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インタビュー企業インタビュー

(Fri Feb 05 10:00:00 JST 2016/2016年2・3月号 今日の新聞見た?)

新聞はITベンチャーに魔法をかけるメディア
ウフル   取締役副社長   桑田 修吉 氏

桑田 修吉 氏

クラウドを事業分野とするITベンチャー企業「uhuru(ウフル)」が、2015年11月30日の朝・夕刊、年の瀬の12月28日朝刊に全面広告を掲載した。同社は2016年に創業10周年を迎えるにあたり企業ロゴを一新したが、そのタイミングで社の知名度アップや社長の思いを伝えることを狙いに企画された新聞広告だ。ITベンチャーが新聞広告を使う狙いとは何か。

2015年11月30日 朝刊

2015年11月30日 夕刊

──ITベンチャーが新聞広告を使うのは珍しいと思うのですが。

  ウフルは、クラウドサービスを活用してビジネス支援を行う企業です。例えば、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の仕組みをクラウドサービスを使って構築したい企業に、業務のコンサルテーションからシステム開発・実装・導入・保守までワンストップで提供することが主な事業です。創業は2006年、社員数は100人ちょっと。メーンフレームを作るようなシステムインテグレーターと比べれば小さい企業ですが、パブリッククラウドサービス(注)を提供するベンチャーの中では規模の大きな会社です。この2月10日、創業10年という節目を迎えるウフルにとって、今年はベンチャー企業から次の段階にステップアップする大事な年です。それに先駆け、昨年8月には社員を10人ずつ10チームに分け、会社の理念や役割、今後のあるべき姿について徹底して話し合い、同時に新しい企業ロゴの制作も進めてきました。11月30日の新聞広告は、その新しいロゴの発表会に合わせ掲載されたものです。

注)クラウドサービスには「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」がある。パブリッククラウドは、クラウドプロバイダーなどが提供するクラウドコンピューティング環境を、不特定多数のユーザーにインターネットを通じて提供するサービスで、近年成長が著しい。


──11月30日の朝・夕刊の広告をメール形式にしたのは、なぜですか。

  11月の広告と12月の広告では狙いが違います。11月の広告は、新聞の情報鮮度を生かしたいということから出てきたアイデアです。実際に掲載してみて改めて実感しましたが、新聞とIT企業は相性がいい。IT企業は常に動き続け、業態の変化も早い。新聞は、「その日」の情報に特化した“鮮度が高い”メディアです(インターネットの場合はアーカイブも今の情報も混在しています)。その新聞の特性を生かし、いかにもIT企業らしいメッセージの伝え方は何かと考えて出てきたアイデアが、新しいロゴの発表会の日の朝に掲載される、社長から社員へ、この日の思いを伝える一斉メール広告です。そのメールがCC.として、「読売新聞 全国版」にも送られるという体裁の広告ストーリーを電通関西支社の伊藤さんからご提案いただきました。
  「メールだったら返信があるはず」。じゃあ、夕刊にこのメールに対する返信を載せたらどうか。「ウフル新ロゴ決定!」という社長からのメールに一番返信しそうな人は誰か。「ウフル」という社名の認知度が低いことで苦戦している人事部長ではないか。
  「ウフル」というのは、スワヒリ語で「自由」という意味です。将来、スワヒリ語を話すような人材にも入社してもらいたいということから付けられた社名です。実際、今も世界数学選手権で上位に入ったインドの人も社員として働いている自由闊達な雰囲気の会社です。ただ、聞きなれない言葉なので、「ウルフ」とか「ウルル」とか、社名をよく間違えられてきたんですね。もちろん、返信メールということで、朝刊の広告を見落とした読売新聞読者にも注目してもらえるという狙いもありました。

──12月28日の広告は、どのような狙いで出稿したのでしょうか。

  12月28日朝刊の広告は、「知名度アップ、お願いします」という人事部長に社長が応える形で掲載したウフルの企業広告ですが、裏には複数の狙いが込められています。11月28日の読売新聞読者の反響を調べたJ-MONITORの自由回答をみると、「面白い広告と思ったけど、何の会社かよくわからない」という人が多かったのです。この広告は、それに対する回答という意味合いがあります。
  もう一つは、新年の新聞紙面は大手企業の正月広告でいっぱいですから、知名度の低いベンチャー企業が出稿しても埋もれてしまうということがあります。それで、仕事納めの12月28日に来年の抱負と我々の決意を伝える広告を掲載したのです。

2015年12月28日 朝刊

  「IoT with U」、UはもちろんYouとuhuruを掛けています。IoTというのはInternet of Things、モノのインターネット化のことです。これまではパソコンやプリンター、スマホなどIT機器がインターネットに接続されてきましたが、今後は家電、自動車、工業機械などあらゆるモノがインターネットに接続されるようになります。そのとき重要な役割を果たすのが私たちの得意とするクラウド技術です。2016年は、この「IoT」がビジネスのキーワードになる。「来年はIoTでいい年になりますよ」ということをビジネスマンだけでなく、読売新聞の読者すべてに伝えたかった。
  さらに付け加えると、「IoTを、日本のすみずみまで。」というメッセージを我々が発信することに意味があったと思っています。ハードウェアや家電メーカーの大企業が「IoT」というのは当たり前ですが、我々のようなベンチャー企業が発信することによって読者にも関心を持ってもらえる。同じ言葉でも企業の身の丈によって、世の中に対する伝わり方が変わるということです。

──なぜITベンチャーが新聞広告を使ったのか、改めて聞かせてください。

  一つは会社の知名度と社会的信用を高めるため、もう一つは新聞が残る媒体だからです。今回の新聞広告には、会社の決意を世の中に残すという狙いがありました。
  ウフルはパブリッククラウドというある種最先端のサービスを提供している企業ですから、雑誌やウェブのニュースメディアから取材を受けることはよくあります。しかし、それと読売新聞のような一般家庭や官公庁、業界のトップが読む全国紙に広告を掲載することとは、全く意味合いが違います。新聞は、そこで発信するメッセージが社会性を持ち、物理的にも紙という形でエビデンスが残るメディアだからです。それだけ、新聞広告で発信した内容には社会的責任が伴うということです。
  実は、11月30日の社長からのメールの文章は、園田社長が自分自身で10案ぐらい考えた中から選んだものです。これまで会社をやってきた感謝の気持ちを取引先や社員、関係者すべてに伝えたかったというんですね。この10年は会社が潰れそうな時期もあった。それが、広告掲載後、取引先の皆さんから「新聞広告を打てるまでになったんだ。よかったね」と喜んでいただいた。
  それから、社員の家族からの反響も大きかったですね。新聞広告が出ることを家族に伝えていなかった社員がいて、その社員が朝出社したら、家から電話がかかってきて、「あなたの会社、新聞広告出てたわよ」。スーツのポケットに名刺を入れたままクリーニングに出した社員は、取りに行ったら、「この間広告やった会社じゃないですか、すごい会社じゃないですか」と言われたそうなんです。会社が社会的に認知されるというのは、こういうことなんだと実感しました。そういう意味で、新聞広告は、ベンチャー企業に魔法をかけるメディアだと思います。

──「新聞広告は残るメディア」というのは、新しい視点ですね。

  「会社の決意を世の中に残す」という意味でも、「紙という物理的なメディア」という意味でも、そうだと思います。実は11月30日の朝夕刊の広告が掲載された後、電通報のウェブ版にも広告の掲載内容が紹介されたのですが、それを見て会社で取っている読売新聞を改めて見たという人も多かったですね。
  それから、掲載された新聞広告は抜き刷りして、会社の待ち合わせスペースに掲示したり、営業が取引先にウフルを紹介するときにも活用しました。これも物理的に残るメディアだからできることだと思います。
  もちろん、新聞広告の料金はベンチャー企業にとってけっして安いとは言えません。しかし、誰に何を伝え、どういう効果を狙うかをしっかり考え、それに適したクリエイティブさえできていれば、大企業よりベンチャー企業のほうが新聞広告の効果ははるかに高いのではないでしょうか。

News & Report

〈2016年12月・2017年1月号 ojo interview〉

山根 哲也さん(ライトパブリシティ コピーライター)

〈2016年12月・2017年1月号 CYBATHLONリポート〉

10月8日(土)にスイス・チューリヒ空港に程近い街クローテンにある「スイスアリーナ」で、「CYBATHLON」(主催:スイス連邦工科大学、協賛:読売新聞社など)が開催された。本社広告局員による視察リポートをお届けする。

〈2016年12月・2017年1月号 読み解き読者調査〉

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