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読売新聞 海外駐在員リポート

from America

企業のメディア化は、本業メディアを脅かすか

今号の特集に際して、「本誌もオウンドメディアだ」と今更ながら意識し、もっと新聞を売り込むリポートを執筆した方がいいかと思ったが、それは逆効果なのかもしれない。

米国ホテルグループの「マリオット」はセールスを前面に出さないサイトを運営し成功を収めた。同社のオウンドメディア「マリオット・トラベラー」は、アメリカ主要都市などの観光・カルチャー情報を毎週掲載している。サイト下部や記事一覧には本サイトへの誘導はあるものの、記事などは旅行情報サイトと差を感じない。同社の方針として、良質な情報提供とユーザーを楽しませてファン形成することを第一の目的とし、セールスはその先に付いてくるものと位置づけている。その方針は成功し、サイト経由で90日間に約7200部屋の予約が入ったという。

このサイトの制作・運営主体は、同社の社内制作チーム「Marriott's Creative and Content Studio」だ。制作チームは2014年に設立され、元テレビマン、雑誌編集者、旅行ジャーナリストなどメディア企業顔負けの人材を集めている。同チームは、サイト運営に留まらず、テレビや映画のようなクオリティーでオリジナルムービー「ツーベルマン」・「フレンチキッス」などを制作し、コンテンツ・マーケティングを推進している。

同社の施策は、オウンドメディア強化という次元を超え、制作力を持ったメディア化といえる。実際、マリオット・トラベラーには、他業種のネイティブ広告が掲載され、外部から収益ないしトラフィックを得ており、メディアビジネスそのものだ。

特にBtoB企業は、情報提供サイトを運営し、メディア化しているところが多い。BtoB企業にとってはターゲットの囲い込みが重要にもかかわらず、適切な広告媒体が少ないという悩みを抱えており、であれば自社がメディア化するメリットは大きくなる。ソフトウェアの「アドビシステムズ」もその一社で、マーケティングに関する情報を集めたサイト「CMO.com」を運営している。サイトではマーケティング業界誌並みの論評やコラムが毎日更新されているが、広告・企業アピール色は薄く、メルマガの登録などによる接点の創出に終始している。

同サイトはユーザーの拡大を目指し、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)電子版「CMO Today」面のスポンサーとなった。画面上では、WSJの編集記事一覧とCMO.comの記事一覧が左右に並んで掲載され、クリックするとCMO.comに直接移動する。インフィード形式ではないが、記事と同じ体裁で掲出されるネイティブ広告である。CMO TodayもCMO.comもマーケティングに特化した内容であるため、ユーザーはどちらも有益な情報と受け止めたであろう。良質な記事が毎日掲載されるオウンドメディアを運営しているからこそ実現できた手法だ。

企業のオウンドメディア戦略の推進、メディア化は、既存媒体の「制作力」という強みを消す危機的状況といえる。一方で、コンテンツを求めるユーザーがメディアに集まるという点では、内容とターゲットが合致すれば、ユーザーをオウンドメディアに送客する役割を担うことができる。また日本では、アメリカと違い人材の流動性が低く、企業がオウンドメディアの運営体制をつくり難い。その問題にメディアの知見を生かしたソリューションを提供できた時、オウンドメディアの隆盛という危機は大いなるチャンスとなる。

金田明浩 ニューヨーク駐在

NYの公衆電話がタブレット内蔵無料Wi-Fiスポット兼電話機に置き換えられています。機器には広告用ディスプレーがあり、その収益で無料提供されます。公衆電話の進化と広告メディア化、良いアイデアです。壊されないか心配ですが、治安改善の証しともいえます。

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