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海外企業は日本の消費市場をどう見ているか

【寄稿】
競争と集積の好循環が日本市場の価値を高める

日本総合研究所

調査部主任研究員 小方 尚子

個人消費に持ち直しの動き

2014年度に消費税率が引き上げられて以降、個人消費の低迷が長期化していたが、今年に入り、徐々に持ち直しの動きが広がっている【図1】。2009年のエコポイント導入時に購入した家電や、2011年の地上デジタル放送への完全移行の際に購入したテレビの買い替え需要が高まり、販売が回復している。さらに、株高などを背景に消費者マインドが持ち直しつつあり、外食などサービス消費にも明るさがみられる。

【図1】消費活動指数

消費市場で好調な分野としては、外国人観光客のインバウンド需要も挙げられる。2015年に急増した「爆買い」は一服したものの、化粧品、日用品など幅広い商品にけん引され、市場規模は着実に拡大し続けている。

新たな商業施設の誕生も消費を後押ししている。今年4月には、東京銀座地区最大の商業施設となる「GINZA SIX(ギンザシックス)」の開業が注目されたが、それに限らず既存ビルの老朽化や地価の下落を背景として、訪日外国人客の増加も視野に、東京、大阪、名古屋の各地で都市再開発が活発化している。

ただし、個人消費は、満遍なく上向いているのではなく、一部の好調な分野、店舗、場合によっては個別の商品がけん引している。消費の二極化が叫ばれて久しいが、経済の成熟化を背景に、品質の良さ、価格に見合っているか、購買の利便性など消費者の選別眼は厳しくなっており、同様の商品や店舗同士の間での売れる・売れない、の格差は広がっている。都市部で相次ぐ再開発もこのうちの「勝ち組」になるための戦略といえる。もっとも、単純な建物の新しさだけでは、顧客の来店・購買は見込めない。このため、伝統工芸を活用した新商品を取り揃(そろ)えた店、人気の飲食店、高級ホテルなどのテナントが選(え)りすぐられ、内外の消費者を引き寄せる努力が続いている。

世界の一流ブランドの誘致も活発である。目の肥えた消費者が多く、海外旅行などでブランド品を購入したリピーターも多い日本では、商業施設の差別化にとって、世界で高い評価を確立している一流ブランドの誘致が、有望な選択肢となっている。さらに、海外からの観光客にとっても、日本の店舗はサービスのこまやかさ、ニセモノ対策への信用の高さなどから評価されている。

海外企業にとっての魅力1位は「日本市場」

一方、海外からの対日進出企業も、日本市場には大きな魅力を感じている。これは、既にみた足元の消費回復傾向、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた需要増加への期待、あるいは、行き過ぎた円高の修正等による日本でのビジネス拠点取得の割安感といった短期的な誘因だけではない。むしろ、日本市場自体の持つ魅力によるところが大きい。

ジェトロの調査によると、外資系企業が日本でビジネス展開するうえで魅力を感じる点の1位も「日本の市場」である【図2】。市場規模をドルベースのGDPでみると、2016年に日本は4.9兆ドルと、米国(18.5兆ドル)、中国(11.2兆ドル)に次ぐ世界第3位の規模を有する。しかも、米中両国に比べ国土が狭いため、結果として商圏がコンパクトであることは企業にとって魅力である。

【図2】外資企業が日本でビジネス展開するうえでの魅力

とりわけ、世界の一流ブランド店にとっては売り上げが期待できる市場である。所得が高く、品質の良いものにお金を出す消費者が多い豊かな市場であるためだ。実際、たとえば、高級輸入車は、増税の影響で乗用車販売台数が伸び悩んだ2014年度入り後から昨年秋口にかけての間も順調に販売を伸ばし続けた。

ジェトロの調査は、製造業などB to Bの企業も含むため、「研究開発の質の高さ」「優れた日本企業や大学等パートナーの存在」も高いポイントを得ている。もっとも、世界一厳しいといわれる日本の消費者に鍛えられる結果、新たな成長を見いだす例は消費者向けのB to Cの企業でも多い。日本を新商品の競争力を検証するテストマーケティングの場として活用し、日本での成功を基に世界展開する例も多い。最近の世界的な抹茶ブームなど、日本発の新メニューが海外で人気を博した例などが典型だ。

電力、流通網などのインフラの充実や、治安など社会の安定性といったビジネスの場としての基盤への評価も高くなっている。ブランド価値の毀損(きそん)を最小限に抑えて売れ残り品を処分できるアウトレットモールも充実している。

こうした日本市場自体の魅力を視野に入れることで、単に商業施設にテナントとして入るのではなく、独自に旗艦店を作り、進出している海外企業も多い。

2022年まで世界3位をキープ

今後の日本市場を見渡しても、その魅力は維持されると見込まれる。IMFの推計によると、2016年から2022年までに、マクロのGDP規模でドイツ、イギリス、フランスは3.9兆ドルに達するインドに追い越されるが、日本は、5.3兆ドルと、世界第3位の経済規模を維持する見通しである。

さらに、高成長が続くアジア諸国をはじめ、海外からの訪日観光客の増加が見込まれる。四季豊かで独自の伝統・文化のある日本は、社会の安定性、犯罪率の低さともあいまって魅力的な訪問先としての認知が高まりつつある。

日本市場の魅力に引かれて集まる内外の企業同士の競争が厳しいものであることも確かだが、世界の一流ブランドの集積と競争が、日本のショッピングの場としての魅力を高める好循環を生み出すことが今後も期待できよう。

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