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見出し、大事ね。

ヤフー・ニュースの見出し編集
クリックしたくなる 13文字を

ヤフー株式会社 ディアカンパニー ニュース事業本部 編集部 苅田伸宏

月間PV数は128億を超え、幅広いユーザーが視聴するYahoo!ニュースには、約200社・300媒体がニュースを提供している。その中で最も注目されるのがトップページに掲出される13文字8本の見出し、Yahoo!ニュース トピックスだ。ネットニュースにおける見出しの役割とは何か。編集部の苅田伸宏氏に聞く。

同じ字数で変わるアクセス数

── Yahoo!ニュースの見出しは、なぜ13文字なのでしょうか。

正確には英数半角、スペースを含めて13.5文字なのですが、これはパッと見て把握しやすい文字数ということで、過去、いろいろ試行錯誤した結果です。スタート当初は11文字だったのですが、さすがに制約が大きすぎるということで今の字数に落ち着いています。

トップページのYahoo!ニュース トピックス

── 同じ13文字でも、見出しによってアクセス数は変わるものなのでしょうか。

エンジニアが開発してくれた「A/Bテストツール」があります。一つのニュースに対して複数の見出しを用意して実際に一部のユーザーに掲出し、アクセス数をリアルタイムに比べられるツールです。

昨年3月5日、テキサス・レンジャーズ所属のダルビッシュ投手がオープン戦に登板しましたが、そのとき右腕の張りを訴え、わずか12球で降板したというニュースがありました。そのとき、3つの見出しで「A/Bテスト」をしました。

■ ダルビッシュ わずか12球降板
■ ダルビッシュOP戦 12球降板
■ ダル腕に張り わずか12球降板  

結果はどうだったのか。最も読まれたのは「ダルビッシュ わずか12球降板」、最も読まれなかったのは「ダル腕に張り わずか12球降板」、「ダルビッシュOP戦 12球降板」が真ん中という結果でした。︎

まず議論になったのが、ダルビッシュ投手の呼称です。「ダルビッシュ」の文字数は全角で6文字。13文字という限られた文字数の半数近くを占めてしまうと、そのほかの要素を見出しに盛り込むことが難しくなってしまいます。それで、それまでも「ダル」と省略することが多かったのですが、多くの編集部員からは「これからは“ダル”の使用を禁止すべきではないか」との意見が出ました。

一方、「“ダル”使用禁止」論が沸き起こる中、「ダルビッシュかダルか、という問題よりも、他の部分で数値を分けたのでは」という声もあがりました。最も読まれなかった「ダル腕に張り」は、おそらく「ダル腕」と読めてしまって、ダルビッシュのことだとすぐわからなかった可能性がある。ダルという省略ではなく、「ダル腕」がいけなかったのではないか。同様に、「ダルビッシュOP戦」は、OP戦がオープン戦だとパッと見てわからなかったからではないかという意見も出ました。少なくとも“ダルビッシュ”の表記だけが数値が上がった要因とは言い切れないということで、「ダルかダルビッシュか論争」に決着はつかず、現在も継続して研究中です。

見出しは相互チェックで

── ほかにもA/Bテストの結果があれば、紹介してもらえますか。

もう一つの例は、昨年の夏の甲子園1回戦、敦賀気比(福井)が勝利の校歌を斉唱していた時、音楽が止まってしまいアカペラで熱唱したというニュースです。3つの見出しは、

■ 校歌中断 甲子園で観衆手拍子
■ 甲子園勝利の校歌 音楽止まる
■ 甲子園珍事 アカペラで校歌

「甲子園」と「校歌」という要素は、すべての見出しに盛り込みました。あえて要素を同じにして、どの要素をどういう順序で並べたほうがより多くの方に読んでもらえるかを検討しました。例えば、最初に甲子園を持ってきたほうがいいのか、それとも校歌中断という出来事を最初に持ってきたほうがいいのか、アカペラというワードを入れるべきか否か、といったことです。

いちばん数値が高かったのは、1番目の「校歌中断 甲子園で観衆手拍子」でした。この結果について編集部で議論しました。その結果、「校歌中断」という具体的でインパクトのあるフレーズが前半にあること、さらに後半の「観客手拍子」というポジティブな要素と落差があることが数値の高さにつながったと推測しました。

── 具体的に、どういう仕組みでニュースに見出しをつけているのでしょうか。

Yahoo!ニュース トピックスには、常に8本の見出しが並んでいますが、だいたい30分から1時間に2、3本の割合で更新され、1日のうちトップに並ぶのは80〜100本です。これは、4000本のニュースの中から編集スタッフが13文字の見出しをつけるなどの作業を経て掲出しているものです。

コンテンツパートナーから配信される記事は時系列でスタッフのモニターに表示されます。その中から、トップで紹介するニュースをどれにするかをまず考えます。ニュースを選んだら、13文字の見出しをつけ、関連リンクをつけて掲出するというのが大まかな作業の流れです。

── ジャンル別に担当がいるわけではない?

記事を選ぶのは、そのときのスタッフ全員です。記事を選ぶ人、見出しをつける人というような役割分担はなく、全員が全ジャンルを見ています。その代わり、グループチャットを使って選んだニュースや見出しは相互チェックする体制を取っています。ダルビッシュや校歌中断のA/Bテストの検討も、グループチャットを使って実際の編集作業と同時並行して行われたものです。

ダルビッシュが12球で降板したときのニュースの見出しについて議論したときの編集部専用のグループチャットの会話履歴(時間の流れは上→下)

「公共性」もニュースの選択基準

── 最近はスマホからのアクセスも増えていると思うのですが、見出しのつけ方に影響しているのでしょうか。

Yahoo!ニュース全体では月間128億アクセスありますが、スマホからのアクセス数がPCを初めて超えたのは2014年6月で、現在はスマホからの利用のほうが多くなっています。PCとスマホで、見出しを出し分けることはしていませんが、スマホは画面が小さいですし、立って見ることも多いですから、ひらがなやスペースを入れて、すんなり理解できる見出しのほうが読みやすいのではないかと思います。

それから、スマホのユーザーのほうがやはり年代が若いので、若めの年代の関心事がよく読まれます。例えば、サッカーや子育ての話題は、PCよりスマホのほうが読まれる傾向があります。やはり、政治・経済・国際などの硬い記事は、PCでより読まれるように思います。

── 選ぶ記事も、そうした若い読者に合わせているのでしょうか。

それはありません。記事を選ぶときは「社会的関心事」と「公共性」の二軸で考えています。やはりビジネスとしてニュースを提供していますので、人が集まらなければサービスを維持できなくなります。とはいえ、単純にクリック数を稼ぐのであれば、「社会的関心事」であるスポーツやエンターテインメントの記事だけ並べておけばいいのかもしれませんが、それではニュースメディアとして信頼をしてもらえないし、私たちの社会的な使命も果たせない。読まれにくいニュースであっても公共性の高い政治や経済、大きな事件・事故を取り上げることがニュースメディアの役割だと考えています。

── Yahoo!ニュースと他の報道メディアの見出しのつけ方の違いについて、最後に聞かせてください。

やはり新聞や雑誌の見出しとは違うと思います。新聞や雑誌は見出しのすぐ脇に記事がありますが、ネットは見出しをクリックしてもらわないことには、記事を読んでもらえない。それだけ、見出しのつけ方が重要になるということです。そのためには、先ほどの「A/Bテストツール」のようなネットメディアならではの強みを生かして、反響をリアルタイムで検証しながら、見出しの精度を高めていくことが重要だと思います。ただし、その場合も、「社会的関心事」と「公共性」の二軸で考えるという原則は踏まえつつ、見出しのノウハウはこうだと固定しないことが大事だと思いますね。

実は僕自身、ヤフーに来る前は12年半、新聞記者をしていました。取材して記事を書くことは楽しかったし、充実感もありました。しかし、インターネットが出てきてニュースの消費のされ方が多様化していく一方で、新聞や雑誌の優良なコンテンツが流通していないという実感もありました。ヤフーの集客力、流通力を使って、そういう優良なコンテンツを見出して流通させたいというのが、今の仕事を選んだ理由です。その大きな力になっているのが、「13文字の見出し」だと思います。

Nobuhiro Karita

2001年、毎日新聞社入社。盛岡支局、東京本社社会部、大阪本社社会部で新聞記者として計12年半働く。2013年11月、ヤフー入社。以来、トップページの記事や関連リンクの選定など、編集チームの一員としてニュースの理解を深める情報パッケージの制作にあたっている。

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