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”未来を作る言葉やコピー”に興味があります(電通コピーライター 阿部広太郎氏)

恵比寿東口、たこ公園。最寄りのラーメン屋はAFURI。オシャレ東京人の聖地だ。取材ロケ地の希望を尋ねると、このたこ公園を指定してきた阿部さん。どんな話になるんだろうか。

── こんにちは、初めまして。暑いですね、たこ公園。

初めまして。今日はよろしくお願いします。もうすっかり夏ですね。あの、これ買ってきました。すごく美味しいんでぜひぜひ。

── あーっ、これ『BAKE』のチーズタルトやないですか。いいんですか!!??  何も出ませんよ?

どうぞどうぞ! ただ、お会いできる時間を大事にしたいと思ったので。

── うまー。いやあお気遣いいただきすいません。何てスイートな方なんや。
   それでは早速ですが質問いたしましょうか。いまや、コピーや言葉が溢れている時代です。コピーライターとして、今、どういうコピーや言葉に注目していますか。

そうですね。広告上の表現に限らず、「言葉で何かを企てる」という意味では今ほどコピーライターが活躍できる時代はないと思っています。例えば、新商品のコンセプトを考えようとか、企業の新たな事業のビジョンや方針を表明するとき、それを人と共有していくために言葉はかなり重要ですよね。新しい未来は、新しい言葉からつくられます。そういう意味で、言葉を企てる役割として介入できるところはいたるところにあると思っています。なので、お願いされる範囲で考える受身のコピーライターにはすこし辛い時代だと思いますが、足で稼いで「こうしたらどうでしょう?」と、自ら提案していくタイプのコピーライターにはチャンスは沢山あると思います。

── 5教科の中でやっぱり「国語」が一番大事!みたいなのと同じですかね。人はどこまでも言葉で考え、言葉で動くということでしょうか。

「言葉→概念→行動」とよく言っているのですが、やっぱり言葉が起点なんです。僕が就職活動をしている時、広告の仕事について先輩から「一を聞き、十を知り、百を考え、千を伝え、万を動かす」と教わったんですが、この「一を聞く」っていうのを「一を作り」にしてもいいわけです。魅力的な「一」をクライアントと一緒に作って、それを掘り下げて考え、伝えて動かしていく。その「一」を言語化する人というのがすごく重要で、そこに、言葉を扱うコピーライターが入っていければ、ものすごくフィールドが広がっていくんじゃないかと思っています。

── それでは、今、阿部さんが、広告とかコミュニケーションで注目しているコピーやそれが生まれる場所ってありますか?

“未来を作る言葉やコピー”に興味がありますね。例えば、有名な話ですが、ソニーの創業者の井深大さんが「ポケットに入るラジオを作れ」と仰ったと。当時、ラジオといえば、タンスのように大きくて家族で聞くものだったけれど、企業のトップがそういう言葉で魅力的な未来の目的地を指し示したことによって、大きかったラジオがトランジスタラジオとして小さくなる。そして、ラジオは、個人で聞くパーソナルなものになった。実際にラジオがポケットに入って、人々の生活を変えたわけです。それこそ、新しい言葉で、新しい未来をつくっているんですよね。

あとは、ココ・シャネルの「女の身体を自由にする」という言葉も好きですね。当時、コルセットのように体を締め付けていた女性の衣服を解放して、新しい衣服をつくることで、文字通り自由にしていった。こういう話がすごく好きです。つまり、仕事って「どこを目指そう」とか「どこに行こう」という“未来を語る”段階がすごく重要だと思うんです。目指したい未来を言葉に出来れば、自信を持って働けますよね。

未来につながる言葉は、誰かの“意志”だなと思うんです。そういう、人間の意志とか、企業の意志をクライアントと一緒に言語化して、実現していくのは、本当にエキサイティングですよね。

── ほんとにそうですね。それじゃあ、ご自身の仕事の持ち味と思っている点はありますか。こういう依頼は得意だ、とか、実力出せそうだとか。

個人的には、他人事を自分事化することが出来たときにいい言葉が出てくるなと思っています。仕事は、もちろん自分起点のものだけではなくて、人から相談されることも多いですが、自分の中に取り込まれた時、自分がどう思うのか。僕が書くコピーを、まず僕自身がどう思うかということが判断基準ですよね。そのコピーに自分の心はなぐられているか。そうじゃなければ人の心はなぐれないと思っているので。

最近で言うと、学生の頃からの付き合いで、今、テレビ朝日でディレクターをしている芦田太郎という友人がいるんですが、その彼から依頼された仕事があります。彼は入社時から企画を出し続けていて、ついに自分の企画した番組がゴールデンになったんです。「あいつ今何してる?」という番組で、そのポスター制作を頼まれました。世の中には、いろんなバラエティー番組がありますが、この番組が伝えようとしているのは、人は思い出を振り返ることで、笑えたり、泣けたりする。その考えから、この番組を“あいつの今を追う思い出バラエティー”と定義し、“あなたもあいつに会いたくなる”というコピーを提案させてもらいました。

── 卒業アルバム見ながら、「あいつ今何してるんだろう」みたいな会話って、ほとんどみんなやっていることで、共感値高いですよね。

── お聞きしていると、阿部さんのお仕事って、“青春カテゴリ”が多くないですか??

確かに。横浜みなとみらいにあるBUKATSUDOで主宰している講座「企画でメシを食っていく」も、本当にそのまま部活動ですね。音楽の仕事もしています。ロックバンドのクリープハイプの「リバーシブルー」という曲の宣伝では、曲のコンセプトが「真逆の気持ち」だったので、歌詞を真逆にして渋谷のスクランブル交差点に掲出しました。

── これはアイキャッチ力強いですね。情報渋滞してる渋谷スクランブル交差点でも、必ず目に入ってくるような気がします。逆に言うと、広告コピーの受け手にとって青春時代のものって、心を揺さぶられる強いものが多いということでしょうか。
   それでは逆に、広告コピーやコミュニケーションにおける難しさってどんなところでしょう。仕事上注意しているところってありますか?

「人はコピーで嘘をつく」っていう話を、コピーを習っていたときに教わったんですが、広告のコピーを考えていると「本当はそんなことしないよね」とか「本当にそんなこと思っているの?」みたいな言葉を書いちゃう時があるんです。与えられたお題に対して「何かを出さなくてはならない」という義務感に迫られてしまうと、出すことが目的になってしまう。そういうときに嘘が混ざっちゃうことがある。嘘というかリアルじゃないことが。なのでコピーを考えながら、自分の本当の気持ちを書こう、心に触る言葉を書こうって考えています。

── そういう風に聞くと、なんだか言葉だけでなく、それを繰り出す人間自身が問われるような気がしますね。あと、自分が遠ければ遠い商品とかサービスほどそういう類の嘘って出てきちゃいそうな気がしますね。
  うんとー、突然なんですけどメモ帳とかって見せてもらえませんか? 芸人さんにとってのネタ帳というか、コピーライターにとってのメモ帳ってきっといいコピーや言葉が書いてあるに違いないと思って。

 メモ帳ですか?  いろいろあるんですけど、一番自分らしいのはこれなんです。ずっと持ち歩いてるんです。コピーライターって、写経というバットの素振りみたいな「コピーの一行書き」みたいなことをよくやっているんです。僕の場合、コピー年鑑を約30年間ぶん見て、自分のいいと思ったコピーを書き写しています。6年くらい持ち歩いているのでもうボロボロなんですけど、当時は何かあるたびに見返していて、今ではもうお守りみたいになってますね。自分はこれだけやってきたんだからどんなときでもなんとかなる、みたいな風にして度々読み返しています。最近はMCバトルの言葉なんかも(笑)。

── フリースタイルダンジョン(笑)

はい。例えば、ラスボスの般若VS焚巻では、

「焚巻」
俺はしてる朝バイト
夜にフライトするためにやりだす
バイト自体じゃ生き残れない
「般若」
バイトじゃねえ俺はヒップホップに就職

みたいなやり取りとか。MCバトルは、相手の言葉をどう引き取って、どう概念を覆すか、その部分がすごく面白くて。

これもそうですけど、僕ら言葉で生きているんだなと思うんです。いい言葉があることで、いい人生になるのは本当にそうだなと。どうしてその言葉が好きだと思うのか、嫌だと思うのか。実はそれだけを話すだけでも、すごく盛り上がったりします。

── そういう、「感情としての言葉とか、個人の言葉」を共有するのってほんと楽しいし、素敵なことですよね。

それで言うと、今まさしく恵比寿の「COMMON EBISU」というところで「感想文庫」という未来型図書館を作るプロジェクトに関わりました。ここのたこ公園もそうですが、恵比寿という街が好きで、街の力になりたいと趣味の活動としてやっています。この「感想文庫」は、好きだと思う本を感想とともに本棚に寄贈して、それを借りる人は「この本ここが良かったよ」という感想を加えて書いていくんです。ここにある本は普通の図書館とは違って、すべての本に誰かの強い思い入れがあります。借りようとしている人はどんな本があるのか発見や出会いがあるし、寄贈した人は、自分の本がどういう風に読んでもらったかなと確かめにくる喜びがある。本を通じて、人と人がつながっていく、新しいつながりのモデルですね。

── アマゾンのレビューではなくて、マテリアルな本を介して感想でつながっていくと。小学校の図書館の表3にあった図書カードを思い出しますね。

そうですね。この取り組みは各メディアにも多く取り上げていただきました。なんだか、人のあたたかみとか触れあいって、このデジタルの時代だからこそ、反動的に強くなっているのかなと思いますね。

── 最近、仕事仲間や友人から言われて残っている言葉とかありますか。

言葉の仕事をしているので、どこか写真に対して距離をとっていて、自分は写真とか撮れないだろうなとか勝手に思っていたんですが、友人でもあり仕事も一緒にしているエリザベス宮地さんがある日、僕の写真を撮ってくれたんです。それがすごくいい写真で、「僕ってこんな顔して笑えてるんだ」と思えるような写真なんです。「どうやったら撮れるんですか?」と宮地さんに尋ねたら、「撮りたい人がいればいつでもカメラマンになれますよ」って言われて、目から鱗というか、勝手に出来ないって壁を作ってたなぁと思って。それで最近、写ルンですを持ち歩いているんです。現像して撮った人に送ると、すごく喜んでくれるんですよね。それが嬉しくて。

最近、写ルンですの人気は再燃してますが、性能そのものがすごくいいんですよね。出来上がる写真がすごく味があるんです。いい写真が少しずつ撮れるようになって、写真が楽しくてしょうがないです。現像に行く写真屋の店員さんとも仲良くなっちゃって、撮り方だったり、色んな知識を教えてくれたり、青みを強く出すために「シアン強め」みたいなオーダーしたり。一週間に何度も通いつめて(笑)、たくさんのことを学んでいます。

 この写ルンですもそうですが僕の中のテーマにあるのが、「情報格差」ってなくなってきていると思いますが「行動格差」っていうのがすごくあるなあと思うんですよ。だから、「なんでもやってみるといいよ」みたいなことをもっと人に伝えていけたらいいな、思います。

── 「企画でメシを食っていく」もそのメンタリティーですよね。

そうですね。各業界の第一線で活躍している人は自分の言葉を持っていて、その言葉を学びたいと思ったのがはじまりです。みなさん、がんがん行動して、自分の言葉を手に入れている。この「企画メシ」はキャンプファイヤーみたいなものだと思っていて、心に火がついている人が真ん中にいると、その周りで話を聞いている人たちも何かしらの“種火”を持ち帰れるんです。今年で二年目なんですが、出会いとかきっかけが沢山生まれているんです。同じような志を持っている人がいると熱が伝播するというか、自分もやらなくちゃみたいなこともあるだろうし、横のつながりで仕事も生まれている。最近では、企画メシの講座をきっかけに転職された方もいて、それを聞いた時はちょっと涙が出そうになりました。すごくうれしいです。ほんとやって良かったなって思います。十年は続けたいですね。

── 話は変わりますが、新聞広告について。何か思うところはありますか?  物申したいところとか。。

正直、一番難しい質問でした(笑)。新聞広告って、総理大臣にもしっかり読んでもらえる可能性がある訳ですよね。メディアの特性として誠実な感じがするし、姿勢を正して何かを発言するというような前提があるので、企業の決意とか覚悟を訴えるのにふさわしい。一方で、だからこそクスッとさせるような肩の力が抜ける見せ方をすることも可能なんだと思います。

例えば、2013年に居酒屋甘太郎などを運営するコロワイドさんの新聞広告を作らせてもらったことがあるんです。第二次安倍内閣の「アベノミクス」という言葉がちょうど一般の方にも浸透しだしてきた頃に(流行語大賞受賞はこの年の年末)、「アベ飲ミクス  飲んで景気回復!」っていうコピーにしました。例えばこういう時代とか時勢に乗っかっていける! みたいなところがありますよね、新聞広告って。

2013年4月24日付 読売新聞朝刊

── 私も朝の立会いでこの広告を見て、すごくうれしかったのを覚えています。こういう広告を作る人や会社は、きっとノリノリで元気がある人たちに違いない、と(笑)。

いやあ嬉しいです。新聞の懐の深さと、クライアントさんの面白いことをしようという思いが掛け合わさったからこそ実現できたんだと思います。

新聞だからこそできるというか、活きるものを考えたいなと思いますね。朝、新聞を見てクスッしてもらえるとか、「見た?」って、職場での話題にしてもらえたら嬉しいじゃないですか。とはいえ、こういうコピーライティングはタイミングや時期を見極めなければならないですけど。実際、今(取材日は16年7月の参議院選挙の翌日)、出来るものではないと思います。

── 最後に、これからの目標やビジョンを教えてください。

学生時代、アメフトをやっていたこともあり、気持ちが一つになる“一 体感”が好きです。世の中に一体感を作る仕事が出来ればうれしいですね。その一体感の“一”を作りながら、その先に走っていける人。言葉の人であり、行動の人でありたいと思っています。行動が伴えば世界は変わっていくと信じています。それをテーマに、本を書き上げたので、一人でも多くの人に手に取ってもらえたら嬉しいなと思っています。

Kotaro Abe

『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)

1986年生まれ。埼玉県三郷市出身。2008年、電通入社。人事を経て、コピーライターに。「世の中に一体感をつくる」という信念のもと、言葉を企画し、コピーを書き、人に会い、繋ぎ、仕事をつくる。東京コピーライターズクラブ会員。30オトコを応援するプロジェクトチーム「THINK30」所属。宣伝会議コピーライター養成講座「先輩コース」講師。世の中に企画する人を増やすべく、2015年より、BUKATSUDO講座「企画でメシを食っていく」を立ち上げる。NAVERまとめ編集コンペ奨励賞、ツイッター小説大賞 審査員特別賞など受賞。初めての著書『待っていても、はじまらない。―潔く前に進め』(弘文堂)が8月30日に刊行予定。

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