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若者を、振り向かせろ

新聞は10代の新しいメディアになれるかもしれない

読売新聞東京本社 読売中高生新聞編集室 記者 藤山純久

「スマホで好きな時間に好きな音楽を聴くのが当たり前の10代にとっても、知らない音楽と出会えるラジオは新しいメディア。それは新聞でも同じ」と言うのは、読売中高生新聞(以下、中高生新聞)の藤山純久記者だ。「活字離れ」と言われて久しい10代との接触から見えてきた、これからの新聞のあり方と可能性とは何か。

── 読売中高生新聞を創刊した背景から聞かせてください。

読売新聞社は2011年3月に小学生を対象にした「読売KODOMO新聞」を創刊しています。背景には若者の活字離れだけでなく、親世代も新聞購読世帯が減っているということがありました。しかし、小学校が終わってKODOMO新聞を卒業して、すぐ本紙の読者に子供たちがなってくれるか。KODOMO新聞と本紙の架け橋になれるような新聞が必要なのではないかということで2014年11月に創刊したのが「中高生新聞」です。

とにかく分かりやすさを追求するKODOMO新聞に対して、中高生新聞は新聞を通して読み手が能動的に何かアクションを起こせるような作りを心がけています。例えば、「友達と議論をしてみよう」という呼びかける結び方や、文末に「〇〇〇なのだそうだけど…」のように余韻を残したり。ニュースから何かを考えてもらえる仕掛けですね。

── 根本的な疑問なのですが、中高生は新聞を読むことに関心を持っているのでしょうか。

中高生新聞の創刊準備は2013年夏から始まりました。最初に行ったのは、私立の中高一貫校の生徒を中心にした聞き取り調査です。そこで感じたのは、中高生の間で思った以上に新聞へのニーズはあるということです。彼らは、大学入試の面接や小論文でも時事問題に関する知識が重要なことはわかっている。自分の進路を考える上でも今の社会を知ることは大切です。でも、ネット上には情報があふれすぎていて、しかも、時にいいかげんな情報も混じっている。自分が興味ある話題を深く知る上では最高のツールですが、自分のために必要な情報、ニュースと出会うのは意外と難しい。

「では、どうすれば新聞を読んでくれるようになるか」率直に聞いてみました。最も多かった意見は、「中高校生向けの新聞をつくればいい」。大人向けの本紙には、彼らの関心のあることや同世代の記事が少ない。それが彼らの新聞への最大の不満なんです。彼らは「老後に盆栽を趣味にする人の話とか、ページの無駄だと思う」と率直に言います。新聞を読み慣れてない彼らは、記事と広告の区別がつかないので、広告スペースも自分たちに関係ない商品ばかりで、全く興味がないとも言っていました。実際には広告なんですが、「ひざサポーターの記事はちょっと…」なんて言われた時には、思わず苦笑してしまいました。

紙面の見せ方についても、いろいろ考えさせられました。目から鱗(うろこ)だったのは、新聞で年表ってよく見ますよね。年表など、記事の理解を助けるために載せる図表のことを“かざり”って呼ぶんですが、全くの無反応でしたね。彼らに言わせると「だって、年表って字じゃん」。「教科書の年表見ないの?」「見ない」「あ、そう」以上、終了。文字通り、年表はかざりでした(笑)。

ニュースって答えがないものなので、自分はどう思うか常に考える習慣を身につけないと、役立つものになりません。結局、そうしたトレーニングができる媒体がこれまで中高生にはなかったわけです。だから、彼らのためだけの情報を集めた新聞を作れば、読んでもらえるのではないかと思いました。

読み切り完全ガイドのニュース面

──具体的にはどういう記事の切り口がありますか。いくつか例を挙げてもらえますか。

巻頭特集から三つ紹介します。まず一つ目は「アメリカ大統領への道」。2月の記事ですが、目指したのは”大統領選の完全ガイド”です。新聞やテレビあるいはネットに日々流れるニュースを理解するために、大統領選の基本ルールを理解しておこうというコンセプトです。選挙にどれぐらいお金がかかるか、なぜ投票は火曜日なのか、州ごとに勝敗の決め方が違う歴史的な背景といったトリビアも入れつつ、大統領選でこれから行われることが一目でわかるような作りにしています。

同世代が大統領選にどう関わっているかも紹介しています。これは、中高生読者にこのニュースをジブンゴト化してもらうための大事なポイントです。

二つ目の例は、「チョコレートの季節」。女子にすごく人気がありました。チョコについてはみんな詳しいですが、カカオが高騰していることは知られていない。その国際的な背景や通貨としても使われていたカカオの歴史、製造工程やバレンタインネタなど、身近なテーマから世界経済、世界史、消費など切り口を様々に提示する。この特集では、問題意識を持って考える楽しさがわかったという意見をたくさんいただきました。

── 学校や学生生活に寄り添った内容もありましたね。

編集方針でもある「リアルな10代の声を集める」の最たる例ですが、4月1日号の「いざ 新生活」という特集です。「新しい環境に適応するためにどうすればいいのか」という新入生向けのものですが、こういうとき新聞はまず専門家に聞いて、となるのですが、中高生新聞では「本当のところは、どうなの」と先輩たち5000人に聞いています。

── 中高生5000人ですか! ネット調査ですか。

いえ、紙に自筆で記入してもらう調査です。読売新聞は「読売受験サポート」という中学受験情報サイトを運営していて、その会員校が私立の中高一貫校を中心に70校あまりあります。それから、学校と企業を結ぶというコンセプトで学校への出前授業などを行っている「読売教育ネットワーク」に参加している中学、高校も150校ぐらいあります。アンケート調査ではこれらの学校に協力をお願いしました。「自分たちもそうだったんだ」という先輩の声って、やっぱり圧倒的な説得力がある。この記事には「不安だったけど、安心しました」という反響が数多く寄せられました。

── 中高生は同世代の言うことなら聞く耳を持つと。

最近は親の言うことを聞く子供が多いらしいですが、個人的には、大人の言うことを疑うくらいの子供のほうが健全だと思います。中学、高校生ぐらいになると、大人は嘘をつくし、自分の親が自分で言うほど品行方正じゃないということも知っている。先生がパーフェクトな人間だと信じている10代がいたら逆に怖いですよね。

ただ彼らも、例えば中東問題のように同世代に聞いてもわからない話題については、専門家の意見を積極的に聞きたがります。ですから、5月20日号の伊勢志摩サミット特集でも、北海道洞爺湖サミットを経験した外交官に登場してもらって、サミットでの外交官の役割の話をじっくり聞くというような掘り下げ方をしています。

フィーチャー面はエッジをきかせる

── 中高生新聞にはニュース面だけでなく、フィーチャー面もありますね。

フィーチャー面は「エッジをきかせる」のが基本です。我々としてはニュースを毎週楽しみに読んでほしいと思っていますが、読者に「この新聞を取り続けたい」と思ってもらうには、ここだけは読むというコーナーを作ることが大事です。読者の50%が「まぁ、このコーナーは読むよね」ではなく、読者の5%が「これだけは毎週読みたい」と思える企画。そんな企画が10本もあれば、それはスゴイ新聞になる。

── フィーチャー面には、どんなものがあるのでしょうか。

見開き面には、読者世代と年齢の近いジャニーズJr.のメンバーが月替わりで登場するコラムがあります。本当に小さいコラムなんですが、アイドル誌とは違う新聞テイストな記事がファンからも高い評価を得ています。同じ面のコラム「番外地」もじわじわと人気が出ているコーナーです。芸能人が意外な趣味を語るのがコンセプトで、アンガールズの田中卓志さんに紅茶を語ってもらったり、乃木坂46の堀未央奈さんにホラー映画を語ってもらっています。キモキャラの芸人さんと紅茶、トップ人気アイドルとホラー映画。ここでしかない組み合わせだと思っています。

バラエティーコラム「番外地」

学習面も同様のコンセプトです。例えば、英会話イーオンの監修でお届けしている「ティーンのぶっちゃけ!英会話」。コンセプトはアメリカの10代がリアルに使う英会話表現です。「Friendly fire? Really?(同士討ち?マジかよ。)」とか「OMG!(オーマイゴッド!)」とか学校ではほとんど習わない表現を取り上げるようにしています。学校のテストや受験勉強にはどうかという感じですが、いつか海外に留学したい中高生には絶対役立つ、と胸を張れるコーナーです。

「ティーンのぶっちゃけ!英会話」

メディアはゼロサムではない

── 先ほどアンケートの話が出ましたが、中高生の声はほかにどのように聞いているのでしょうか。

ウェブ調査なども行っていますが、力を入れているのが、現役中高生から、じかに紙面への意見を聞く「みんなの編集会議」という企画です。あらかじめ中高生新聞をじっくり読んでもらい、紙面の感想を聞くという取り組みで2か月に1回くらいのペースで行っています。参加者は5~10人程度。巻頭特集、気になった記事、改善案について、だいたい90分ぐらいかけて聞きます。記事には点数を付けてもらっていますが、その評価も正直に紙面に掲載しています。

「みんなの編集会議」、右側が記事の採点

中高生向けの新聞を作る際に大事なことは、仮説は立てるけど、自分たちの感覚を信じすぎないことです。私たちが学生の頃と今とではメディア環境は激変しています。中高生のリアルな声に耳を傾けず、「こうに違いない」「これは鉄板」などという感覚で紙面作りを始めた瞬間、10代との乖離(かいり)が生まれます。そもそも中高生新聞は実験的な媒体。若い人の反応や感想を聞きながら、どんどん新しい企画を生み出していかなければいけないと思っています。

そうした取り組みの一つが投稿アプリ「Yteen(ワイティーン)」です。彼らが一方通行の、上から押し付けられる情報を嫌うというのは、創刊前のヒアリングからわかっていました。そこで読者参加の仕組みを作りたいということで、紙面の投稿面と連動したアプリを開発しました。トラブルを避けるため投稿された意見は掲載前にすべて中高生新聞の編集室がチェックしますが、同年代で議論が楽しめる環境を作りたかったんですね。

これは、僕自身の考えですが、新聞かウェブかとか、新聞かテレビかとかいうゼロサムで考えていることが間違っていると思うんです。僕は毎号、5分でも目を通してもらえ、その中に「へぇ」とか「なるほど」という感情が一つ二つでも起きれば中高生新聞を購読し続けてもらえると思っています。今の時代、ウェブだけ、テレビだけ、新聞だけで生きていけるという人はいない。むしろ、彼らのライフスタイルの中に、どうやって新聞が入っていけるかを深く考えるべきだと思っています。

象徴的な話ですが、今の10代にとってラジオは新しい媒体に映っています。彼らにとって音楽はスマホで好きな時間に好きな曲を聴くのが当たり前になっていますが、YouTubeの動画など、スマホだと自分の選んだ好きな曲しか聴けないが、ラジオは知らない曲と出会えるメディアなんですよね。新聞でも全く同じです。彼らは新聞を「読まない」と拒否しているわけではなくて、そもそも新聞を「読んだことがない」。だから、中高生新聞という未知の読み物が家庭に届いたとき、これを新しいと感じるかダサいと感じるか、へぇ、おもしろいという感動があるかどうか、そこがすべてなんですよね。

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