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読売新聞 海外駐在員リポート

from America

「紙か、デジタルか」の先へ

アメリカでは新聞をはじめ様々な媒体のデジタル化が日本より進んでいるが、「紙」そのものの価値や評価が年々下がっているかというと、そうではない。むしろ揺り戻しといえる状況にある。

昨年、米国の流通企業「J.C.ペニー」は紙のカタログを5年ぶりに再発行した。同社はオンライン顧客の増加と実店舗での接点強化を理由に紙のカタログを廃止していたが、紙のカタログを見て興味を喚起された消費者がオンライン経由で購入する事例を目の当たりにし、きっかけを与えるためにはオンラインではなく紙のカタログが必要だと判断したという。同社以外の複数の百貨店は紙のカタログを発行し続けているし、アパレル企業の「J.クルー」もカタログを強化していて、流通企業にとって紙のカタログが重要な販促ツールであることがわかる。

紙のカタログの重要性は、ITの力を駆使する新興企業にも認識されている。2007年に創業したアメリカのメンズアパレル企業「Bonobos」もその1社だ。同社はオンライン販売を主体としていて、「Guideshop」と呼ばれる実店舗は試着や体験のみ提供し、商品決済はネット経由で行う業態を取っている。そのような最先端のビジネスモデルを取り入れ、ウェブに軸足を置いている企業が、アナログ媒体である紙のカタログに力を入れている。同社は2013年に紙のカタログの発行を開始し、年々発行回数を増やしている。紙のカタログが企業や製品の世界観を伝えるのに適していて、カタログ読者の購入額はそうでないユーザーより高く、優良顧客を囲い込むのに適した媒体と考えているのだ。オンラインという購入経路の重要性は高まる一方、その入り口として紙媒体の価値も見直されていることがわかる。

電子媒体と比べて、いくつかの点で紙の方に優位性があることはデータとしても見て取れる。印刷物や紙の持続的な使用を促進する団体「Two Sides」がアメリカで行った調査によると、情報を理解・活用できた割合では、情報源が紙の人では88%にのぼるが、電子媒体の場合では64%だった。また紙と電子媒体の選択肢がある場合、81%の人が紙で読むことを好むと回答している。広告に関しても、紙の新聞の広告注目率は60%だが、電子版新聞の広告注目率は29%に留まった。デジタル機器の利点や費用を加味していないので、これだけでは紙の方が優れているとは言えないが、「理解」や「注目」という点では紙媒体に利があることがわかる。

デジタル機器とインターネットが進化・普及し、「デジタル」が当たり前の生活となった現在でも「アナログ」である紙と紙媒体は企業と人々に求められ続けている。それは前述の事例とデータが示す通り、紙媒体だからこそ伝わる情報があるからだ。だからと言ってデジタルとインターネットの利便性が否定されるわけでも、アナログと紙だけで全てが完結できる時代でもない。それぞれを競合として考えるのではなく、それぞれのメリットを両立する仕組み作りが求められている。それがどれだけ難しいことかは新聞社で働く者として痛感しているが、そのビジネスチャンスに最も近いのは、インターネット企業ではなく新聞社か雑誌社のいずれかだろう。「紙の生き残り」や「デジタル企業への転換」というように個別に考えるのではなく、特性を融合させたビジネスモデルを構築することがこれからの新聞社の命題である。

金田明浩 ニューヨーク駐在

アメリカに来てから日本の新聞や書籍をデジタル版で読む機会が増えました。デジタル版の利便性を感じるとともに、日本からの輸入本は高くなるので費用面でも助かっています。とはいえ、「やはり紙の本を読みたい」と感じるのは新聞社で働く人間だからなのでしょうか。

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