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読売新聞 海外駐在員リポート

from America

ニューヨークというグローバルな発信拠点の活用

米国企業にとっても、アメリカでビジネスをする海外企業にとっても、ニューヨーク(NY)はマーケティングの重要都市だ。都市別GDPでは、NYよりも東京が高いが、英ゼニスが発表した2017年の都市別広告費予測によると、NYは世界1位の150億ドル、東京は2位の130億ドルが投下される見込みだ。NYの背後には世界最大の米国市場があることを考えれば当然ともいえるが、NYには全米の起点以上の価値がある。

NYという「街」の価値を高めてきたのは、世界に向けて発信してきた広告だ。ニューヨーク州は19 77年に「I ♡(LOVE) NY」のロゴを使った観光キャンペーンを開始。このキャンペーンが奏功し、NYを訪問する海外からの旅行者数は過去最高を記録した。この勢いは止(とど)まることを知らなかったが、2017年はトランプ大統領の入国制限などの政策や姿勢が影響し、リーマン・ショック後の2009年以来の前年割れとなる見込みだ。

この対策として、前年から使用してきた広告のメインコピーを「Welcoming the world(世界を歓迎している)」に差し替え、ニューヨーク市内および、イギリス、ドイツ、メキシコ、スペインの海外四か国で、キャンペーンを実施すると発表した。NYの最大の価値とは多様性と包括力であり、世界中の人々にその価値と、歓迎する姿勢を伝えることが目的だという。新コピーの発信は、短期的な旅行者の確保だけではなく、「ニューヨーク」というブランドの強化にもなる。

ニコンは、NYの街の価値を利用した広告を実施している。同社が3月からスタートさせた「Love Letters from the N Line」はNYの写真をSNSに投稿してもらうキャンペーンだ。舞台となっている「Nライン」はマンハッタンの中心部を通り、多くの地元民や観光客が利用する地下鉄で、路線マークは黄色に黒字の「N」。ニコンのロゴの配色と「N」の文字が一致している。Nラインの主要駅タイムズスクエア駅やユニオンスクエア駅には、ニコンのカメラで撮影されたNYの写真や、街の好きなところをラブレター風にした文、写真の投稿を促すハッシュタグ「#NikonLoveNY」が記載された交通・屋外広告が大々的に展開された。プロ・アマを問わず多くのユーザーが写真投稿に参加し、インスタグラム上の#NikonLoveNYが付いた投稿数は本稿執筆の5月下旬時点で1万件を超えている。人気の写真には4000件以上の「いいね!」が寄せられていて、広告接触者以外にも拡散されたことがわかる。

このキャンペーンは地元愛の強いニューヨーカーに訴えかけると同時に、全米、そして世界中から集まってくるカメラと親和性の高い旅行者との接点も作り出した。さらに、ハッシュタグの付いた写真はSNSと特設ページにもアップされ、写真映(ば)えのするNYという街を媒介にして全世界の人たちにもニコンのブランドイメージを発信することに成功した。世界中の人から注目が集まるNYの特性を生かすことで、エリアマーケティングから、全米、グローバルに届くマーケティング・キャンペーンへと発展させた事例だ。

ビジネスを含む旅行者と移住者を世界中から受け入れる多様性と包括力が、経済規模に加え、世界への発信力というNYの付加価値を生み出している。グローバルな発信拠点として世界中の企業がNYの発信力を活用する。これが唯一無二のニューヨークという都市なのである。

金田明浩 ニューヨーク駐在

ニューヨークの至る所で見かける「I ♡ NY」グッズを今回初めて購入してみました。ロゴは、現在、州の経済開発局が管理していて、ライセンス・ビジネスを実施しています。2011年のデータによると、その収入は年間3000万ドルとのこと。40年前のキャンペーン・ロゴがブランド価値を高め続け、更に多額の収益を生んでいるとは驚きです。

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