特集 2007.11/vol.10-No.8

出版を元気にする動き
内面的な生き方を重視したライフスタイル誌
 来年3月に光文社から創刊される『HERS(ハーズ)』は、団塊世代より若い40代後半〜50代前半を読者ターゲットに、内面的な生き方を重視したライフスタイルを提案していくという。最近の女性雑誌を取り巻く環境と創刊の意図について、編集長の新倉博史氏に聞いた。

――新雑誌のターゲットとして想定しているのは、どのような人たちでしょう。
 年代で分けるとすれば、40代後半から団塊よりも下の世代を想定しています。ただ、読んでくれるなら20代でも80代でも大歓迎です(笑)。

――団塊世代と今回のターゲットの世代の違いをどう考えていますか。
 世の中を自分たちで変えてきた(と思っている)団塊世代と、この世代は違うと思いますね。5、6年ごとにたぶん気質は変わる気がします。団塊の世代の方が、むしろ今、ネットをやっている人が多いような気がしますね。この下の世代は、70年代後半の「雑誌の黄金時代」を経験した人たちです。光文社からは『JJ(ジェイジェイ)』が1975年に出ています。雑誌を必要としてくれた人たちであり、雑誌を信用してくれた世代だと思っています。今も、情報を得る手段として、新聞や雑誌を本当に信用している世代だと思いますね。

――これまで50代前後をターゲットにした女性誌はほとんどなかったと思うのですが。
 新雑誌の創刊理由では「読む雑誌がないから作る」というのが常套句ですが、今回は本当にそういう手ごたえを感じています。以前は、この世代は婦人誌を読んでいたと思うんですが、その読者の年齢が上がって、雑誌のはざまが生まれている感じがするんですね。よく、「精神年齢が今は7掛けになっている」と言われますが、体力的にも意欲的にも今の人の方が若くなっている。生活やおしゃれに対する考え方が今の50代と昔の50代では違います。40代の雑誌が元気がいいというのは、そういう人がたくさんいることを証明していると思いますね。

自分が確立された世代に向けて

――光文社の発行している女性誌では、『STORY』が40代向けですね。
 『STORY』が売れているのは、おそらくリアルな生活に根ざして作っているからだと思います。つまり、作り手があまりカッコをつけていないということです。どうしても、作り手は格好のいい雑誌を作りたがるんですね。ファッション誌は特にそうですね。『JJ』も『STORY』もファッション誌と呼ばれますが、作っている人たちはファッション誌という言い方はしません。どれもライフスタイル誌のつもりで作っていると思うのです。

――『STORY』は「かわいい女性」をコンセプトに、モデルの黒田知永子さんを全面に出していますね。
 そうですね。ただ、『HERS』では、モデルを立てて売っていこうとは考えていません。その雑誌の人気モデルを作るということが、最近の女性向け雑誌の1つのパターンになっていますが、その路線ではないものに挑戦しようと考えています。
 というのも、『HERS』より若い雑誌に出ていたモデルが、その雑誌を卒業して『HERS』に頻繁に出ていたら、読者は「同じ雑誌か」と思ってしまいます。それはしたくない。それと、50代ぐらいになると自分が確立されて、「誰々さんになりたい」という願望が若い人ほどないと思います。『HERS』は、内面的な生き方を全面に出していきたいと思っているんですね。

世の中を少し変える雑誌に

――40代、50代というのは、人口で見ても、今の若い人より多いですね。
 ですから、この世代からもっと流行のうねりを作り出せていけたら、世の中も少し変わってくると思うんですね。海外ではこの世代もファッションのターゲットですが、日本では若い人たちにシフトし過ぎていると思いますね。
 「多様化」とずいぶん前から言われています。以前は街を見ていると世の中で何がはやっているかが何となくわかりましたが、今はわかりにくくなっています。あれもこれも小規模な流れになっています。だから、良い悪いは別にして秋葉原のようなパワーを持ったものが目立っているんですよね。

――雑誌の細分化が価値観の多様化をうながしたという面はないのでしょうか。
 別の問題だと思いますね。雑誌が苦しくなったのは、やはり雑誌のせいという側面があると思います。雑誌の作り手が本家と偽物を見分ける作業を怠っている。ある雑誌が売れると、その上の年代向けの雑誌も売れる方向にシフトする。そうするとやはり似てくるんですね。オリジナルがオリジナリティーを守る力をなくすと、単純再生産を繰り返して、疲弊してくるんです。昔は、人を見れば、その人がどの雑誌を読んでいるのかわかりました。しかし、今はわからなくなっています。
 昔は、雑誌ごとに熱狂的なファンがいて、「この雑誌は大好き」「これは嫌い」というのがはっきりしていた。雑誌はそういうものでいいと思うんです。大好きな人と大嫌いな人がいないのでは意味がない。『HERS』も、そういう雑誌にしたいと思っています。

――広告については、どう考えていますか。
 もちろん、雑誌は広告がなくては生きてはいけません。しかし、広告狙いの雑誌作りが読者に見透かされてしまうと、あまり信用されませんよね。この年代は雑誌を信用してくれている世代ですから、特に雑誌の信用は重要になってくると思うのです。雑誌に力がついて、広告が入ってくる。理想論かもしれませんが、この雑誌は、そういう理想論をなくしてはいけないと思っています。広告主と出版社のいい意味での緊張感のある雑誌にしたいと思っています。

月刊『HERS』PRパンフレット表紙 月刊『HERS』PRパンフレットから



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