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読売新聞 海外駐在員リポート

from Asia

生活シミュレーションで見せる未来予想図

赴任前、保険の見直しを勧められ、保険会社のサイトでシミュレーションを行った。年齢や職業などを元に、老後に必要な資産などをきめ細かく紹介してくれるものの、並んだ金額だけを見ても実感を持つのは難しかった。私に限らず、未来のことはわからずとも「何とかなるだろう」「たぶん大丈夫」という気持ちが、保険の情報収集や加入の壁になると思うが、オウンドメディアの活用でこの心理的な壁を打ち壊し、新規問い合わせを前年比8%増やした香港の事例を紹介したい。

物価の高さで有名な香港だが、過去25年での物価上昇率は、年平均3%を上回る。対して、所得の伸びがそれに追いつかず、生活を切り詰めてやりくりしている人も少なくない。この状況をうまく捉えたのが、マニュライフ香港のキャンペーン「2040年の生活費」である。その名の通り、キャンペーンの舞台は2040年。その舞台を体験するための中核をなしたのが、オウンドメディアであるキャンペーンサイトだ。

サイトではまず、「2040年の老後」として、「物価上昇でスナック菓子を買えない人たちに『1枚入りポテトチップ』が人気」「地価高騰の影響で狭苦しい『立ったまま寝る家』が増加」といった記事やニュース風の動画を紹介。「まさか」と思いながらも、作り込まれた話題につい見入ってしまう。

未来の滑稽な生活の様子を楽しんだ後にあるのは、「老後に必要になる資金のシミュレーション」だ。46の商品・サービスの中から、自分の生活に不可欠なものを10点選ぶ。私も試しに、「牛乳」や「長距離旅行」などを選択したところ、約200万香港ドル(原稿執筆時点で、約2680万円)という結果。ただしこれは現時点での数字で、物価上昇を考慮すると約440万香港ドル(同じく、約5896万円)に跳ね上がる。所得より物価の伸びが大きく、そして何より、定年を迎えているという想定では、数分前まで興味本位で見ていた「2040年の老後」が、もはや他人事や笑い話ではないことに気づく。

サイト内には「商品紹介」「専門家による老後のヒント」、そして「問い合わせ」もある。特段凝った作りではないが、シミュレーションで老後に対し危機感を持った人であれば、真剣に見ることは想像に難くない。

このように、このキャンペーンでは、オウンドメディアが保険の自分ごと化に大いに役立ったわけだが、より効果的に展開するためにペイドメディアも積極的に利用した。「この25年で、物価はこんなに上昇。では、次の25年では?」といった内容のテレビCMや新聞広告で、時間の流れとともに世の中が変わるということを意識させた。どれだけ内容が充実していたとしても、必要性を感じていない人はなかなか訪れないであろう保険会社のサイトだが、マス媒体でも危機感を煽(あお)ることで関心者のすそ野を広げたわけだ。

何かを「シミュレーションする」という作業は、能動的であったり、個別の結果が出てきたり、シンプルながら確実な自分ごと化の方法であり、オウンドメディア活用法のひとつだろう。ただ、おそらく、それだけでは十分ではない。「2040年の生活費」が不安や驚きを感じさせその後の行動を加速させたように、感情が揺さぶられた時に、その効果が最大限発揮されるのだと思う。メディアによって機能や役割は違えども、「心を動かす」というのが、やはりすべてのコミュニケーションの基本ではなかろうか。

藤木康裕 バンコク駐在

雨季に突入して2か月。ほぼ毎日、スコールが降ります。不思議なことに、私が建物の中に入った瞬間に雨が降り始めたり、外に出ようとすると止んだりで、未だ傘要らず。日本で晴れ男の自覚はありましたが、スコール相手にも実力を発揮できるとはつゆ知らず。

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