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ふるさと納税を自治体が最大限活用するには

【寄稿】自治体に期待されること

望まれる体験型返礼品の拡充や魅力ある政策の発信

みずほ総合研究所株式会社

調査本部 政策調査部 研究員 川口 亮

2015年に利用が急増

ふるさと納税への関心がにわかに高まっている。2008年度に始まったふるさと納税の受入額は、2012年頃までは年間100億円前後の水準で推移していたが、近年急増している(2014年度389億円、2015年度1,653億円)【図】。

【図】ふるさと納税の受入額及び受入件数

その要因としては、ふるさと納税を利用するメリットが広く知られるようになったことがまず挙げられる。ふるさと納税では、基本的に寄付額のうち2,000円を超える部分が所得税・住民税から全額控除される。そして、多くの自治体(都道府県及び市区町村)は、寄付者に対しお礼(返礼)として地域の特産品などを送っている。つまり、ふるさと納税の利用者にとっては、年間2,000円の自己負担で、寄付した自治体から返礼品を受け取れるのである。ここ数年、こうした仕組みがメディアで取り上げられる機会が増え、制度の認知度が高まってきた。

また、2015年からは、2,000円を除き全額控除される寄付金の上限が約2倍に拡大されたほか、確定申告が不要な給与所得者などについて、ふるさと納税先団体が5団体までであれば控除のための確定申告を要さない「ワンストップ特例制度」が始まった。こうした制度改正も近年の利用拡大に大きく寄与したといえよう。

自治体の応援という側面が重要になる

ふるさと納税が急増するなか、自治体の取り組みには最近注目すべき変化がいくつかみられる。

第一に、「モノ」の返礼品競争が激化している。魅力的な返礼品を数多く取りそろえて人気を博している自治体に負けじと、返礼品の拡充や積極的なPRに乗り出す自治体が増えているのである。また、これまでふるさと納税にあまり関心を持たない傾向があった大都市圏の自治体でも、当制度の利用活発化に伴う住民税の流出に危機感を覚え、返礼品の充実に取り組む動きが一部にみられる。

 第二に、いわゆる「体験型」の返礼品が徐々に増えつつある。体験型の返礼品とは、テーマパークや温泉施設の入園券、農業体験やラフティング(ラフトと呼ばれるゴムボートを使って行う川下り)など、寄付者が寄付先に足を運び、参加し楽しんでもらう形の返礼品で、「地域の活性化にとってより効果的」という発想で提供する自治体が現れている。

一方で、ふるさと納税の利用者はどのような意識を持っているのであろうか。

今年1月に読売新聞社が新聞購読者に対して実施した調査によると、ふるさと納税を行った理由として、「興味のある返礼品があったから」(68.9%)、「税金が一部控除されるから」(65.9%)と回答する割合が圧倒的に高く、逆に「故郷の自治体を応援したかったから」(14.8%)、「寄付金の使い途に賛同したから」(14.1%)などの回答割合は低くなっている。つまり、基本的には「返礼品目当て」の意識が強いのが実態である。

ただ、東日本大震災や熊本地震の被災地に対し、返礼品の受け取りを辞退した形での寄付が全国から多く寄せられたという事実もある。このように、特定の自治体を応援するための一つの方法としてふるさと納税が活用されているという側面を見逃すべきではないだろう。

自治体からの積極的なアピールが必要

2017年2月に高市総務相は、ふるさと納税をめぐる自治体間の競争が過熱していることや、換金性や資産性の高い返礼品が一部自治体で提供されていることなどについて、有識者や自治体担当者の意見を聞いたうえで、改善策を検討する方針を明らかにした。

こうしたなかで、自治体としても、ふるさと納税をより良い制度とするための能動的な取り組みが求められよう。例えば、先述した体験型の返礼品を拡充し、特産物以外の地域資源をプロモーションする(売り込む)手段としてふるさと納税を活用するのも一案である。

また、より本質的には、個人が応援したくなるような事業を自治体が積極的にアピールすることも必要と考えられる。現状においては、寄付者は寄付の使われ方に関心が薄く、自治体でも寄付をどのような事業に使うか具体性を欠いたり、活用実績について十分な開示が行われていないところがみられる。本来望まれるのは、仮に返礼割合(寄付額に対する返礼品の実勢価格の割合)が低くても、魅力的な政策や事業を発信し、それに対する「寄付」という形での支援を呼びかける自治体が多く現れることであろう。

モノの返礼品を通じた寄付金の確保に偏った感のあるふるさと納税の現状は、制度が創設された当初の意義とはやや異なった方向を向いているようにもみえる。「モノ(=特産物等の返礼品)の競争」から「コト(=体験/政策・事業)の競争」へとシフトしていくことが、今後のふるさと納税には期待される。

※筆者の肩書は、2017年3月現在

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