pick up AdVoice 2006.12/vol.9-No.9

新聞広告の効果とは? 効果指標について改めて考える
 よみラボとは…多メディア時代における新聞広告の役割と機能を研究・分析するために読売新聞広告局マーケティング部が開設した研究室です。

 インターネット元年と呼ばれた1995年から11年、メディア環境は急速に変わってきた。それに伴い広告環境の変動も大きい。 読売新聞東京本社広告局では、新聞広告の効果指標についても改めて考えてみるべく、実験的調査を行った。
 読売新聞では、新聞広告の効果指標として、「広告注目率」を使ってきた。当該新聞を「読んだ」人に、当該広告を「確かに見た」「見たような気がする」「見た覚えがない」の3択で回答してもらったうちの「確かに見た」人の割合が「広告注目率」である。
 機械式で調査するテレビの視聴率に対し、回答者が自らの記憶について答える新聞の調査では、広告に接触したかどうかを機械的に線引きすることは不可能で、回答にあたって調査対象者の主観が入ることは否めない。どのような接触状態が「確かに見た」で、どのような状態が「見たような気がする」になっているのか。クロスメディア時代において、新聞広告だけでなく、テレビや交通広告など複数の広告媒体で重複接触することが一般化したことを考えれば、「確かに見た」よりは浅い広告接触を表していると想定される「見たような気がする」人も意味のある人たちなのではないだろうか。今回の調査はそのような問題意識からスタートした。
 調査の分析から、濃淡はあれど「確かに見た」「見たような気がする」双方とも広告についての記憶を確かに持っていることがわかった。
 この結果を基に読売新聞では、「確かに見た」人だけでなく、「見たような気がする」人も広告効果のある人と結論づけ、今後は「確かに見た」「見たような気がする」両方が広告到達者であり、広告の効果を有する人とみなすことにしたい。

「見たような気がする」人も広告効果者

 調査は、2006年9月中旬から10月初旬に掲載された50広告を対象に行った。  まず、通常の「確かに見た」「見たような気がする」「見た覚えがない」の3択質問を行った。広告接触状況は全50素材平均で「確かに見た」が37.3%、「見たような気がする」が27.6%だった。
 その後、量的な記憶程度を確認するため、「広告を全体的に覚えている」「広告全体は覚えていないが、部分的に覚えている」などの項目でたずねた。「広告を全体的に覚えている」は「確かに見た」人では42.2%、「見たような気がする」人ではわずか6.5%で、その差35.7ポイント。一方で「広告全体は覚えていないが、部分的には覚えている」は、「確かに見た」(49.6%)、「見たような気がする」(51.3%)ともほとんど差がない。「広告全体を覚えているかどうか」が、「確かに」と回答するか「気がする」と回答するかの分水嶺となっているようだ。
 次に、広告内容に落とし込んだ記憶状況を確認するため、覚えている広告要素は何かを調べた(構成要素は広告ごとに異なるため、「背景の青色」「○○というキャッチコピー」などその広告に合った具体的設問項目で聞き、集計時に「色」「キャッチコピー」など共通項目にまとめた。当該項目がある広告のみを集計対象としており、構成要素となる頻度の多少は影響していない)。
 当然ながら「確かに見た」と回答した人の98.9%が何らかの広告構成要素を記憶していた。
 「見たような気がする」人の場合も、実に91.6%が何らかの広告要素を記憶していた。広告を全体的に覚えていないため「見たような気がする」と答えても、ある部分は確実に記憶している。このような人たちは広告効果を有すると言えるのではないか。

図1 記憶していた広告要素(%)
図1 記憶していた広告要素(%)
図1 記憶していた広告要素(%)


 記憶していた広告要素を上位から並べた図1で「確かに見た」「見たような気がする」それぞれの中身を詳しく見ていくと、順位はほとんど変わらないが、スコアは「確かに見た」の方がすべての項目で高い。最も差が出たのが「企業名」で、「確かに見た」人の50.4%が挙げているのに対し、「見たような気がする」人では27.5%と22.9ポイントの差。回答者が意識的にそうしているわけではないだろうが、どこの企業の広告かを確実に認識したことが「確かに見た」と答えさせる要因となっているようだ。
 これらの調査結果から、「確かに見た」人は「見たような気がする」人と比較して、広告全体を覚えていたり、広告主企業名まで認知していたりするなどの違いはあるが、両方とも広告について何らかの記憶を持っていることが確認された。よって「見たような気がする」人も広告が到達していて広告効果を有していると結論付ける。
 そこで、読売新聞では、「確かに見た」+「見たような気がする」人の割合である「広告接触率」と、「確かに見た」人の割合である「広告注目率」を広告効果指標として使っていく。なお、日本新聞協会の広告調査分類基準による広告接触率の分母は調査対象者、広告注目率は新聞閲読者と異なっているが、読売新聞では2つの指標を簡易に比較できるようにするために、広告注目率についての分母を広告接触率と同じ調査対象者とする。日本新聞協会の基準による「広告注目率」と区別するために、「広告注目率」と表記する。



接触率が高まるほど効率よい広告注目率

 次に、今回の調査対象となった50素材のデータをプロットした図2から、広告接触率と広告注目率の関係を見ていく。2つの関係を示す回帰曲線(二次式による=注)をごらんいただきたい。もし広告接触率と広告注目率の関係が正比例であれば直線になるはずであるが、実際には曲線になっており、広告接触率が高くなるほど、より効率よく広告注目率が高くなっていることがわかる。広告接触率を高めれば高めるほど「確かな」接触である広告注目者の含有効率が高くなるということだ。
9月23日朝刊 サントリー
 広告接触率が最も高かったのは、「サントリー」(9月23日朝刊)の87.7%。広告注目率は64.8%で、広告接触者のうち、7割強が「確かに見た」人だった。50素材平均では6割弱なので、サントリーの広告がいかに効率よく「確かに見た」人を獲得しているかがわかる。
 記憶していた広告要素(表1)では、「キャラクター・タレント・人物・動物(=所ジョージ)」が群を抜いており、タレントの所ジョージ氏の印象が強かったようだ。「確かに見た」「見たような気がする」とも項目の順位はほぼ同じだが、スコアに特徴が出ている。1位の「キャラクター.タレント・人物・動物」は「確かに見た」96.7%、「見たような気がする」85.2%で差は11.5ポイント。2位の「商品・サービス名(=ジョッキ生)」は「確かに見た」72.5%、「見たような気がする」42.6%で、差は29.9ポイントに開いている。3位の「色(=青)」ではさらに差が開く。「確かに見た」人は「ジョッキ生」の広告であることや商品写真まで記憶しているが、「見たような気がする」人は、「所ジョージ」は「確かに見た」人に引けをとらないほど覚えているものの、それ以上の内容がおぼろげとなっている。これが「確かに」と「見たような気がする」の差だろう。しかし「見たような気がする」人が次に何らかの媒体でジョッキ生の広告に接したときには、この広告で記憶した「所ジョージ」の助けで、有効なコミュニケーションが可能になるのではないだろうか。

表1
表


10月4日朝刊 伊藤園
 次に、全5段広告の例として「伊藤園」(10月4日朝刊)を見てみる。広告接触率は57.5%。広告注目率は33.6%で、広告接触者のうち6割弱が「確かに見た」人だった。
 図2をみると回帰曲線よりも上に位置しており、このレベルの広告接触率に対する予想より高い広告注目率を得たことがわかる。つまり「確かに見た」人の含有率が高かったことになる。

図2 広告接触率と広告注目率※の関係(%)
図2 広告接触率と広告注目率※の関係(%)


 記憶していた広告要素(表2)では、「商品の写真」と「キャッチコピー」の2つが高スコアとなっている。商品自体の写真とともに、かなり大きな字で書かれた「飲み比べたし。」というコピーが効果的だったようだ。「確かに見た」と「見たような気がする」の最も大きな違いは「価格」で、「確かに見た」人は46.1%なのに対し、「見たような気がする」では7.4%。「キャンペーン・プレゼント告知」も同様の傾向である。広告接触者全体で見ると商品写真やキャッチコピーでひきつけられているが、その中で掲載商品の購入を意識した人が「確かに見た」になっている様子がうかがえる。

表2
表


 広告接触率を高めるためには、そして広告接触率に比して効率のよい広告注目率を獲得するにはどんなポイントが利くのだろうか。今後も実験的調査を継続し、研究を続けていきたいと思う。読売新聞は、これから「広告接触率」と「広告注目率」という2つの指標を提供していく。この2つが、広告がどうとらえられたかを理解する助けになり、新聞広告を有効に活用していただくヒントとなれば幸いだ。

広告注目率※:日本新聞協会が定める広告注目率(分母が、調査対象者のうちの新聞閲読者)と区別するために※をつけた。
注)回帰曲線(ニ次式):y=0.0125x2−0.5623x+19.663

【調査概要】
■調査手法 インターネット調査
■調査エリア 東京都、神奈川県の東京本社版14版エリア
■調査対象者 調査エリアに在住し、かつ読売新聞を朝・夕刊セットで
宅配契約している世帯の20歳以上の男女個人300人
■調査内容 対象者は朝刊を手元に用意し、掲載広告について、Web画面にて回答
1広告素材につき10問(定型で素材内容のみ変わる)
■対象刊 朝刊のみ
■対象素材数 調査1回につき10素材調査 ※5回調査で50素材(15段24件、5段26件)
■調査日 2006年9月12、23、25、29日、10月4日の5日間
■調査フロー 【前日】20:00 ◎対象者へ調査告知メール送信
【当日】調査対象紙宅配日/22:00 ◎調査開始メール送信、調査開始
【翌日】24:00 ◎調査終了
■レターヘッド・実査 (株)ビデオリサーチ

 今回紹介した以外にも、新聞広告以外の媒体での広告接触状況や、広告内容の理解度や購入意向との関連を分析しています。新聞広告について考える読売新聞広告局のホームページ「よみラボ」(http://www.yomi-lab.com/)をご覧ください。


(増田)
もどる