ojo interview 2007.3/vol.9-No.12

大宮 エリー氏
大宮 エリー氏

 「人間としてメジャーじゃないような、どこか欠落した人に興味がわく」という。ロングラン上映となった初監督映画「海でのはなし。」では、不器用に生き惑う登場人物の一人ひとりに愛情を注ぎ、71分の優しくて切ないドラマを紡ぎ出した。
 1975年大阪生まれ。東京大学薬学部を卒業後、「言葉で食べていきたくて」コピーライター/CMプランナーとして電通に入社。ネスカフェゴールドブレンド、ロッテのトッポなど数々のヒットCMを手掛け、スピッツ、山崎まさよしなどミュージックビデオのディレクターとしての評価も高い。NHK番組の構成や脚本、映画、舞台の脚本のほか、雑誌に連載中のエッセーも好評だ。
 「私は運がいいっていうタイプじゃないけど、縁はいいって感じがするなぁ」と笑顔で振り返るが、けっして恵まれたエリート街道を歩んできたわけではない。
 「入社してからずっと、スターじゃなくて雑草、メジャーじゃなくて亜流という劣等感がありました。私が作るものは、作家性が強すぎて広告らしくないと言われていたんです」
 作品作りに共通するのは、「いろんな人の気持ちとブルブルっと共鳴する普遍的なものを、自分の心の奥底から見つけて取り出す」こと。理系出身ながら「ロジックで組み立てるような広告には向いていない」と、昨年4月に電通を辞め、広告クリエイターとしての自分に区切りをつけたはずだった。だが、今でも面白そうな依頼はつい引き受けてしまい、広告とは「別れてからも良い関係」が続く。
 「なんでこんなに仕事が来るのか、よく分かんない感じですわ、正直」とぼやきつつも、「喜ばれるものを作りたい」という強い思いを原動力に、世の中にあてた「ラブレター」を書き続けている。
 「これまで一度もやったことはないけど、文章を読ませることができる新聞広告は、今の私のスタンスに近いですね。もし依頼があれば、取っておきたくなるような新聞広告を作ってみたいなぁ。誰も私に頼まないとは思うけど(笑)」

文/横尾一弘  写真/清水徹

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