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読売新聞 海外駐在員リポート

from Europe

デジタルの世界にも“おもてなし”を

欧州のラグジュアリーブランドは、パリやブリュッセルでのテロの影響などで、成長が鈍化している。この厳しい状況の中、今後の成長が唯一見込めるイーコマースに各ブランドは注力している。約10年前はラグジュアリー市場全体の1%しかなかったイーコマースのシェアが、2015年には7%まで拡大しており、その大きな要因は中国のネット購入人口の増加によると言われる。しかし、ひと口にイーコマースと言っても、ラグジュアリー業界にとっては高級感やきめ細かな顧客サービスが生命線であり、デジタル空間において消費者を惹(ひ)きつけるプレミア体験を提供するには、大変な工夫が必要になる。

例えば仏エルメスが提供するオンラインショップ「La Maison des Carrés(スカーフの家)」では、美しい宮殿のようにデザインされた空間でのショッピングを体験できる。スカーフにまつわるストーリーや多様な巻き方を動画で視聴でき、コンテンツの魅力で商品に付加価値を与えている。また、シームレスな顧客サービス実現のため、郵送による返品も含めて全ての送料を無料とし、実店舗では知り得ない充実したコンテンツと同時に、店舗と変わらない顧客サービスも提供している。

英バーバリーは、デジタル技術を駆使し、ユーザーに新発見をさせる体験を提供して成功している。グーグルとパートナーを組んだ双方向型のキャンペーンBurberry Kissesでは、キスマーク付きのメッセージを世界中の好きな人に送信できるプラットフォームを提供し、口紅を含む新作の美容製品を訴求した。人間味のあるキスマークと最新のテクノロジーを組み合わせて、様々なデバイスでユーザー同士が交流できる空間を提供することで、ブランド体験を維持しつつパーソナライゼーションを実現している。

英国のメディアグループであるTime Outにも触れたい。世界39か国、100以上の都市のレストラン、エンターテインメント、ショッピングの情報を提供しており、写真を大きく使い、読ませる見出しを取り入れた自社サイトが特徴となっている。東京を例にとると、インバウンド向けの英語サイトもあり、ランキング形式でレストランやイベントが紹介されているため、旅行者が自分の志向に合ったタイムリーな情報を入手できる。サイトから予約されたレストランやチケットからは、コミッションが支払われるため同社の収入となり、順調に売り上げを伸ばしてきた。リアル展開にも進出し、2014年にはリスボンの市場だった建物を、有名レストランを集めたフードコートに作り替えて成功を収め た。ロンドンやマイアミ等への進出も計画しているそうだが、これらは、リアル施設もオウンドメディアであるという好例だろう。

どの事例においても、そこでしか得られないストーリー性のあるコンテンツや、ユーザーニーズに合致したパーソナライゼーション、さらにはリアルでの体験を、オウンドメディアにおいて実現することに努力し、ユーザーにとって価値あるものとなるように工夫している。イーコマースの世界では、1時間以内の配達も可能な「巨人」アマゾンがあるが、これだけの顧客体験を提供できるのは、やはりブランド力のあるオウンドメディアだからこそだ。今後、デジタルの世界においても、価値あるコンテンツで上質な顧客体験を提供することが求められる。いわばデジタル世界での“おもてなし”であり、これは日本が得意とするところではないだろうか。

国友 俊 パリ駐在

仏で開催されたサッカー欧州選手権。想像以上の盛り上がりで、特に仏が勝利した日は街がお祭り騒ぎとなる。ビールとPringles(プリングルス)片手にテレビ観戦と思い、スーパーに向かうとパッケージがPringoooals(プリンゴールズ)に。思わず手が伸びてしまった。

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