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読売新聞 海外駐在員リポート

from Asia

紙がもたらす日本の文化

私の仕事をサポートしてくれているタイ人女性は、日本のマンガやアニメが大好きだ。『黒子のバスケ』『黒執事』といった人気作だけでなく、私も知らないマイナー作品についてもとても詳しい。時間があればスマートフォンで動画コンテンツやSNSを楽しむ彼女にとって、日本のマンガが、紙媒体に触れる数少ない機会になっている。日本文化に馴染みが深いタイの若者にとって決して珍しいことではないのだが、今後は紙に触れる機会が大きく増えるかもしれない。そう考える理由は、先日タイ出版大手のアマリンが立て続けに発表した、日本の出版社および新聞社との協業内容にある。

ひとつはKADOKAWAとの合弁会社の設立だ。事業内容は観光メディア事業や電子書籍プラットフォーム整備事業のほかに、マンガやライトノベルの翻訳出版が含まれる。親日で日本の文化への関心が高いタイでは、マンガの人気も高く、今年2月には日本のマンガ・アニメ専門店「アニメイト」も進出するなど、今後も成長が見込まれている。アマリンにとっては日本の優良コンテンツを扱えることとなり、KADOKAWAはアマリンが抱える取次や200軒を超える書店網・販売網といった流通インフラの活用が期待できる。販売ルートの確保は、海賊版対策とも相まって日本の出版社にとって頭が痛い問題であり、これの解決は急務だったといえる。「クール・ジャパン」の名のもと、日本のマンガやライトノベルは、タイ以外の出版産業・文化にも大きな影響を与えていくことだろう。

もうひとつは、朝日新聞メディアラボおよび博報堂と提携して発行する、小学校高学年向けフリーマガジン『みっけ』だ。これは忍者姿のオリジナルキャラクターが、イラストや身近な話題を使いながら学習内容に引き込んでいくという、日本の子ども向け新聞・雑誌ではよく見かけるスタイルだが、タイでは一般的ではない。ではその狙いはというと、単に目新しい子ども向け紙媒体発行ということだけでなく、日本式教育スタイルの普及にある。

たとえば、タイでは若者がマンガを好む一方で、子どもに本を読ませようという風潮はあまりなく、大人でも読書に積極的な人は多くない。そこで、教育現場での『みっけ』活用方法を紹介し、さらには日本で一般的になっている朝の読書運動を取り入れてもらうことで、小さい頃からの読書習慣を推奨する。また、日本でも家庭学習の好事例として話題になる「秋田式ノート」なども紹介し、導入を後押しすることで、自主的に学ぶ姿勢も身につけてもらうといった具合だ。

先述の通り、タイでは紙媒体に触れる機会に乏しいが、読書習慣を浸透させ、学習意欲を高めることが、近い将来には出版社や活字文化を支える基盤になっていくことだろう。

日本のマンガという「エンタメ」、子ども向け媒体による「学習」。紙媒体による2つの異なる方向からのアプローチが、タイの出版業界に影響をもたらそうとしている。日本の新聞・出版業界は、部数や売り上げの減少に苦しんでいるが、アマリンとの取り組みは、長年培ってきたコンテンツや活字文化には海外においてはまだまだ活用の余地があることを示している。海外への「日本の紙媒体ビジネス」のサービス輸出を新たなビジネスチャンスと捉えるとともに、その推進過程そのものが、我々が紙の価値を見直し進化させていくきっかけにもなるように思う。

藤木康裕 バンコク駐在

食を知ることは、文化を知ること。せっかくの機会なので、タイ料理を習っています。調理方法は意外とシンプルなものが多く、これなら日本でも手軽に作れそうです。コブミカンの葉、パンダンリーフ、ガランガ…。材料をそろえるのは大変そうですが。

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