であり、個人的には両者が一等賞という判断でもよかったのではと感じている。