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インタビューキーパーソン

(Fri Aug 05 10:00:00 JST 2016 /2016年8・9月号 リーディングトレンド)

今回のテーマ 「スポーツ都市マーケティング」
〜スポーツの力を生かした 都市、街づくり〜

原田宗彦 氏
早稲田大学   スポーツ科学学術院教授

原田宗彦 氏

東京五輪の開幕まで4年。都市のマーケティング戦略で、スポーツの持つ力を取り入れる動きが国内各地で広がってきた。スポーツを街づくりにどう生かし、そこにはどんなビジネスチャンスが生まれるのか。スポーツと街づくりの関係に詳しい早稲田大学スポーツ科学学術院教授の原田宗彦氏に聞いた。

スポーツの持つ力が注目される理由は?

  都市戦略を考えるうえで、スポーツの力が大きな位置を占めるようになっています。国内の人口減少に歯止めをかけることができない現在、国内外から訪れる人の数を増やす観光産業の重要性が高まっています。スポーツと観光を組み合わせたスポーツツーリズムなど、スポーツは街に人を呼び込むための魅力的な装置となるからです。
  また経済の成熟化で、消費者心理をつかむうえで、ただモノを作るのではなく、目に見えない経験価値を提供する「コトづくり」とともに、価値を高める考え方が注目されています。マラソン大会のような参加型イベントは、参加者がシューズやウェアなどモノを買うきっかけを作ります。スポーツは、コトづくりの工場となり、他地域から人を呼び込み、関連する消費、さらにはモノづくりを先導します。こうした社会、経済的な背景から、スポーツは国の戦略を考えるうえでも欠かせない要素になっているのです。

日本でのスポーツツーリズムは?

  スポーツツーリズムには、スポーツイベントの観戦・応援、スポーツイベントへの参加などの領域があります。また、健康志向は世界的な流れで、日本でも健康体力づくりのためのイベントが増えてきました。実際、日本は、南北に長くパウダースノーからサンゴ礁まで豊かな自然資源を持つアウトドアアクティビティーのメッカです。スキーなどウィンタースポーツはもちろん、海に囲まれ島の多い日本は、ダイビング、シーカヤック、サーフィンなど世界有数の海洋観光の資源大国です。

世界のスポーツツーリストを呼び込む?

  今、世界で海外旅行する人がどんどん増えています。中でも日本を訪れる外国人は今後も増えるでしょう。アウトドアスポーツの資源に恵まれ、都市部は安全でホスピタリティーにあふれています。世界中の富裕層が日本を目指してもおかしくありません。
  兵庫県神河町の峰山高原にスキー場が2017年12月に開業します。国内では15年ぶりのスキー場の新設となります。日本国内のスキー人口が減っている中、訪日外国人(インバウンド)需要を見込んでいるのです。
  沖縄県、沖縄大学、早稲田大学が協力してインバウンドの調査を実施したところ、沖縄への中国からの旅行客は20代、30代が多く、8月だけをみると8割がマリンスポーツを楽しんでいました。スポーツは沖縄にとって非常に重要なコンテンツとなっています。
  札幌市は、2026年の冬季オリンピックの招致に向けた活動をしています。さまざまなイベントを誘致してアジアからたくさんツーリストを呼び込み、札幌をウィンタースポーツで盛り上げる考えです。札幌のような人口190万人規模の都市で、すっぽりと雪に埋まる都市は他にありません。地理的、資源的な優位性を生かし、札幌がアジアのスノーリゾートの中核を目指すという都市のマーケティング戦略です。

地域活性化への取り組みは?

  スポーツは地域の活性化と経済効果をもたらす優先順位の高い行政課題として認識され、地方自治体でスポーツと観光の融合に取り組む動きが出ています。
  日本初のスポーツコミッションとして2011年に「さいたまスポーツコミッション」(SSC)が誕生しました。さいたま市は2013年に自転車ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」の名前を冠した自転車レースを開催し、注目を集めました。SSCが設立から2014年までに誘致したスポーツイベントの数は累計116件で、経済効果は約233億円に上ると算出されました。スポーツコミッションは、地域のスポーツと観光資源を活用してスポーツイベントを誘致・開催し、地域スポーツの振興と地域経済の活性化を図るのがねらいで、これまでに全国で30以上の自治体・地域で組織されています。
  さいたま市のような大規模な都市でなくても、スポーツにかかわる人の移住推進など、スポーツを軸にさまざまな地域活性化策が考えられます。過疎に悩む中山間地域は、自然豊かなアウトドアスポーツの資源に恵まれた場所であることが多く、隠れたスポーツツーリズムの資源を発掘して旅行商品化できる可能性があります。

2020年に向けた東京の街づくりは?

  2012年のオリンピック・パラリンピック開催都市のロンドンのように世界中から旅行客が集まり、行ってみたい国ナンバーワンを目指すのがいいでしょう。東京は道路の段差解消などバリアフリーの街づくりを一層進め、熱中症対策の先進国として暑さに強い都市づくりに取り組む契機とするのもいいでしょう。
  スポーツと密接にかかわる健康志向に着目し、例えば、東京でも思わず歩きたくなる都市、公園に健康器具がある都市など、さまざまな取り組みが可能でしょう。だれもが街にいながら楽しく健康になれる仕組みをもっと追求していけば、東京のスポーツ都市戦略はさらに現実味を帯びると思います。

はらだ・むねひこ

1977年京都教育大学卒業、84年米ペンシルベニア州立大学健康・体育・レクリエーション学部博士課程修了。一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構代表理事、日本スポーツマネジメント学会会長、Jリーグ理事。2026年札幌冬季オリンピック・パラリンピック開催概要計画検討委員会委員長、「大学生のベースボールビジネスアワード」(読売新聞社主催、読売巨人軍協力)審査委員長などを務める。主な著書に『スポーツ都市戦略 2020年後を見すえたまちづくり』(学芸出版社、2016年)。

News & Report

〈2016年12月・2017年1月号 ojo interview〉

山根 哲也さん(ライトパブリシティ コピーライター)

〈2016年12月・2017年1月号 CYBATHLONリポート〉

10月8日(土)にスイス・チューリヒ空港に程近い街クローテンにある「スイスアリーナ」で、「CYBATHLON」(主催:スイス連邦工科大学、協賛:読売新聞社など)が開催された。本社広告局員による視察リポートをお届けする。

〈2016年12月・2017年1月号 読み解き読者調査〉

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