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プランナーは企画の0から1を生み出す責任の重い仕事(畑中翔太氏 博報堂ケトル)

7月7日、晴れ。
「夏も本番だし、ガッツリ夏感出しながらインタビューしよう」と無邪気に赤坂のど真ん中のカフェ(しかもテラス席)をロケ場所に押さえていた私たちは焦っていた。その日は都心でも36.7度にまで気温の上がる猛暑日で、テラス席に出ている人なんか皆無。長時間いると危険なレベルだ。今日の博報堂ケトルのプランナー畑中さん、こんな暑いの嫌がるよなあ~??

── すいません。こんな暑い日にこんな暑いところ設定して。

大丈夫ですよ。夏好きですし。

── な、夏、お好きなんですか?

夏とか夏前あたり、すっごい好きです。

── へ~そうですか~。いいですよね~夏。どういうところ好きなんですか?

恥ずかしい言い方なんですが、今“センチメンタルな体験”をすごく追い求めてる節があって。実は僕、子どもの頃すごくインドアで思春期に“センチメンタルな体験”してこなかったんです。例えるなら「田舎の中高生の夏の思い出」みたいなもので、よく映画やPV、アニメなんかで見るあの風景です。高い雲、河原の水音、セミの鳴き声みたいな…。そういうものに憧れているので、大人になってから毎年伊豆の河津に遊びに行っていて、あるのは山と川だけ、とにかくそれを感じに行くみたいなことをやっています。それかそういう夏センチメンタルなPVをずーっと観たりとか…(笑)。なんかそういう原体験みたいなものを追い求めてるところがありますね。休みの日にテクノロジーとかに触れようとか全く思わないです(笑)。

河津の写真(ご本人提供)。山、川、緑。

── いいですよね~原体験。大人になって感じる原体験の貴重さ(笑)。

はい。ほんと好きですそういうのが。しかも、そういう原体験って、仕事でも特に映像とか演出の部分でそこの深さが生きてくるんですよね。あの「夏休みにさ、やることもなく校庭まで自転車で走ったあの感じ」とかなるべく細かく。そこも言わないとプランナーの仕事にならないんです。

── そうそうプランナーですよ。今回、プランナーに話を聞くっていう新コーナーなんです。プランナー、ズバリ、いかがですか?

プランナーって、会社によって定義というか意味合いが違うようなんですが、私のいる博報堂ケトルではどの会社さんよりもその意味は重いような気がしています。企画から最後のディレクションまで何でもやれる「何でも屋」みたいなもので、さらにそこで企画の0から1を生み出す。だからこそ責任も重いと思います。

── 1を生み出す。

はい。プランナーの仕事は、何もない更地に種を蒔くような仕事です。さらにそこから芽を出させる(最初に何かを生み出す)っていうその仕事こそがプランナーの責任であり一番の魅力だと思っているので、クライアントの課題解決のための企画を考える上で、0を1に変えられるかどうかというのがプランナーの勝負どころですね。5を10にするのではなく、0を1にすること。そういう人間がチームにいないとどれだけ人が集まっても何も生まれない、かけ算になっていかないので、そういう意味でも重要な役割だと思っています。

── 最初に思いつく人ですね。そして巻き込む人。

そうですね。仮に自分がプランナーという肩書きを離れても、何か生み出すことを常に使命としていきたいし、生み出さないと価値がないと思っていたいですね。プランナーってそれが生きる価値だと思っているので。なので、個人的に、プランナーって名誉な職種だなあって思ってます。

── ではそのプランナーとして。最近の広告とかコミュニケーションについて、ボンヤリと思うことってありますか?

結構普通のこと言うかもしれないんですが、最近改めてコミュニケーションって難しいなと思っていて、例えば、デジタルとかインタラクションな体験に人々が慣れてきたなという印象があります。以前言われていた戦略PRなども、ネットニュースとかWEBの中の情報が氾濫していて、そういうものには騙(だま)されないぞみたいな人々の気分もある。ビークルとかメディアとかテクノロジーや手法そのものの力にはあまり頼れなくなってきていて、やっぱり図太いアイデアというか企画を考える上で本質的なものをしっかりたたいていかなきゃいけない。そんな感じがします。今年のカンヌもそんな印象がありました。

あとは、未だにインパクト重視で面白いいわゆる“バズ動画”が流行っていてよくシェアされているなあという印象がある。個人的に僕は、一つの動画や映像のなかで世界観を作るよりも、仕組みとか色々なものを組み合わせてストーリーを作る方が得意なので、バズ動画ってそれとして純粋にすごいな~とか思っています。

リアルタイム検索とVRを組み合わせた新感覚の体験型アトラクション「ヤフートレンドコースター」

肢体不自由な児童たちがVRを使って目でピアノを弾くプロジェクト「Eye Play the Piano」

── 最近のご自身のお仕事について教えてください。

去年担当させてもらった仕事なんですが、「デンタプル」というものがあります。長野県の「松本りんご協会」さんとのお仕事なんですが、松本のりんごって固くて美味しいのでそれを歯の診断と結びつけて、りんごをかじって「血が出る」とか「どの歯が痛かった」みたいなことをスマホアプリで回答すると、提携している歯科衛生士さんからコメントなどのフィードバックがあるというものです。このプロモーションは幸いなことに色んな賞もいただいて、広告電通賞(アクティベーション・プランニング)をいただいた時もりんご協会の方と品川のホテルで再会したんですがものすごく喜んでいただいて。その様子を見ていて「やってよかったなあ」って改めて思いました。毎年すごい沢山のりんごを送ってくださるんですよ。長野に伺ったときなんか収穫時だったもので収穫手伝ったり(笑)。

── 普段、考えやアイデアを練るときはどんな状態になっていますか?

僕はストイックにストレスをかけてやる方で、A4用紙と黒のサインペンだけ持ってiPodで爆音をかけながらだーっと書き出すみたいな作業してます。あまり人とも話さないですし、気分転換もしないですね。ずーっと考え続ける。場所は、オフィスでもカフェでもどこでもやれます。でも、最初にふわっと思いついたことが結局企画として実現してることが多くて、少し時間を与えられてもそれを超えられないみたいなことが多いですね。クライアントのオリエンを聞きながら思いついてしまうみたいなこともあります。もちろん、その後でもう何案か考えるんですが、やっぱり一番最初の企画が一番良かったな、みたいな。

── 誰かと対話してアイデアを深めるとか、“壁当て”みたいなことはしないんですね。

アイデアについては人とあまり話さないですね。でも、練りあがったアイデアは、一般人の感覚でジャッジするようにしてます。自分とは別の感覚でチェックするというか。自分のお母さんの気持ちになってみるとか、中年男性だったらどうだろうとか、二面性をもって考えてます。

でもこの間ショックだったのは、「鍛えられたはずのセンスっていうのも時に広告効果の邪魔になるんだ」っていうことです。実は、最近自分のやったポスターを調査にかけてクライアントさんに見せる機会があったんですが、A案とB案があって、僕らクライアントさんも含めて「絶対、A案がいいよね、臨場感があってカッコいいし。それに比べてB案はダサいし」と思っていたら、選ばれたのはB案だったんです。主婦の大多数がB案の方がいいって。。。B案の特徴はというと、商材が全部よく見えてるんです。だから、“カッコよく映すんじゃなくて、全部わかりやすく見せる”ってことが大事だったんです。

それがターゲットにとって大事だったって考えると、クリエイティブ上のカッコ良さとかセンスとかって関係ないんだなと思ってしまいました。広告ってずっと作ってると、変なセンスみたいなもので決めるようになってしまっているんですが、そんなの必要とされない相手もいるんだなと思って目から鱗でした。

── だとすると、たまに見かける「ダサい」広告とか「パッとしない」制作物っていうのもセンスだけで判断できないところがあるのかもしれませんね。

昔ならなかなか認めたくない事実ですが…(笑)。でも「広告」というのは、人に「伝える」手段なんだと今は改めて肝に銘じるようにしています。

── 新聞についてのイメージや思うことはありますか?

イオンさんの元旦広告を作らせていただいてますが、うれしいですね。やっぱり。特に元旦広告だと、みんな新年の挨拶をする中なのでその中でどう差別化するかみたいに考えています。新聞って、やっぱり格式があるメディアというか、そんなにしょっちゅう打てないので、打つときには打つ側の意味とかタイミングが重要ですよね。例えば、企業にとっての「本気を伝える」っていうときにすごく有効なメディアだと思います。あとは、同じ意味でインナー向けの効果って大きいものがあると思いますね。

── 話は変わりますが、私生活ではどんなプランニングが得意ですか?

実は、僕、こう見えてディズニーリゾートフリークなんですよ。最近は忙しいのであれですが、社会人になっても何年か年間パスも持ってました。特にディズニーシーが好きでその効率的攻略には自信を持っています。当たり前ですが、ディズニーのパークって遅い時間に入れば入るだけ不利なんです。入場するのが遅いとスケジュール的に後手後手になってしまうので、ファストパスとショーの時間とを最適に組み合わせて、どう最大化するかの勝負だと思ってます。どこからファストパスを取って、いまや抽選になってしまったショーならどの時間帯が一番当選率が高いのかなんかも計算に入れてガッチリ組みます。

── いやあすごいですねー。僕なんかは、去年もらったパスポートで2世帯7人でシーに行きましたが、昼飯食べて雰囲気味わったら3時間くらいで出てきちゃいました。2時間待ちのアトラクションとかばかりで。

いまは人気で入場規制もしてるくらいなんで、どう回るかの戦略がないと厳しいですよね。あと、 ディズニーって人の心の掴(つか)み方が上手だなーって思います。例えば、スティッチのエリアで売っているスティッチの形したチョコレートがすごく人気なんですけど、そしたら次来たときにはそのスティッチチョコレートをストラップにしたものが売ってるんです。「わー、あのチョコレートのストラップ出たんだ、可愛い〜」みたいな(笑)。このフェーズを見極めた段階的な戦略!これってダッフィーも一緒ですよね。ミッキーがミニーから貰ったあのぬいぐるみがキャラクター商品になって売り出される。クリエイティブマーケティングの教科書みたいなものですごく勉強になっています。

Shota Hatanaka

1984年生まれ。埼玉県所沢市出身。中央大学法学部卒業。08年博報堂入社。2012年より博報堂ケトル所属。プロモーション領域を軸にしたプランニングが得意。これまでに、Cannes Lions、Oneshow、CLIO、D&AD、NY ADC、ADFEST、Spikes Asia、ヤングカンヌ日本代表など、国内外100を超えるアワードを受賞。趣味は、ドラム演奏、フィギュア集め、ディズニーランドに行くこと。自衛官の息子。主な仕事に、ポーラ「Call Her Name」、Yahoo! JAPAN「さわれる検索」「トレンドコースター」、海上自衛隊「敬礼訓練アプリ」、松本りんご協会「Dentapple」など。

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