From Overseas - London 2007.3/vol.9-No.12

ギネス広告「新聞回帰」の仕掛け人

 斬新な広告で昔から定評のあるアイルランドのビール会社ギネスが昨年5月から6月にかけて、数年ぶりにブランディングを目的とした新聞広告を出した。テレビ中心のキャンペーンを行ってきた同社にとって、久々の新聞を利用したブランディング・キャンペーンであり、新聞回帰を予感させるものだったが、実は一連の出稿に仕掛けがあったことが最近明らかにされた。
 仕掛けたのは「NMA」(ニュースペーパー・マーケティング・エージェンシー)という団体。イギリス全国紙が2003年に創設した組織で、新聞広告の効果を科学的に分析し、広告主や広告会社の理解を促進することを目的としている。スタッフは各新聞社が派遣しているわけではなく、元テレビ局員、マーケティング・エージェンシー社員などプロフェッショナルをそろえている。つまり、全国紙が新聞広告のプロモーションをこの「マーケティング会社」に委託しているわけだ。
 さて、ギネスのような企業が新聞広告から遠ざかってしまったことは、新聞業界にとってはよろしくない。よって、NMAはギネスに働きかけ、低く見積もられていた新聞広告の効果が高いことを理解させようとした。
 前出のシリーズ広告は、良質なクリエイティブは新聞広告効果を高めるのに特に重要だとするNMAの主張をギネスが受け入れた結果だ。キャンペーンの前後には調査が実施され、以下の好結果が得られた。
 キャンペーン終了から12週間のビール売り上げはキャンペーン前に比べて4.1%の増加、3度以上新聞広告に接触した人の購買は5.4%増加した。また、キャンペーン終了後の購入意向について、テレビでしか広告に接触しなかったグループでは1%の伸びにとどまったのに対し、テレビと新聞両方で接触したグループでは伸びが4%となった。さらに、広告好感度、広告の斬新さ、商品を自然志向だと思う、品質の高さ、他の商品との差別化が明確である、などの質問に対し、テレビと新聞両方で接触したグループは、テレビのみのグループに対しポジティブな回答をしている。
 さて、この結果をなぜ知ったかというと、NMAが広告業界誌「キャンペーン」の別刷り「NEWSPAPER ADVERTISING」(36ページ)を1社協賛したためだ。この別刷りは、ギネスのほかトヨタ、ウォーカーズ(菓子)などの大手広告主の新聞キャンペーンについての調査結果を中心に構成されている。表紙が目を引き、紙質が良かったため、ついついページをめくったところ、ギネスの例に出くわした。
 NMAは同様の発表をウェブサイト、メールマガジン、さらにメディアプランナー向けのセミナーなどでも行っている。つまり、行った調査やデータを業界内に無駄なく伝える努力をしている。また、「キャンペーン」を始めとする広告業界誌にも頻繁に広告出稿を行っており、2003年の設立にもかかわらず、業界内での認知度は高い。
 なお、NMAが特に力を入れてプロモーションを行っている記事下広告の前年比伸び率(全国高級紙5紙)は、横ばいだった2004年から2005年の2.8%、2006年の10.0%増と右肩上がりだ。
 「消費者の(クリエイティブに対する)高い期待に沿った、数年ぶりのブランディングを目的とした広告は、我々にとって重要だった」「新聞広告の利用法について非常に鮮明な理解を得ることができた。将来的に全国紙を利用する際の助けとなるだろう」
 ギネスのマーケティング・ディレクターが抱いたものと同様の感想を多くの企業に抱かせることができれば、NMAの活動はより効果的なものとなるだろう。

「キャンペーン」誌別刷り表紙 ギネスの新聞広告

(2月11日)
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